製薬会社が新薬を開発する際や研究者主導で実施される「臨床試験」を円滑に進めるために欠かせない存在として、CROやSMOがあります。
CROとSMOという単語を何となく耳にしたことのある薬剤師もいらっしゃるかと思いますが、これら2つの違いはご存知でしょうか。
主に治験で重要な役割を果たすCROとSMOについて、その違いを明確にしながら、それぞれの働きを紹介いたします。
これからの時代、病院薬剤師であれば臨床試験に関わる機会が増えてくるかもしれません。
また薬局薬剤師、病院薬剤師からCROやSMOの会社へ転職されるケースも珍しくはありません。
薬剤師の皆さんが医薬品開発について学ぶ上での基礎知識としていただければと思います。
CROとは、Contract Research Organizationの略称であり、日本語では、「医薬品開発受託機関」などと呼ばれます。
SMOとは、Site Management Organizationの略称であり、日本語では、「治験施設支援機関」などと呼ばれます。
CROもSMOも委託元から外注される試験を受託する機関であることに違いはありません。
ずばり、CROとSMOの違いは、委託元の違いにあります。
CROの委託元は、医薬品開発における各種試験を進めようとする製薬会社などがあたり、一方、SMOの委託元は、各種試験を行う医療機関などの治験実施施設になります。
SMOが病院などの治験実施施設の支援業務であるのに対し、CROは治験などの臨床試験だけでなく、実験動物などを扱う非臨床試験を行う企業などもこれに該当します。
次にCROとSMOの仕事の中身について、それぞれもう少しだけ詳しく見ていきましょう。
CROでの仕事は、医薬品の承認申請に必要な様々な試験を法規制に従いながら、製薬会社に代わって行うことです。
医薬品開発には様々な段階があります。
有効成分を探す段階にあたる創薬スクリーニング、そのスクリーニングから絞り込まれた候補化合物について動物を用いて安全性や薬効などを確認する非臨床試験があります。
さらに動物での確認を終えた化合物について、ヒトにおける安全性および有効性を確認する臨床試験の段階へと進みます。
CROはこうした医薬品開発における様々な段階から試験を製薬会社から受託します。
「えっ!?製薬会社って自社で試験をしないの?」って思われたかもしれませんね。
かなりの大昔であれば、全ての試験を製薬会社が自社内で行っていた時代もあったでしょう。
しかしながら、現代の医薬品開発では、申請まで非常に多岐に渡る試験が必要となります。
ひとつひとつの試験を製薬会社が自ら行っていては、膨大な時間がかかってしまい、また、それらに関わる大量の研究員が必要になってしまいます。
そのため、製薬会社は、評価方法などが規制等によって定型化された試験から優先的にCROへ外注することで医薬品開発をできるだけ効率的に進めようとしているわけです。
新薬の医薬品開発には、十年近い年月が必要となるため、開発期間を短くすることは、新薬をより早く患者さんに届けることができるだけでなく、お薬代が安くなることで患者さんの負担を軽くすることにも貢献します。
申請に必要な試験の詳細については、かなり膨大な情報量になりますので、ここでは割愛しますが、例えば、新薬の製剤についての品質試験や新薬を動物やヒトに投与した後の作用などを調べる試験があります。
海外のみならず国内でも製薬会社は研究部門を縮小する方向に向かっています。
医薬品開発の研究開発費は膨大であるにも関わらず、成功確率があまりに低いからです。
製薬会社が研究部門を縮小していく背景もあって、今後CROの担う役割がますます重要になると言われています。
一方、SMOとは、製薬会社が治験を委託する医療機関から委託された業務に従事する機関のことです。
治験支援業務になりますので治験を実施する病院内でのお仕事になります。
具体的には、治験事務局の立ち上げや運営、治験参加医師や治験協力者の教育や説明、治験の倫理審査委員会(Institutional Review Board、IRBと略されます)の補助などになります。
臨床試験の費用は、小さな規模でも数百から数千万円、たいへん大きな試験であれば何億円もかかることがあります。
そのため、臨床試験をスケジュール通りに円滑に進めることは医薬品開発のコストを節約する上でもたいへん重要です。
治験といえば、大学病院や国公立の大きな病院の他に、治験に特化したクリニックで実施されることがほとんどでした。
しかしながら、最近では、抗がん剤や希少疾病薬のように患者さんをたくさん集めなければならない治験が増えているため、開業医のように小さな病院も治験に参加するケースが増えてきました。
また昨今、医師主導型治験といって、いわゆる製薬会社主導ではなく、大学病院などが中心となって治験を進めるケースも増えています。
こうした背景を踏まえ、治験を支援するSMOの役割が、これからもますます重要視されていくことになるでしょう。
CROとSMOの違いについては、これでほぼ理解できたのではないでしょうか。
ついでにここで覚えていただきたいのが、CRAとCRCです。
CRAは、Clinical Research Associateの略称であり、日本語では「臨床開発モニター」のことを指しており、単に「モニター」と呼ばれる場合もあります。
CRCは、Clinical Research Coordinatorの略称であり、日本語では「治験コーディネーター」と呼ばれています。
CROとSMOは「機関」、CRAとCRCは「職種」のことで、
CRAはCROに、CRCはSMOに所属していると覚えておくとよいかと思います。
CRAもCRCも主に働く場所は、臨床試験を実施する医療機関になります。
CRAの主な仕事は、治験のモニタリングです。
ざっくりしたイメージとしては、医師や病院スタッフに近いところで働きながら、データの管理や文書作成をメインとした働きが主となります。
CRAの仕事の具体的な内容としては、参加する医療機関を訪問し、
などになります。
CRCの主な仕事は、治験支援業務全般になります。
服薬する被験者や患者さんに近い医療現場を実際に動きながら働くイメージです。
CRCの仕事の具体的な内容としては、
などになります。
病院内の薬剤師、看護師、臨床検査技師もCRCの役割を担う場合があり、SMOから派遣されるCRCと区別するために、院内CRCと呼ばれることがあります。
以上のとおり、CROとSMOの違いについて、また治験で重要な役割を果たすCRAとCRCについても見てきました。
新しい治療が誕生するためには、臨床試験が欠かせません。
これからとくに病院薬剤師の方であれば、臨床試験に関わることがあるかもしれません。
また薬局薬剤師、病院薬剤師からCROやSMOの企業に転職を考えることがあるかもしれません。
そんなときはこの記事で学んだCROとSMO、CRAとCRCのことを思い出して、さらに詳しく勉強していかれることをオススメします。
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