ジヒドロピリジン(DHP)系 Ca拮抗剤であり1日1回朝食後投与で昼、夜、早朝の血圧コントロールが得られるのがシルニジピン(商品名:アテレックなど)です。
シルニジピンについて作用機序、特徴、服薬指導の要点についてまとめてみました。
シルニジピン(アテレック)は主に下記の2つの作用機序があるとされています。
・L型Caチャネルブロック作用(DHP系Ca拮抗剤に共通)
・N型Caチャネルブロック作用(シルニジピン特有の作用)
それぞれの作用について解説していきたいとおもいます。
シルニジピンの主な作用はL型Caチャネル阻害であり、血管や心筋を収縮させるCa2+の血管細胞内への流入を抑えることで、血管を拡張させる働きがあります。
具体的な作用部位ですが、血管平滑筋細胞膜に存在するジヒドロピリジン結合部位に結合し、電位依存性L型Caチャネルから Ca2+が流入するのを抑え、血管平滑筋を弛緩、拡張させることにより血圧を低下させると考えられています。
この作用機序はジヒドロピリジン(DHP)系 Ca拮抗剤に共通するものです。
シルニジピン(アテレック)に特有の作用にN型Caチャネルブロックがあります。
交感神経の興奮によって交感神経終末からのノルアドレナリンの過剰放出されるのを抑制することで、血圧上昇を抑えたり、降圧時の心拍数増加を抑えることができると考えられています。
L型Caチャネルを阻害することで細動脈を拡張させるとともに、N型Caチャネルを阻害することで細静脈を拡張させ、毛細血管圧が低下します。
Ca拮抗薬の副作用で問題となる浮腫は、L型Caチャネル遮断によって細動脈は拡張させますが、細静脈を拡張させないことが原因と考えられています。
シルニジピン(アテレック)はN型Caチャネル遮断によって細静脈を拡張させることから浮腫が生じにくいのが特徴です。
そのためL型Caチャネル遮断薬で下肢性浮腫が問題となる場合に、シルニジピン(アテレック)に変更となるケースがあります。
またN型Caチャネル遮断を有することによって、精神ストレス、寒冷ストレスによる血圧のコントロール、早朝高血圧など交感神経の興奮による昇圧を抑えることが明らかにされています。
本剤は、無麻酔・無拘束の高血圧自然発症ラットにおいて、寒冷ストレス負荷時の昇圧及び血漿ノルアドレナリンの増加を抑制し、またエア・ジェットストレス(精神ストレス)負荷時の昇圧を抑制した(ラット)
本態性高血圧患者のうち、早朝家庭血圧が135/85mmHg 以上(≧135mmHg and/or ≧85mmHg)の58例(治療中43例、未治療15例)に、本剤1日1回10~20mg、8週間経口投与した。治療中43例においては本剤投与で、早朝家庭血圧は25例(58%)が135mmHg未満にコントロ ールできた。未治療15例においては本剤投与で15例中12例(80%)が135mmHg未満にコントロールできた。
引用元 アテレックインタビューフォーム
N型Caチャネルは腎臓にも存在し、シルニジピン(アテレック)により輸入細動脈と輸出細動脈を拡張させ糸球体内圧を下げることから腎保護作用も期待できると考えられています。
アテレックのインタビューフォームによると、健康成人男子に7日間10mgを反復投与した時のTmax、T1/2は下記の通りです。
規格 | Tmax(hr) | T1/2α(hr) | T1/2β(hr) |
10mg | 3.0±1.3 | 1.1±0.6 | 8.1±2.7 |
アテレックのインタビューフォームによると「食後投与の血漿中濃度は絶食時投与よりやや高い傾向はあるものの、差は認められなかった」となっています。
「朝ごはん食べないけど、薬飲んで大丈夫?」と薬局で聞かれることもあるかと思いますが、シルニジピン(アテレック)は食事を取れない時でも規則正しく服用するように指導しましょう。
飲み忘れ時の対応ですが、特に主治医から指示がない場合、「気づいた時に服用すること」となっています。
飲み忘れた場合は、気がついた時にできるだけ早く1回分を飲んでください。ただし、次の服用時間が近い場合は忘れた分は飲まないで、次回の服用時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。
引用元 アテレック 薬のしおり
主として薬物代謝酵素CYP3A4及び一部CYP2C19で代謝。
シルニジピン(アテレック)と併用禁忌薬はありません。
シルニジピンはグレープフルーツと併用注意となっています。
グレープフルーツの果実に多く含まれるフラノクマリン類が、小腸上皮細胞のCYP3A4を不可逆的に阻害するためCa拮抗薬の血液中への吸収が上昇することが報告されています。
本来ならCa拮抗薬が小腸から血液中に吸収される過程で、消化管の上皮細胞に存在するCYP3A4によって代謝・分解され、代謝・分解されない一部が血液中に吸収されています。
グレープフルーツによって消化管の上皮細胞に存在するCYP3A4が不可逆的に阻害されると、消化管でのCa拮抗薬の代謝が阻害され血液中に吸収される量が上昇してしまうのです。
大日本住友製薬の資料によると、シルニジピン服用中にグレープフルーツを摂取すると、シルニジピンのAUCが230%上昇することが報告されています。
レモンやみかんにはCYP3A4を阻害するフラノクマリン類は入っていないため、併用して問題ないとされています。
ザボンや夏みかんにはCYP3A4を阻害するフラノクマリンが入っているため、シルニジピンとの併用は避ける必要があります。
・L型だけでなくN型Caチャネル遮断で腎臓保護が期待
・1日1回朝食後で服用(MAX20mgまで)
・分2処方の場合、朝食後以外の場合はレセ摘コメントが必要
・交感神経興奮による血圧上昇を抑える(寒冷・精神ストレス)
・飲み忘れた時は気づいた時に服用でOK
・2回分の同時服用は避ける
・グレープフルーツは避ける
・BP変動によるふらつきに注意
(自動車の運転、高い所での作業に注意)
・主な副作用は頭痛(0.67%)頭重(感)(0.45%)動悸(0.76%)顔のほてり(1.48%)顔面潮紅(0.47%)AST(GOT)ALT(GPT)上昇(0.86%)。(再審査終了時)
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