ワルファリンと納豆加工食品の関係

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SHU(シュー)

薬剤師
研修認定薬剤師
登録販売者外部研修認定講師


ワルファリン服用中は納豆などのビタミンKが多く含まれる商品を避けるように服薬指導しなければいけないけど、納豆味のうまい棒など納豆を加工した食品はどうなんろう・・・。

以前、ワルファリンカリウム(商品名:ワーファリン)を服用している小児患者のご家族から、「PT-INRが安定しない」というご相談がありました。

併用注意となるような薬剤を服用しておらず、肝機能や腎機能にも異常は見られないことを確認しました。

問診にて、
「納豆やクロレラ、青汁等は摂取していないか」と確認したところ、
「納豆やクロレラ、青汁は摂取していないが、うまい棒が好きで、納豆味を食べていたことがあるが、何か関係あるか」との返答があったため、調査を行ました。

うまい棒納豆味とワルファリン(ワーファリン)の相互作用

うまい棒納豆味の原材料名を確認してみると、「納豆パウダー」の記載があり、念のため製造会社である株式会社やおきんに電話にて確認を取ったところ、この「納豆パウダー」は「納豆のフリーズドライ」である、との回答が得られました。

納豆に含まれる納豆菌は、摂取するとヒトの腸内フローラに定着し、ビタミンK2の一種であるメナキノン-7を持続的に産生します。これがワルファリンに競合阻害を起こすことにより、ワルファリンの血液凝固阻害効果を低下させてしまうと言われています。

ビタミンKは脂溶性ビタミンであり、熱や空気に対して安定です。

納豆パウダーをつくるフリーズドライ製法は通常-30℃程度の温度で凍結させ水分を飛ばす方法ですが、納豆菌は温度変化に非常に強く、-80℃や+120℃でも死滅しないとの知見があり、うまい棒の製造工程を経ても生きた納豆菌が残っている可能性があります。

また、ビタミンK自体も熱に対して安定な化合物群であり、納豆自体に含まれている豊富なビタミンKが残存している可能性が高いと考えられます。

納豆加工食品は避けるのが無難

うまい棒納豆味に納豆菌が残存しているという明確なエビデンスは確認できませんでしたが、温度変化に対し非常に強い耐性を持つ納豆菌は、食品加工を行ったとしても簡単には死滅しないことが考えられ、ワルファリン使用者が納豆パウダーや干し納豆などの納豆を加工した製品を摂取することは、理論上控えた方がよいと思われます。

服薬指導において、納豆そのものだけではなく、納豆加工食品の摂取も控えるように指導することが重要だと感じました。

参考文献
健康食品の安全性・有効性情報 ビタミンK解説

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SHU(シュー)

薬剤師
研修認定薬剤師
登録販売者外部研修認定講師

北海道の薬学部を卒業後、千葉大学大学院で有機化学を専攻。在学中、研究の傍ら薬局薬剤師として勤務。

現在は、面応需薬局併設ドラッグストアの管理薬剤師として、幅広い診療科目からの処方せん調剤、市販薬・サプリメント相談、健康相談、在宅訪問服薬管理等を行っている。

患者様や医療従事者に対してエビデンスに基づいた医療情報を提供することを目標とし、特に市販薬やサプリメントなど、セルフメディケーションを中心に、薬局薬剤師として遭遇した症例などを記事にしていきたいと考えている。

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