血清カリウム・K

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杉本進悟(すぎもとしんご)

Chloe Pharmacy 株式会社
高知県出身
研修認定薬剤師
AEAJアロマテラピー検定1級

生化学検査のセットに入っているため採血を行ったらほぼ必ず検査をするカリウム値について解説します。

血清カリウムイオン(K+)とは

細胞外と細胞内の電位差を保つ役割や心臓の拍動などに影響を与えます。
通常細胞外は4 mmol/L程度ですが、細胞内は100mmol/L程度の濃度があります。
Na+やHと交換されることで細胞内外の濃度を保っています。

正常値

3.6-4.8 mmol/L*1

カリウム値上昇の原因となる病態、薬剤、処方提案例

カリウム値上昇の原因となる病態、薬剤

  • 溶血(採血時の溶血を含む)
  • 偽性高カリウム血症(血小板、白血球数の増加により検査値が高くなってしまう)
    →血小板数や白血球数の確認や白血病や血小板症の治療をしていないかの確認をしましょう。
  • カリウムの摂取過剰
  • 腎機能低下
  • ACE,ARB製剤の服用
  • 抗アルドステロン製剤の服用
  • βブロッカーの服用
  • NSAIDsなど腎機能を低下させる薬剤の服用
  • ケトアシドーシス

カリウム値上昇時の処方提案例

  • ACE,ARB,抗アルドステロン製剤→カルシウムブロッカーやループ系、チアジド系利尿剤への変更提案
  • NSAIDs→アセトアミノフェンや病態に合わせて他の疼痛治療薬への変更。
  • ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸カルシウム、ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物の開始

カリウム値低下の原因となる病態、薬剤、処方提案例

カリウム値低下の原因となる病態、薬剤

  • カリウム摂取量の低下
  • ループ系、チアジド系利尿薬の服用
  • β刺激薬の服用
  • インスリン摂取
  • 甘草などの摂取による偽アルドステロン症
  • 副腎腫瘍、ACTH産生腫瘍
  • クッシング症候群

カリウム値低下時の処方提案例

  • 吸入β刺激薬の使用→可能であれば製剤の見直し
  • カリウム製剤の投与
    散剤では用量の少ないアスパラカリウム散、錠剤では塩化カリウム徐放製剤がおすすめです。
  • 甘草を含む漢方薬の変更、中止
    高齢者にファンの多いS・M散にも含まれていますので注意しましょう。
  • ループ系利尿薬、チアジド系利尿薬→一部またはすべてをカリウム保持性利尿薬への変更
    エビデンスは不明ですがスピロノラクトン100mgに対してフロセミド40mgにするとバランスが良いといわれています。
    ちなみにフロセミド40mg≒アゾセミド60mg≒トラセミド8mgです。
    またトラセミドはループ系利尿薬の中ではカリウム低下を起こしづらいという特徴があります。
    降圧剤として使用の場合はカルシウム拮抗薬、ACEI,ARBなどへの変更も良いと思います。

食事指導

18歳以上の男性は2500mg以上、女性は2000mg以上が摂取目安とされています。

慢性腎臓病(CKD)の人の場合1500〜2000mg/日の制限をされることがあります。

カリウムを多く含む食材や、カリウムを減らす調理法を知って指導できるようにしましょう。

カリウムを特に多く含む食品

生野菜、果物、イモ類、肉魚類など多くの食品にカリウムは含まれています。

特にバナナ、里芋、ほうれん草、ひじきなどには多く含まれていますので不足しているひとには積極的に推奨、制限が必要なひとには少量に抑えるよう伝えましょう。

カリウムを減らす工夫

カリウムは水溶性なので

  • 茹でる
  • 水にさらす

などの調理方法で同じ食品でもカリウム含量を30%程度減らすことができます。

おいしい健康さんなどカリウム制限食レシピを紹介しているサイトもたくさんあります。

つい避ける食べ物ばかり強調してしまいがちですが

美味しく食べられる食べ方を伝えられるようにしましょう。

気をつけたいポイント

高齢者や心不全治療をしている患者ではカリウムに影響を与える薬剤を服用している可能性が高いため必ず定期的に確認をして薬剤調整を提案できるようにしましょう。

参考
*1 日本臨床検査標準協議会 基準範囲共用化委員会 編 日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲
本田孝行著 検査値を読むトレーニング
黒川清著 水・電解質と酸塩基平衡
日本人の食事摂取基準

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