抗ヘルペスウイルス薬一覧・作用機序の違い

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

抗ヘルペスウイルス薬はヘルペスウイルスのDNAの複製を防止することで、
ヘルペスウイルスの増殖を抑えます。

従来のDNAポリメラーゼ阻害薬に加え、新しい作用機序であるヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬のアメナリーフ(一般名:アメナメビル)が2017年7月に承認されました。

抗ヘルペスウイルス薬と作用機序や特徴についてまとめました。

抗ヘルペスウイルス薬一覧(内服)

一般名
略号
商品名 作用機序
アシクロビル
ACV
ゾビラックス
ビクロックス
アストリック
DNAポリメラーゼ阻害  
バラシクロビル
VACV
バルトレックス 
ファムシクロビル
FCV
ファムビル 
アメナメビル
AMNV
アメナリーフ  ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害

・バラシクロビルはアシクロビルのプロドラッグ(バイオアベイラビリティを向上)
・ファムシクロビルは肝臓でペンシクロビル(PCV)に代謝され活性を示すプロドラッグ

抗ヘルペスウイルス薬作用機序

抗ヘルペスウイルス薬は作用機序でみると下記の2つに分類されます。

  • DNAポリメラーゼ阻害薬
  • ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬

DNAポリメラーゼ阻害薬作用機序

DNAポリメラーゼ阻害薬

  • アシクロビル(略号:ACV 商品名:ゾビラックス)
  • バラシクロビル(略号:VACV 商品名:バルトレックス)
  • ファムシクロビル(略号 FCV 商品名:ファムビル)

これらの薬剤はヘルペスウイルスDNAの複製に関わる酵素であるDNAポリメラーゼの働きを阻害しヘルペスウイルスの増殖を抑えます。

DNAポリメラーゼ阻害薬は、ウイルスDNAポリメラーゼの基質の1つであるデオキシグアノシン3リン酸化体dGTP)と競合拮抗し、DNAポリメラーゼの働きを阻害します。

DNAポリメラーゼ阻害薬とdGTPはプリン骨格を持ち、似た構造式をしていることから、dGTPと誤ってDNAポリメラーゼ阻害薬がDNAポリメラーゼに取り込まれてしまいDNAポリメラーゼの働きが阻害されます。

そしてDNAポリメラーゼ阻害薬がウイルスDNA鎖に結合すると、ウイルスDNA鎖の伸長が停止し、ウイルスDNAの複製が阻害されます。

DNAポリメラーゼ阻害薬が効果を発揮するためには、ヘルペスウイルス感染細胞内でウイルス由来チミジンキナーゼによってリン酸化さる必要があるためヘルペスウイルスに非感染細胞には影響を与えにくいのが特徴です。

 

ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬作用機序

新しい作用機序の抗ヘルペスウイルス薬がヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬です。

アメナメビル(略号:AMNV 商品名:アメナリーフ)はDNAの複製に必須の酵素であるヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害します。

DNAの複製の開始の際に、2重らせん構造をほどく必要があるのですが、その際に働くのがヘリカーゼ・プライマーゼ複合体です。

アメナメビル(AMNV)はヘリカーゼ・プライマーゼ複合体を阻害することで、2本鎖DNAの開裂を防ぎ、DNA複製を開始させるRNAプライマーの合成を抑え、ヘルペスウイルスのDNA複製を阻害します。

このようにアメナメビル(AMNV)はヘルペスウイルスDNA複製の初期段階で作用します。

DNAポリメラーゼ阻害薬は競合拮抗するdGTPの細胞内量によって効果に変動がでますが、アメナメビル(AMNV)はヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の酵素活性を直接阻害するため細胞内dGTP量に影響されないのが特徴です。

排泄経路・腎機能と減量の必要

一般名
商品名
代謝・排泄経路 腎機能低下時の調節
アシクロビル
ゾビラックス
腎排泄 減量必要
バラシクロビル
バルトレックス
腎排泄  減量必要
ファムシクロビル
ファムビル
腎排泄  減量必要
アメナメビル
アメナリーフ
肝代謝
CYP3A4/5
CYP2B6、CYP2C19
減量必要なし

DNAポリメラーゼ阻害薬は腎排泄のため、腎機能低下時は減量が必要

一方、アメナメビルは腎機能低下時の減量は必要ないが、CYP3A,2B6誘導作用があり
→CYP関連の相互作用に注意必要あり。

単純疱疹・帯状疱疹の適応と投与日数

ヘルペスウイルス治療の中でも処方頻度の高い単純疱疹(口唇ヘルペス・性器ヘルペス)、帯状疱疹について効能の有無と投与量、投与日数についてまとめました。

単純疱疹は原則5日間、帯状疱疹は原則7日間の投与日数が定められています。

商品名
成分名
投与日数と用量
ゾビラックス
アシクロビル
単純疱疹
1000mg分5原則5日間
ただし初発型性器ヘルペスには10日間まで可

帯状疱疹
4000mg分5原則7日間

バルトレックス
バラシクロビル
単純疱疹
1000mg分2原則5日間
ただし初発型性器ヘルペスには10日間まで可

帯状疱疹
3000mg分3原則7日間

ファムビル
ファムシクロビル
単純疱疹
750mg分3原則5日間

帯状疱疹
1500mg分3原則7日間

アメナリーフ
アメナメビル
帯状疱疹
400mg分1原則7日間

参照
アメナリーフ錠インタビューフォーム
バルトレックス錠インタビューフォーム
ファムビル錠インタビューフォーム

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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