抗インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」の安全性ついて

この記事を書いた人

今井雄基(いまいゆうき)

株式会社倉敷健康企画
管理薬剤師 認定実務実習指導薬剤師
岡山県出身

皆さんこんにちは。
メディカルライターの今井雄基です。

はじめに個人的なことですが、2018年7月に第2子が生まれ3ヶ月ほど育児休暇を頂いておりましたので、その間ライター業務もお休みをしていました。
これからまた少しでも皆さんの役に立つような記事を書いていきたいと思っていますのでどうぞよろしくお願い致します。

今回は以前記事にした抗インフルエンザ薬のゾフルーザバロキサビル マルボキシル)の第2弾です。

前回記事
先駆け審査指定制度とゾフルーザ錠について【インフルエンザ治療薬】

発売開始後、インフルエンザのシーズン中ではないとはいえ2018年4月~9月の抗インフルエンザ薬でシェア1位になったというニュースを読んだ方も多いのではないでしょうか。

インフルエンザつながりでは、タミフルの10代への投与も解禁になり、タミフルの後発品も発売されましたね。
「1回服用で投与終了」というゾフルーザの服薬の簡便さに惹かれる気持ちはありますが、薬剤師として最も気にしないといけない安全性について、市販後調査で気になる点がいくつかありましたのでお伝えします。

ゾフルーザ市販後調査で気になる安全性

  • アナフィラキシーショックによる死亡例が1件(年齢不明)、因果関係は不明としていますが90代男性の死亡例が1件報告されています。
  • 異常行動についても因果関係は不明としていますが、2例重篤な症例が報告されています。

こちらは市販後調査ではないのですが、国内第Ⅲ相臨床試験においてA型インフルエンザの薬剤に対する耐性についても12歳未満の小児において約23パーセント(77 例中18 例)、12歳以上の成人において約10パーセント(370 例中36 例)に塩基配列のアミノ酸変異が確認されています。
65歳以上については治験へ参加していません。

日本小児科学会が出している2018/2019シーズンのインフルエンザ治療指針の選択薬の中にはゾフルーザは入っておらず、推奨されていません。
小児の場合は基本がタミフルとなっています。

上記の事から私は現状、市販後調査のデータが増えるまで静観すべきだと考えております。

メディアはこぞって有用性を取り上げていますが、私たち薬剤師はそういった記事を鵜呑みにせず、添付文書を中心とした安全性などのデータをきちんと確認したうえで患者さんの利益を第一に考えて投薬をするべきだと思います。

顆粒は承認されましたが、20kg未満で承認が見送られたため、製薬会社が販売を見送っています。(2018年11月現在)

念のため用法用量を載せておきます。

体重40kg以上20mg錠2錠又は顆粒4包(バロキサビル マルボキシルとして40mg)
体重20kg以上40kg未満20mg錠1錠又は顆粒2包(バロキサビル マルボキシルとして20mg)
体重10kg以上20kg未満10mg錠1錠(バロキサビル マルボキシルとして10mg)

参考:
ゾフルーザ 添付文書(塩野義製薬)
ゾフルーザ 市販直後調査(塩野義製薬)

重大な副作用に「出血」が追記に

2019年3月4日追記

2019年3月1日にゾフルーザの添付文書の「重大な副作用」の項に「出血」を追記するよう厚生労働省から指示がだされました。

「重要な基本的注意」の項に
出血症状があらわれた場合に医師に連絡すること
投与数日後にもあらわれることを説明する
を追記するようにもなっています。
またワルファリン併用注意となります。

改訂の理由としては、
国内副作用の中で出血関連症例が25例(因果関係が否定できないものが13例)集積されたためです。
25例中、死亡例は3例(10歳未満(性別不明)、50歳代女性、40歳代男性)あり、ゾフルーザとの因果関係が否定できない症例は0例だったようです。

オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)でも過去3年間で出血関連症例が30例(因果関係が否定できないものが3例)報告されたことから、同様の内容で添付文書の改訂が行われることとなります。

今後は薬局でもバロキサビル(ゾフルーザ)、オセルタミビル(タミフル)が処方された患者さんへ、

「血便、鼻出血、血尿などの出血症状があれば医師に相談すること」
「服用後数日経過しても出血が現れる可能性があること」

をお伝えしなければいけませんね。

インフルエンザウイルス感染症の発症抑制効果の検証

2019年6月11日追記

2019年6月4日に、塩野義製薬が第 III 相臨床試験(国内予防投与試験:BLOCKSTONE試験)の結果を発表しました。

BLOCKSTONE試験とはインフルエンザウイルスの初発感染症患者の同居家族または共同生活者、合計750例を対象に実施したインフルエンザの発症抑制効果を検証する試験です。

結果では、インフルエンザに感染、発熱、呼吸器症状が発現した割合がゾフルーザ投与群で1.9%、プラセボ投与群で13.6%となり、発症抑制効果はプラセボを上回っています

BLOCKSTONE試験では1日1回の単回投与で用量は治療量と同じとのことです。

今回の結果ををもとに、塩野義製薬は予防投与の適応追加に向けて動いていくと考えられます。

個人的には予防投与が増えるとゾフルーザ耐性ウイルスが増えそうで少し心配です。

この記事を書いた人

今井雄基(いまいゆうき)

株式会社倉敷健康企画
管理薬剤師 認定実務実習指導薬剤師
岡山県出身

実習先の薬局で在宅医療に興味を持ちそのまま就職、2009年より現職。
調剤、在宅医療、OTCなど地域密着薬局での経験を元に現場に役立つ情報を発信してまいります。

記事作成のサイトポリシーについてはコチラ

この投稿者の最近の記事

「今井雄基」のすべての投稿記事を見る>>

コメント欄ご利用についてのお願い

  • 薬剤師、薬学生、調剤事務、医師、看護師といった医療に携わる方が使用できるコメント欄となります。
  • 「薬剤師の集合知」となるサイトを目指していますので、補足・不備などございましたらお気軽に記入いただけると幸いです。
  • コメントの公開は運営者の承認制となっており「他のユーザーにとって有益な情報となる」と判断した場合にのみ行われます。
  • 記事に対する質問は内容によってお答えできないケースがございます。
  • 一般消費者からの薬学、医学に関する相談や質問は受けつけておりません。

CAPTCHA


※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。

お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。

ページトップに戻る