保湿剤として定番のヒルドイドシリーズ(ヘパリン類似物質製剤)ですが、
服薬指導の際に、
これは保湿剤です。
ですませていませんか?
投薬時の説明にあまり時間をかけられない場合もあると思います。
そこで、限られた時間の中で効果的に指導を行うことが重要となります。
ヒルドイドシリーズ(ヘパリン類似物質製剤)が処方されている患者さんへの指導の際に有効なキーワードは、
「皮膚のバリア機能」
です。
皮膚バリア機能とは、
肌表面にあるわずか0.02mmの角質層がうるおいを蓄え、乾燥と外部刺激から肌を守る役割のことです。
角質層には3つの保湿因子があります。
以下の保湿因子が正常に分泌され存在していることで
皮膚は健康で正常な状態を保つことができます。
汗などと混じり合って皮膚の表面を覆い皮脂膜を形成することで、水分の蒸散を防ぎます。
角質細胞と角質細胞の隙間を埋めている脂(セラミド、脂肪酸など)です。
角質細胞同士を接着させる役割をはたすとともに、水分をサンドイッチ状に挟み込み、逃がさないようにします。
角質細胞内に存在するアミノ酸や尿素などで、水分を保持します。
正常な皮膚のバリア機能は、上記3つが理想的に揃った状態で
水分を含んだふっくらとした角質細胞が規則正しく隙間なく並び
角質層の内側の水分の蒸発を防ぎ、外界からの異物(アレルゲン・細菌など)の侵入を防御する役割を担っています。
一方、トラブルを起こしている皮膚は、このバリア機能が壊れている状態です。
皮膚の表面が乾燥して角質層がめくれあがり、
その隙間から水分や細胞間脂質などがどんどん失われていきます。
角質細胞は天然保湿因子を失い、固く薄っぺらくなり、弾力を失っています。
皮膚を保湿し、バリア機能を修復することで
様々な肌トラブルを改善することが期待できます。
ヒルドイド(ヘパリン類似物質)は、バリア機能の3因子を直接補うわけではありませんが
角質層に水分を持続的に保持することで皮膚のバリア機能を改善します。
(角質水分保持増強作用)
また、ワセリンや尿素製剤などの他の保湿成分に比べて、保湿効果が長時間続くのが特徴です。
荒れた皮膚表面の状態を効果的に改善するため、
美容目的で処方を求める女性が急増し問題となったことがあります。
(もちろん美容目的は保険適応外です。)
保湿作用により皮膚のバリア機能を改善する以外には
以下のような作用もあります。
冷えの改善や、術後のケロイドの治療目的のためにヒルドイドが処方されているケースを見たことがある方もいらっしゃると思います。
外用剤はしばしばアドヒアランスの不良が問題となります。
投薬時には保湿の必要性や重要性を患者さんに理解してもらい、
使用方法についてもしっかりと指導を行うことで
高い治療効果が期待できます。
主に3つのケースについて、それぞれのポイントをまとめてみました。
新生児期から保湿剤を塗ることで、アトピー性皮膚炎の発症リスクが3割以上低下するということが、国立成育医療研究センターより発表されています。
赤ちゃんの肌は乾燥しやすく、
布団などに顔などを擦り付けたりすることでダメージを受けることも。
肌トラブルを防ぐためにも、保湿は重要な役割を担っています。
炎症を抑えるためにステロイドなどの薬物療法を長期で行うことで
皮膚のバリア機能がダメージを受ける場合があります。
アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は外界からの刺激に弱く、
皮膚炎を生じやすい状態です。
皮膚の乾燥は症状悪化や難治化につながるため、
保湿剤で継続的に肌を保護することが大切です。
皮膚が乾燥すると皮膚バリア機能が障害され、
外部からの刺激を感じやすくなり、痒みが発生します。
その結果、掻き壊しなどにより、更に皮膚表面の角層を破壊して皮膚バリア機能を低下させ、痒みと掻破の悪循環に陥ります。
「冬になるとかゆみがでる」という場合など
保湿をしっかりと行うことでかゆみが改善することが少なくありません。
いずれのケースも
保湿剤は朝夜の1日2回は使用し、皮膚のバリア機能を維持するように指導されるのが一般的です。
特に入浴後は皮膚が水分を十分に含んでいる状態ですので、
入浴後5分以内の使用が効果的です。
具体的な使用方法(使用量、塗り方のポイントなど)については
マルホ株式会社から「保湿剤の塗り方」などのパンフレットが提供されていますので
それらの資材を活用するとわかりやすいと思います。
参考:
マルホヒルドイドホームページ
国立成育医療研究センターホームページ
https://www.ncchd.go.jp/press/2014/topic141001-1.html
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