個別指導指摘事項のまとめ【薬歴・処方内容編】~保険薬局個別指導対策

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

こんにちは。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」編集長の伊川勇樹です。

新規開局した場合は半年後以降に必ずやってくる「厚生局による新規個別指導」。

厚生局から送られる、茶色い封筒にドキっとされた経験がある先生方も多いのではないでしょうか。

封筒が届いてから、バタバタ対策を立てるのは避けたいですよね。
新規開局時から、事前に押さえておく必要があることを、過去の厚生局からの指摘事項を参考にまとめてみました。

またこれらの指摘事項は「患者さんを守るため」にも大切なことですので開局前から把握しておくとよいでしょう。

① 併用禁忌に対して処方されたケース

・ケイキサレートドライシロップ処方の患者にアルダクトンA錠

・高カリウム血症が疑われる患者に対するセララ錠(エプレレノン)の投与
⇒高カリウム血症に禁忌。(血清K5.0mEq/L以上)

・前立腺肥大にトフラニール錠 (イミプラミン塩酸塩)
⇒尿閉(前立腺肥大症)には禁忌

・高齢者に対するメデット錠250mgの投与
⇒高齢者に禁忌 販売中止

・消化性潰瘍の方へPL顆粒、バイアスピリンの投与

原則、禁忌の場合は処方はできませんが、処方した場合は処方箋、調剤録、薬歴に疑義照会の内容を記載する必要があります。

② 添付文書と異なる効能・用法・用量

・かぜ薬の処方にシナール配合顆粒が処方されている

・胃潰瘍の疑いのある患者に対するランソプラゾールOD錠15mgの長期投薬
⇒胃潰瘍には8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間まで

・アルロイドGが食後投与
⇒承認は空腹時

・リバロ錠(ピタバスタチン)を1日2回投与
⇒承認は分1投与

・エパデール(イコサペント酸エチル)の食後または食前
⇒承認は食直後

・アムロジピン製剤の分2投与
⇒承認は分1(分2でBPコントロールがOKか確認が必要)

・高齢者にロヒプノール2mg(フルニトラゼパム)投与
⇒高齢者には1回1mgまで

・カルタン(沈降炭酸カルシウム)の食後
⇒承認は食直後

・漢方の食後
⇒承認は食前もしくは食間

・カルデナリン(ドキサゾシン)の分2投与
⇒承認は分1

・アバプロ(イルベサルタン)の分2投与
⇒承認は分1

・アジルバ(アジルサルタン)の分2投与
⇒承認は分1

・チラーヂンの分2投与
⇒承認は分1

・ミカルディス(テルミサルタン)の分2投与
⇒承認は分1

・テオドール(テオフィリン徐放錠12〜24時間持続)の朝・夕食後
⇒承認は朝・就寝前

・キプレス・シングレア(モンテルカスト)の夕食後投与
⇒承認は就寝前

・アレロック(オロパタジン)の朝・夕食後投与
⇒承認は朝・就寝前

・ザイザル(レボセチリジン)が朝食後投与
⇒承認は就寝前

・統合失調症・躁鬱病による不眠症へのマイスリー投与
⇒統合失調症・躁鬱病による不眠症は適応でない。

・味覚異常にプロマックの投与
⇒適応外

・ナウゼリンの食後投与
⇒承認は食前

・プリンペランの食後投与
⇒承認は食前

・ガナトンの食後投与
⇒承認は食前

・αGIの食前投与
⇒承認は食直前

・ファモチジンの分1夕食後投与
⇒分1の場合、承認は就寝前

処方箋、調剤録、薬歴に疑義照会で確認した内容・理由を記載する必要があります。
コンプライアンス向上のため血圧が安定しているため など)

③ 薬学的に問題があるもの

・ARBの併用(配合剤にも注意)

・Ca拮抗薬の併用(配合剤にも注意)

・NSAIDsの併用

・PPIとH2ブロッカーの併用

・ビオフェルミンRとホスミシンの併用

処方箋、調剤録、薬歴に疑義照会で確認した内容を記載する必要があります。

④ 漫然投与

・ビタミン剤(アリナミンF、メチコバール、ハイボン、ビタメジン、ビタノイリン、ノイロビタン)
⇒月余にわたって漫然と使用すべきでない。有効性を確認する必要あり。

・PPI
⇒逆流性食道炎で8週間を超える場合は「再燃再発を繰り返す逆流性食道炎」の確認が必要。

・ガスモチン
⇒慢性胃炎に伴う消化器症状に使用する場合は一定期間(2週間)投与後、継続の必要性について検討する必要あり。

・サアミオン
⇒投与期間は、臨床効果及び副作用の程度を考慮しながら慎重に決定するが、投与12週で効果が認められない場合には投与を中止すること。

・キネダック
⇒投与期間は、臨床効果及び副作用の程度を考慮しながら慎重に決定するが、投与12週で効果が認められない場合には投与を中止すること。

・ケタス
⇒投与期間は、臨床効果及び副作用の程度を考慮しながら慎重に決定するが、投与12週で効果が認められない場合には投与を中止すること。

・セロクラール
投与12週で効果が認められない場合には投与を中止すること。

処方箋、調剤録、薬歴に疑義照会で確認した内容を記載する必要があります。
一度確認した内容は表紙にも日付、内容、確認者の名前を書いておくと良いです。

⑤ 服薬指導内容

・運転禁止の薬剤について、車の運転の有無をチェックしていない。

・メトホルミン製剤の乳酸アシドーシスについて注意喚起を行っていない。

・シップと外用鎮痛剤を同じ部位に使う場合、かぶれの有無を確認していない。

・芍薬甘草湯の1日1回投与について服用時期の記載がない。

・酸化マグネシウムとレボフロキサシン錠の同時処方の場合、服用間隔をあける指導をしていない。
⇒キレート形成のため1~2時間間隔あける。

・ワーファリン、バイアスピリン、イグザレルト、プレタール、プラビックスなどの抗血栓薬について、歯ぐきからの出血、あざの有無を確認していない。

・ジプレキサ服用中の高血糖の有無(多飲、口渇き)の確認が行われていない。

・アムロジピン分2投与にも関わらず、血圧のコントロールの確認が行われていない。

・αGI服用による低血糖時にブドウ糖の摂取の指導ができていない。

・ウブレチドの投与開始時にコリン作動性クリーゼの注意喚起を行っていない。
⇒下痢,腹痛,悪心・嘔吐,唾液分泌過多,発汗, 徐脈,縮瞳,呼吸困難,血清ChE値低下等(特に投与開始2週間が注意)

・ベザフィブラートとスタチンの併用時に横紋筋融解症が現われる可能性が高くなる恐れがあり、初期症状の対処法を指導していない。

・カリメートと酸化マグネシウムの同時服用時に効果が減弱する指導を行っていない。

・イトラコナゾールは強力なCYP3A4阻害作用があり、クラリスロマイシンやアトルバスタチンの併用注意喚起ができていない。

これらは口頭で説明したとしても記録として薬歴に残しておかなければいけません。

まとめ

 

新規個別指導の場合、大部分が薬歴のチェックになります。指導官によって、温度差はありますが、「ハイリスク薬」と「漫然投与の疑義照会」については必ずチェックされますので、開局時から対応しておきましょう。

またハイリスク薬については、処方されている薬剤の中で全てのハイリスク薬に対して指導が必要になりますので、薬歴にも全てのハイリスク薬について記載しましょう。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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