アルコール依存症治療薬は大きく下記の3つに分類されます。
アルコール依存症の治療目標は原則、断酒の達成と継続ですが、アルコール依存症の患者にとって断酒が達成困難となり、治療を放棄されるケースも珍しくありません。
日本では2019年に断酒ではなく、飲酒量の低減を目標とした治療薬セリンクロ錠(一般名:ナルメフェン塩酸塩水和物)の製造販売承認を大塚製薬が取得しました。
アルコール依存症治療薬について作用機序の違い、調剤時や服薬指導時の注意点をまとめました。
アルコール依存症治療薬は、
抗酒薬・嫌酒薬といわれる液体タイプのシアナマイド(一般名:シアナミド)、原末のノックビン(一般名:ジスルフィラム)、断酒補助薬のレグテクト(一般名:アカンプロサート)、飲酒量低減薬のセリンクロ(一般名:ナルメフェン)、
合計4種類が存在します。
分類 | 一般名 | 商品名 | 作用機序 |
---|---|---|---|
抗酒薬 | シアナミド | シアナマイド | アセトアルデヒド脱水素酵素を阻害しアセトアルデヒドを蓄積させる |
ジスルフィラム | ノックビン | ||
断酒補助薬 | アカンプロサート | レグテクト | グルタミン酸作動性神経活動の亢進抑制 |
飲酒量低減薬 | ナルメフェン | セリンクロ | オピオイドμ(ミュー)受容体アンタゴニスト →報酬系回路のドパミン神経系を抑制 (過剰な快を減少) オピオイドκ(カッパ)受容体部分アゴニスト →減酒に伴うストレスの緩和 (過剰な不快を減少) |
アルコールは摂取後、体内でアセトアルデヒドへ、アセトアルデヒド脱水素酵素によって、酢酸に分解されます。
抗酒薬であるシアナミドやジスルフィラムは肝臓のアセトアルデヒド脱水素酵素を阻害することでアセトアルデヒドの分解を防ぎ、悪心・嘔吐、頭痛、動悸、顔面紅潮、呼吸困難を引き起こします。
つまり、飲酒によって不快な症状を無理やり引き起こさせ断酒させるのが抗酒薬(嫌酒薬)です。
アルコール依存症では興奮性神経であるグルタミン酸作動性神経活動が亢進した状態になっており、興奮性神経伝達と抑制性神経伝達のバランスが崩れていると考えられています。
アカンプロサートは亢進したグルタミン酸作動性神経活動を抑え、興奮性神経伝達と抑制性神経伝達のバランスを整え、飲酒欲求を抑えると考えられています。
アルコール依存症は飲酒による快の情動を求める「正の強化」と、アルコールを繰り返し摂取することで快が減少し、代償的に強くなる不快を避けるために飲酒をする「負の強化」によって、飲酒行動がコントロールできなくなっていくと考えられています。
そして快、不快の強化にはオピオイド受容体が関与していると考えられています。
μ(ミュー)オピオイド受容体
δ(デルタ)オピオイド受容体
→ナルメフェンがアンタゴニスト活性
アルコール摂取によって過剰となる「快」を抑制
κ(カッパ)オピオイド受容体
→ナルメフェンが部分アゴニスト活性
アルコール依存症によって過剰となる「不快」を抑制
減酒に伴うストレスを減少させる
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。
お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。
コメント欄ご利用についてのお願い
※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます