ビムパット(ラコサミド)の作用機序・特徴・調剤・服薬指導のポイント

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

既存の抗てんかん薬と異なる作用機序を有するビムパット錠50mg・100mg(成分名:ラコサミド)について、第一三共とユーシービージャパンが2016年7月に製造販売を取得しました。

てんかん患者の30%以上が既存の薬で発作のコントロールができていないといわれるなか、厚生労働省の「医療上の必要性の高い薬剤」として開発が進められてきました。

ビムパット(一般名:ラコサミド)の作用機序、特徴についてまとめてみました。

効能・効果

 

他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法

 

用法・用量

 

通常、成人にはラコサミドとして1日100mgより投与を開始し、その後1週間以上の間隔をあけて増量し、維持用量を1日200mgとするが、いずれも1日2回に分けて経口投与する。なお、症状により1日400mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として100mg以下ずつ行うこと。

 

作用機序は電位依存性ナトリウムチャネルの緩徐な不活性化促進

てんかん発作は電位依存性ナトリウムチャネルの機能異常などが引き金となって、神経細胞の電気的興奮が生じることが原因とされています。

ナトリウムチャネルは急速な不活性化緩徐な不活性化の2種類によって制御されています。

従来の抗てんかん薬であるカルバマゼピン(商品名:テグレトール)、ラモトリギン(商品名:ラミクタール)、トピラマート(商品名:トピナ)などはナトリウムチャネルを阻害し、急速な不活性化からの回復を遅らせる作用がありますが、ラコサミド(商品名:ビムパット)は緩徐な不活性化を選択的に促進させる働きがあります。

てんかんにおけるニューロンの興奮はナトリウムチャネルの割合によって決定されるのですが、急速な不活性化よりも緩徐な不活性化のほうが回復までに時間がかかります。
そのため利用可能なナトリウムチャネルの割合は緩徐な不活性化の方が急速な不活性化に比べて少なくなることから、ニューロンの興奮性を低下させる働きは緩徐な不活性化の方が強いことが推測されます。

ラコサミド(商品名:ビムパット)は電位依存性ナトリウムチャネルの緩徐な不活性化を選択的に促進し、過興奮状態にある神経細胞膜を安定化させることで抗てんかん作用を示します。

特徴・調剤・服薬指導のポイント

ビムパット(成分名:ラコサミド)の特徴は下記のとおり。

  • 他のてんかん薬で十分な効果が認められない場合に使用
  • 他のてんかん薬で問題となる薬物相互作用がない(併用禁忌・併用注意はなし
  • 主な副作用は浮動性めまい(8.3%)疲労(5.6%)傾眠(5.0%)頭痛(4.1%)悪心(4.1%)【単剤療法444例中】
  • 複視・霧視などの眼障害が生じる可能性があるため、こまめに服薬指導で状態をチェックする
  • 浮動性めまい眠気霧視集中力の低下が現れることがあるため自動車の運転はさせないよう注意する
  • 易刺激性、興奮、攻撃性などの精神症状や自殺企図に至ることがあるので精神症状を注意深く観察する必要あり
  • 食後、食前の縛りなし

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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