ジェネリック医薬品の開発から見る新薬との違いとは?

この記事を書いた人

かず

薬剤師
博士(薬学)

ひとつの新薬を開発するには十数年もの年月がかかると言われていますが、ジェネリック医薬品(以下:ジェネリック)は有効成分を開発する必要がないため、かかる開発期間が新薬に比べて圧倒的に短くなります。

そのためジェネリックは、新薬よりもかなり安価に薬を販売することができるわけです。

薬局では患者さんからこのような質問を受けるケースもあるのではないでしょうか。


患者さん

後発医薬品と先発医薬品は値段が安い以外に何が違うの?

 


患者さん

ジェネリックは先発品と効果は同じなんですか?

このような質問に答えるためには、ジェネリックがどのように開発されているのか理解しておく必要があります。

それでは新薬、すなわち先発医薬品(以下:先発)とジェネリックでは、開発段階で具体的にはどこがどう違うのでしょうか。

ジェネリックと先発の違いを医薬品開発という側面から学んでいきましょう。

ジェネリックって先発と何が違うの?

ジェネリックの開発について触れる前に、そもそもジェネリックと先発との違いについて再確認しましょう。

ジェネリックの有効成分は、先発と同じですが、それ以外は異なるものであるということは薬剤師の皆さんはご存知ですよね(オーソライズドジェネリックを除く)。

例えば、錠剤であれば、ジェネリックと先発では、賦形剤などの添加剤が異なります。

その理由は、特許に関連しているということをどこかで耳にしたことはないでしょうか。

特許が切れているのはあくまでも先発の有効成分だけであり、それ以外の製剤や製法に関する特許はまだ有効であるため、ジェネリックは先発とまったく同じものを作るわけにはいかないのです。

開発されたジェネリックは、製剤や製法が先発とは異なっていても品質、有効性、安全性が先発と同等であることを示さなければなりません。

先発とは有効成分以外はすべて違うものであるというところに着目すれば、ジェネリックの開発では何を調べなければいけないかが見えてくるかと思います。

それでは、次にジェネリックの開発について具体的に見ていきましょう。

ジェネリックの開発:どうやって先発と同等であることを示すのか

ジェネリックの開発では、先発の特許が切れた有効成分を用いるため、先発薬の開発で実施される非臨床試験(動物に開発薬を投与して安全性などを確認する試験)などは実施する必要がありません。

しかしながら、開発されたジェネリックの品質に問題がないということを示す必要があります。

そのため、ジェネリックも先発と同じ試験(製剤の安定性試験など)を行うことで、先発と同等の品質を担保しています。

では、ジェネリックの有効性と安全性については、どのように確かめているのでしょうか。

ジェネリックの有効性と安全性を担保するために実施される試験のことを「生物学的同等性試験」と言います。

生物学的同等性試験の内容については、厚生労働省から発出されている「後発医薬品の生物学的同等性ガイドライン」で見ることができます。

生物学的同等性試験で実施される試験は以下の2つです。

  • 溶出比較試験
  • 臨床試験における血中薬物濃度測定試験

それでは、これら2つの試験について詳しく見ていきましょう。

溶出比較試験

溶出比較試験とは、主に錠剤からの有効成分の溶け出し方を先発とジェネリックとで比べる試験のことです。

ジェネリックは、有効成分以外は先発とは異なるため、錠剤の添加剤などが違っていても有効成分の溶け出す速度や量が先発と同じであることを示さなければなりません。

錠剤からの有効成分の溶け出し方は、薬の効き目や副作用に大きく影響します。

そこで、溶出比較試験では、ヒトの胃や腸と同じpHの溶液中でジェネリックと先発の錠剤の溶け出し方が同じであるかを経時的に調べます。

溶出試験で先発と同等であることが確認できたジェネリック製剤を用いて、次に臨床試験を行います。

臨床試験における血中薬物濃度測定試験

生物学的同等性試験では、同じひとに時期を変えて先発とジェネリックの両方を飲んでもらう臨床試験を行います。
これを専門用語でクロスオーバー試験といいます。

臨床試験において薬を飲んだひとから経時的に血液を採取し、先発とジェネリックのそれぞれについて血中薬物濃度測定を行います。

血中濃度測定で調べるのは有効成分です。

先発とジェネリックについて血液中の有効成分の量が同じであるかどうかをそれぞれの測定結果から調べます。

血中薬物濃度測定の結果から、横軸に薬物投与後の時間、縦軸に薬物濃度を図示した場合に血中薬物濃度曲線が同じになるかを調べます。

血中薬物濃度曲線が同じであることの指標として、主に最高血中濃度(Cmax)血中濃度‐時間曲線下面積(AUC)が、先発とジェネリックで一致するかを統計学的に計算して評価します。

これは、つまり先発とジェネリックがひとに投与した際に薬物動態学的に同じであるかどうかを評価していることになります。

このようにジェネリックは開発段階において、先発と比較して同等であることを確認しています。

それでは、最後に後発であるがゆえのジェネリックの利点について紹介します。

ジェネリックの利点:安価なだけじゃない!

ジェネリックは、先発に比べて錠剤の大きさを小さくしたり、味や風味を飲みやすく改良したりしているということは皆さんすでにご存知かと思います。

裏を返せば、それだけジェネリックは安価なだけでなくよりよい薬を目指して製剤に工夫を凝らしているのだといえます。

先発メーカーもライフサイクルマネジメントといって、最初に開発された医薬品だけでなく、そこからよりよいもの、使いやすさを求めて製剤に改良を重ねていきます。

薬を作る技術も様々なテクノロジーの進歩によって支えられています。

同じように見える薬でもそれぞれの企業が、そのときの最新技術を駆使して開発しているということではないでしょうか。

この記事を書いた人

かず

薬剤師
博士(薬学)

近畿大学大学院薬学研究科を修了後、受託分析CROへ就職。

医薬品開発における支援事業に従事する傍ら、厚生労働省のガイドライン研究班に参加するなど幅広く活躍。

小説、web記事、ブログなどを通じて文章を書くことでどこかの誰かの役に立つことを心に願いつつ、あくなき奮闘を続ける。

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