皆さんこんにちは。
メディカルライターの今井雄基です。
インフルエンザの患者数が過去最高を記録し、皆さんの薬局でもインフルエンザの患者さんが増えているのではないでしょうか。
今回は先駆け審査指定制度とその対象品目であるインフルエンザ治療薬のゾフルーザ錠(一般名:バロキサビル マルボキシル)についてお伝えします。
まず先駆け審査指定制度についてです。
これまでも海外では承認されているが国内では承認されていない未承認薬、適応外薬の時間差(ドラッグラグ)を解消するため、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の人員の増員を通じて審査期間を短縮する取り組みが行われていました。
これをさらに進めるために、世界に先駆けて日本で初めて発売し(世界同時発売を含む)、原則として既承認薬と異なる作用機序により、生命に重大な影響がある重篤な疾患等に対して、極めて高い有効性が期待される医薬品を指定し、優先審査を適応することにより、審査期間を短縮する制度です。
2017年から始まった制度で2018年1月時点で、10品目が指定されています。
有名なところでは超高額医薬品のオプジーボの胆道癌に対する適応も先駆け指定されています。
今回初めて指定医薬品が医薬品部会にかかります。
→2018年2月2日に薬食審・医薬品第二部会にて了承されています。
それがゾフルーザ錠(一般名:バロキサビル マルボキシル)です。
ゾフルーザ錠はA型、B型インフルエンザ治療薬として承認申請されています。
→2018年2月2日に薬食審・医薬品第二部会にて了承されています。
現在国内で販売されているインフルエンザ治療薬のタミフルカプセル、リレンザ吸入、イナビル吸入、ラピアクタ点滴静注は、いずれもノイラミニダーゼ阻害薬です。
インフルエンザウイルスは体内に入ると細胞に吸着し、膜融合をして細胞内に侵入し、複製した後に細胞の外の出て行き(遊離)し、次々にウイルスを増殖させます。
ノイラミニダーゼ阻害薬は細胞内で増殖したウイルスの遊離(拡散)を抑制することにより効果を発揮します(図1 参照)。
一方、ゾフルーザは既存のノイラミニダーゼ阻害薬とは作用機序が異なります。
ゾフルーザはmRNAの合成開始に関与するキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害し、細胞内でのウイルス増殖を抑えます。
そのためノイラミニダーゼ阻害薬と比較してウイルスの増殖後(発症後時間が経ってから)も効果が期待できる薬剤と考えられます。
ゾフルーザは錠剤を1回投与するだけで治療が終了するため、既存薬で耐性ウイルスが生じた場合や、副作用が生じた方、吸入ができない方などの活用が期待されています。
商品名 一般名 |
作用機序 | 用法・用量 |
---|---|---|
タミフル オセルタミビル |
ノイラミニダーゼ阻害 | 1日2回5日 |
リレンザ ザナミビル |
1日2回5日 | |
イナビル ラニナミビル |
1日1回単回吸入 | |
ラピアクタ ペラミビル |
15分以上かけ点滴静注 | |
ゾフルーザ バロキサビル |
CAP依存性エンドヌクレアーゼ阻害 | 1日1回単回投与 |
新しい作用機序のゾフルーザの登場によってインフルエンザ治療薬の主役がどうなるか、非常に楽しみですね。
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