「痛みが軽いから、市販のバファリンを半分に割って飲んでもいい?」
このような質問を受けた時、薬理学を学んだ薬剤師ならどう答えるのがベストでしょうか?
医療用ではアスピリンがどのように使われているのか?
を考えるときっと答えが分かるかと思います。
医療用では低用量のアスピリンは抗血小板薬として使われています。
(バイアスピリン100mg、バファリン配合錠A81など)
一方で解熱鎮痛が目的の場合はアスピリンの高用量(330mg)が使用されます。
市販薬のバファリンにも同様にアスピリンが330mg含まれています。
このように、アスピリンは低用量で使用すると抗血小板薬に、高用量で使用すると解熱鎮痛剤となるのです。
このことをアスピリンジレンマとも呼ばれます。
では、アスピリンジレンマについてもう少し詳しくみていきたいと思います。
アスピリンはシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)を阻害することで、血小板の凝集を促進させるトロンボキサン(TXA2)の生成を抑えたり、発熱・痛みの伝達や炎症に関わるプロスタグランジンの生成を抑えます。
トロンボキサン(TXA)やプロスタグランジン(PG)はアラキドン酸から生成されます。
アラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ1(COX-1)によって、エンドペルオキシドになり、エンドペルオキシドからトロンボキサン(TXA2)やプロスタグランジン、血小板の凝集抑制作用のあるプロスタサイクリン(PGI2)が生成されます。
アスピリンを低用量で投与すると、血小板凝集促進作用のあるトロンボキサン(TXA2)の生成が抑えられ、抗血小板作用がでます。
アスピリンを高用量で投与することで発熱・痛みの伝達や炎症に関わるプロスタグランジンの生成を抑えるだけでなく、血小板の凝集抑制作用のあるプロスタサイクリン(PGI2)の生成を抑えてしまいます。
つまり、理論上はアスピリンを高用量で使用することで、血小板の凝集を促進させるトロンボキサンと血小板の凝集を抑制させるプロスタサイクリンの両方の生成を抑え、結果的に抗血小板作用が打ち消されてしまうのです。
このことをアスピリンジレンマと呼ばれます。
しかし実際は、バファリン330mgでも出血傾向増強や出血時間延長の副作用は報告されているため、高用量で抗血小板作用が全く無くなるわけではないと考えられます。
市販のアスピリン製剤を半分に割るなどして低用量で使用してしまうと、鎮痛作用を得られず、抗血小板作用が出やすくなり、出血傾向となる可能性があるため注意が必要です。
※もう少し詳しく知りたい方へ
トロンボキサンの存在する血小板は核を持たないため、アスピリンによってシクロオキシゲナーゼが阻害されるとシクロオキシゲナーゼの再合成ができません。
一方で、プロスタサイクリン(PGI2)は血管内皮細胞内に存在するのですが、血管組織は核を持つためシクロオキゲシナーゼを再合成することができます。
アスピリンが低用量では、シクロオキシゲナーゼが阻害されても、シクロオキシゲナーゼの再合成が追いつくため、プロスタサイクリン(PGI2)の生成に影響を与えませんが、アスピリンが高用量になると、シクロオキシゲナーゼの再合成が追いつかなくなり、プロスタサイクリン(PGI2)の生成が抑えられてしまします。
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