オグサワ処方について〜アモキシシリンを重複させる理由〜

この記事を書いた人

寺本 卓矢(てらもと たくや)

【所属】
いちょう薬局株式会社 経営戦略本部人材採用担当
シナジーファルマ株式会社 法人営業部関東ブロック統括
株式会社PHAIND 執行役員
【資格】
日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
【出身大学】
日本薬科大学 薬学部 卒業

オグサワ処方」って聞いたことあるでしょうか?
オーグメンチンサワシリンを併用する処方の略称です。

オーグメンチンSR配合錠250 3錠
サワシリンカプセル250mg  3カプセル
1日3回 毎食後

このような処方を受け付けた場合、どのような対応をしますでしょうか?
いずれも抗菌薬です。

成分をみてみましょう

オーグメンチンSR配合錠250にはアモキシシリン250mgクラブラン酸125mg2対1の割合で配合されています。

サワシリンカプセル250mgにはアモキシシリン250mgが入っています。

上記の処方はアモキシシリンが重複していますね。
1日量だとアモキシシリンの量は1500mgとなってしまいます。

サワシリンカプセルの添付文書ではアモキシシリンは1日750〜1000mg(1回250mgを1日3〜4回投与)が通常量となりますので、通常量の2倍程度となりますが疑義照会をかける必要があるでしょうか?

結論から言うとこの処方は、
医師はあえて併用している
と考えて問題ないと言えるでしょう。

理由は大きく2つあります。

理由1 アモキシシリンを高用量にする目的

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン ―呼吸器感染症―」によると、

S. pneumoniae(肺炎球菌)(ペニシリン感受性)や H. influenzae(インフルエンザ菌)(ABPC 感受性)に対してアモキシシリン1回500mg×3〜4回(1500〜2000mg/day)が第一選択とされています。

つまり、アモキシシリンの通常量(1日750〜1000mg)の2倍という高用量となっています。

理由2 クラブラン酸による消化器症状の副作用防止目的

アモキシシリンはβラクタム系のなかでもペニシリン系の抗生物質で、クラブラン酸はβラクタマーゼ阻害薬です。

クラブラン酸を配合する目的は、βラクタム系の抗菌薬を分解する酵素(βラクタマーゼ)を阻害することによりβラクタマーゼ産生菌に対しても効果がでるようにするためです。

しかしクラブラン酸は下痢や吐き気などの消化器症状の副作用が問題となります。

アモキシシリンを増やす目的でオーグメンチンを増量すると、クラブラン酸の量も増え、下痢や吐き気などの消化器症状の副作用がでやすくなる可能性があります。
オーグメンチンはアモキシシリンとクラブラン酸のが2対1で配合されていますが、海外と比較するとクラブラン酸の割合が多いといわれています。

オグサワ処方は疑義照会やレセ滴コメントは必要か?

このようにアモキシシリンを高用量で使い、更にクラブラン酸による副作用まで考慮した処方が「オグサワ処方」になります。

しかし上記の処方の場合、アモキシシリンが通常量の2倍程度となりますので、疑義照会レセプトでのコメントは必要に応じて行う必要があると感じますが、実際は疑義照会しないケースが多いのではないでしょうか。

私の周りの薬剤師は、疑義照会はあえてかけないという方もいれば、毎回疑義照会をしてレセ摘コメントに入れている方もいらっしゃいます。

現在のところ査定の対象となったという報告は周りではありません。

もし査定の対象となったという報告があればコメント欄よりお知らせいただけると幸いです。

 

この記事を書いた人

寺本 卓矢(てらもと たくや)

【所属】
いちょう薬局株式会社 経営戦略本部人材採用担当
シナジーファルマ株式会社 法人営業部関東ブロック統括
株式会社PHAIND 執行役員
【資格】
日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
【出身大学】
日本薬科大学 薬学部 卒業

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【紹介文】
薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。

薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。

現在は新たに薬学生向けコンテンツサイト(薬学ステップ)を開設。

薬学生向けイベント企画運営なども手掛けている。

調剤薬局人材採用アドバイスやイベント企画、お仕事の依頼はこちら
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