こんにちは。
メディカルライターの今井です。
トラマドールとアセトアミノフェンの配合錠であるトラムセット配合錠(後発品:トアラセット)。
トラマドールの副作用である悪心・嘔吐の防止目的に制吐剤が併用されるケースがありますが、
薬剤師はどのようなことに注意しなければいけないでしょうか?
私が経験した実際の処方を事例に考えていきたいと思います。
以前から当薬局に来局されている60台女性。
腰部の痛みが強く、門前病院ではない処方でプレガバリン(商品名:リリカ)、ノイロトロピン錠を服用されていました。
服用しても腰部の痛みの訴えは続いており、リリカを増量すると傾眠、ふらつきの副作用が強く出てしまったため現状以上には増量できません。
今回受診時に、トラマドール・アセトアミノフェン配合錠(商品名:トラムセット配合錠)に、悪心・嘔吐の副作用予防にD2受容体拮抗薬のプロクロルペラジン(商品名:ノバミン錠)処方されました。
【追加処方】
Rp1
【一般名】トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合錠 3錠
【一般名】プロクロルペラジンマレイン酸塩5mg 3錠
1日3回毎食後 14日分
この時、残念ながらノバミン錠の在庫が薬局になかったのですが、幸い近くに住んでいる方だったので近隣の店舗から分譲を行い、当日中にトラムセット配合錠と一緒に服用を開始することができました。
トラマドールによる悪心・嘔吐の副作用は服用開始後3〜7日で耐性ができて、軽減することが多いため、通常は1〜2週間後には制吐薬はストップされる傾向にあります。
そのため次回はノバミン錠は処方されないだろうと考え、在庫として注文はしませんでした。
しかしこの目論見は外れてしまい、次の来局時にもトラムセット配合錠とともにノバミン錠も処方されていました。
在庫不足で2度同じ患者さんに迷惑をかけてしまうことが頭をよぎり、冷や汗をかきました。
しかし、この2つの基本的なことを思い返しました。
患者さんにトラムセット配合錠を服用開始後、痛みの状態や吐き気の副作用が出ていないかどうかを確認したところ、
「吐き気は飲み始めてから全く起こっていないですよ。」
と言われたため、ノバミン錠は医師に疑義照会をして確認の上削除してもらいました。
再び在庫不足で患者さんに迷惑をかけなくて済み、なおかつ副作用防止の観点からも無駄な薬剤の投与を防げた事例でした。
その後の経過ですが、トラムセット配合錠開始により腰部痛みの訴えも減っていますが、便秘の副作用が出てしまったため、併用していたセンノシド錠を2錠から3錠に増量することになりましたが、現在も服用を継続されています。
トラマドールの便秘の副作用については耐性が形成されることはまれなので、便秘に悩まされる方が多いですね。
今回の事例の他にトラマドールの悪心・嘔吐に処方される代表的な制吐剤として、
があります。
どちらも上部消化管や延髄CTZのD2受容体に拮抗することで胃腸運動を調節したり吐き気を抑える作用があります。
しかし長期投与によって錐体外路症状や内分泌機能異常の副作用が問題となることから、必要最低限の処方にしてもらわなければいけません。
トラムセット(トアラセット)の悪心・嘔吐の副作用は服用開始後1週間程度で耐性が形成されることからも、漫然と制吐剤が処方されている場合は本当に必要かどうかを確認しなければいけませんね。
D2受容体拮抗薬の錐体外路症状についてはこちらにまとめられています。
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