ロコアテープの変形性膝関節症への効果とNSAIDs製剤の併用について

この記事を書いた人

裕(ゆう)

薬剤師

薬剤師ライターの裕と申します。

先日参加したロコアテープのメーカー勉強会で得た情報を共有したいと思います。

 

ロコアテープの成分・ハッカ油配合の理由

ロコアテープはエスフルルビプロフェンハッカ油を有効成分としたNSAIDsテープ剤です。

エスフルルビプロフェンはフルルビプロフェンの光学異性体であり、フルルビプロフェンよりも2倍近いCOX(シクロオキシゲナーゼ)阻害作用を示します。

「IC50値で比較すると、エスフルルビプロフェンのCOX-1及びCOX-2阻害活性はフルルビプロフェンの2倍、R-(-)-フルルビプロフェンの1000倍以上強い事が示唆された。」

引用元 ロコアテープインタビューフォーム

またエスフルルビプロフェンの経皮吸収性を高めるため膏体にハッカ油を配合しているとのこと。

ハッカ油は本来有効性を期待して使用されたわけではありませんが、関節痛などに適応を持つ医薬品として承認されているものに近い濃度が配合されているため有効成分として扱われるようになったそうです。

ロコアテープは膏体の工夫により優れた皮膚透過性を実現したため、血中移行性も高められ、他の薬剤との併用など他のNSAIDs外用剤よりも注意が必要となりました。

ロコアテープの効能効果、用法用量

適応は変形性関節症のみとなっています。

メーカー担当者によれば、関節であれば膝だけでなく他の関節でも適応は可能とのことです。

用法は1日1回貼付。
1日2枚を限度としています。

これはロコアテープ2枚を反復貼付した7日目のAUCが、フルルビプロフェン錠(商品名:フロベン錠など)の定常状態のAUCと同程度であったためです。

しかし、Cmaxがフルルビプロフェン錠ほど上昇することはないため、全身作用を期待した使用はできないそうです。

変形性膝関節症への有効性について

変形性膝関節症は、

膝の痛み

活動量の低下

筋力低下、体重増加

膝関節の不安定、摩耗

痛みの悪化

と、病状の悪化に伴い悪循環を招き歩行困難、寝たきりになるなどQOLを著しく低下させる可能性があります。

そのためNSAIDsなどを使用し疼痛を緩和させ、運動療法を行い筋力の増加を図ることが治療方針となります。

また変形性膝関節症の患者は多剤併用している可能性の高い高齢者が多いため、経口剤よりも貼付剤が選択されることが多いです。

数あるNSAIDs貼付剤の中でも優れた組織移行性とCOX阻害作用を持つロコアテープは、52週連続貼付した臨床試験において163例中、

著明改善46%
中等度改善28.8%
軽度改善20.2%

となっています(1)

この臨床試験では貼付期間が長いほど痛みの改善がみられたと、興味深い結果を示してくれました。

ロコアテープの強い鎮痛作用により運動量が増え筋力が増加、膝関節が安定し痛みの改善に繋がったのだろうとのことでした。

他のNSAIDs薬との併用は可能?

他の薬剤との併用についてですが、

まず他のNSAIDsテープ、パップ剤との併用は70枚制限の処方数にのみ気を付けておけば、特に問題はありません。

問題は内服薬との併用についてです。

「本剤投与時は他の全身作用を期待する消炎鎮痛剤との併用は可能な限り避けることとし、やむを得ず併用する場合には、必要最小限の使用にとどめ、患者の状態に十分注意すること。」

引用元 ロコアテープ添付文書

と記載されているため、内服消炎鎮痛剤との併用が難しくなっています。

メーカー担当者に質問したところ、やむを得ずの併用であり、必要最小限の使用と認められれば問題ないとのこと。

通常の1日3回毎食後28日分などの内服処方での併用は避け、頓服での併用であれば今のところは問題ないとのことでした。

あくまで今のところなので、細かい規制などが入ってくるかもしれませんね。

ロコアテープの光線過敏症について

「ケトプロフェンテープのように貼った場所に紫外線は避けないといけない?」

薬局でも質問を受けることがあるかもしれません。

光線過敏症の原因となるカルボニル基(>C=O)がエスフルルビプロフェンに含まれないため光線過敏症の心配はないと、メーカー担当者の回答です。

参考記事
モーラス・ボルタレン構造式から光線過敏症を予測できるのか?(共役構造とローンペア)

しかし、かぶれを防止するためにも貼り付け部位への長時間の直射日光は避けるように指導した方が無難でしょう。

まとめ

ロコアテープは、優れた鎮痛作用と製剤工夫により変形性膝関節症患者に効果を示している製剤です。

しかし血中移行性が高いため、1日2枚の上限があることや他のNSAIDsとの併用など、他のNSAIDs貼付剤よりも気を配る必要があります。

また皮膚炎や紅斑など適用部位への副作用もあり、これらの相互作用や副作用を抑えられるよう指導・助言するなど、薬剤師の腕の見せ所でもあるのではないでしょうか。

この記事が少しでもみなさまの業務の助けになることが出来れば幸いです。

参考資料
(1)ロコアテープ 審査報告書

この記事を書いた人

裕(ゆう)

薬剤師

大阪大谷大学 薬学部卒

国立大学病院勤務後、派遣薬剤師として各地の調剤薬局にて勤務。
現在は大阪府の薬局に勤務しながら開業を目指し日々勉強中。

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