プラザキサの中和剤「プリズバインド静注」について

この記事を書いた人

今井雄基(いまいゆうき)

株式会社倉敷健康企画
管理薬剤師 認定実務実習指導薬剤師
岡山県出身

こんにちは、メディカルライターの今井雄基です。

当薬局では輸液や栄養剤が在庫の幅を取って、調剤室が狭くなっています。
持ち運ぶのがとても重いので移動に台車やカートがあれば便利だと思いますが、まだ購入できていません。

今回はプラザキサの中和剤であるプリズバインド静注についてお伝えします。

以前、ワーファリンからDOAC(Direct Oral AntiCoagulant)への切り替えについての記事を書きましたが、2016年11月にDOACの1つのプラザキサに中和剤が出ていることをご存知でしょうか。

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プリズバインド静注液はヒト化モノクローナル抗体

プリズバインド静注液2.5g(イダルシズマブ)という名前で、成分名のステム(stem)が~ズマブ(-zumab)なのでヒト化モノクローナル抗体です。

-zuはヒト化(humanized)、-mabはモノクローナル抗体(monoclonal antibodies)の略です。

抗がん剤や生物学的製剤でモノクローナル抗体が増えていることから、最近は大学でもステムの語尾が何を表すのか学ぶ機会がありますよね。

中和できるDOACはプラザキサのみ

プリズバインド静注液の効能、効果は下記のとおりです。

効能・効果
以下の状況におけるダビガトランの抗凝固作用の中和
・生命を脅かす出血又は止血困難な出血の発現時
・重大な出血が予想される緊急を要する手術又は処置の施行時

皆さんご存知の通り、ワーファリン服用中の患者が出血を起こした際はビタミンK1製剤を投与するなどガイドラインが設定されていますが(ワーファリン適正使用情報第3版)、DOACの場合は中和剤がありませんでした。

効能、効果をみると使う状況は極めて限定的です。
DOACはプラザキサとそれ以外で作用機序が異なるため、このプリズバインド静注液はプラザキサにしか使えません。

重篤な副作用はアナフィラキシー、ショック以外認められていません。

しかし添付文書を見ていただければ分かりますが、第Ⅲ相試験が国際共同試験で243名中日本人患者が4名しかいません。

そのため全症例対象の使用成績調査をするように機構からメーカーに求められています。
日本人に対する安全性については市販後調査をして初めて分かるということです。

また当然のことですが、プラザキサの中和を行うことで血栓症のリスクはもちろん高まるため注意が必要です。

万が一の事故に備えてプラザキサ服用中の資材提供を

現在プラザキサの販売会社からプラザキサ服用中ということが分かるように携帯してもらう、カードやシールが患者さん向け資材として配布されています。

もしかしたら皆さんの薬局にもメーカーの方が持って来られているのではないでしょうか。

プラザキサ服用中の患者さんが事故に遭って、出血が止まらないなど十分起こり得ることですので、もらっていない薬局の方は資材請求をして、プラザキサを服用している患者さんに渡してあげてくださいね。

また、近隣の医療機関のプリズバインド静注の在庫についてもメーカーの方がご存知だと思いますので、ぜひ聞いて患者さんにカードを渡す際に一言添えて教えてあげてくださいね。

この記事を書いた人

今井雄基(いまいゆうき)

株式会社倉敷健康企画
管理薬剤師 認定実務実習指導薬剤師
岡山県出身

実習先の薬局で在宅医療に興味を持ちそのまま就職、2009年より現職。
調剤、在宅医療、OTCなど地域密着薬局での経験を元に現場に役立つ情報を発信してまいります。

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