ロタリックス・ロタテック(ロタウイルスワクチン)の違い・比較

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

冬から春にかけて胃腸炎の原因となるのがロタウイルスです。

ロタウイルスは感染力が強く、重症化や合併症である脳炎・脳症を防ぐためにも生後2ヶ月からワクチン接種が任意で行われていましたが、2020年10月より定期接種となりました。

ロタウイルスのワクチンは

  • ロタリックス(1価ワクチン 2回接種)
  • ロタテック(5価ワクチン 3回接種)

の2種類が存在します。

小児科ではどちらか一方か、または両方を取り扱うケースがあり、

親御さんから

ロタウイルスのワクチンは接種させた方がいい?
ロタリックスとロタテックはどちらを選べばいい?

と薬剤師が相談を受ける機会があるかもしれません。

ロタリックスとロタテックについて違いについてまとめました。

薬局で相談を受けた時に役立てていただけると幸いです。

ロタリックス・ロタテック違い・比較

  ロタリックス ロタテック
メーカー グラクソスミスクライン MSD
一般名 経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン 5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン
ワクチン 1価
ヒト由来
ロタウイウルスの中で最も多いG1型由来
交差免疫によって他の型にも有効
5価
ウシ由来
G1型,G2型,G3型,G4型,P1A[8]型
効能・効果 ロタウイルスによる胃腸炎の予防
G1P[8]G2P[4]G3P[8]G4P[8]G9P[8]に対する予防効果が示唆
剤型 内用液 内用液
接種方法 経口投与
1回1.5mlを4週間以上間隔をおいて2回
経口投与
1回2mlを4週間以上間隔をおいて3回
接種期間 生後6週から
初回接種は14週6日までが推奨
24週までに接種完了
生後6週から
初回接種は14週6日までが推奨
32週までに接種完了
主な副作用 易刺激性(ぐずり) (7.3%)下痢(3.5%)咳嗽/鼻漏 (3.3%)
国内臨床試験508例中 投与後30日以内
下痢(5.5%)嘔吐(4.2%)胃腸炎(3.4%)発熱(1.3%)
国内臨床試験380例中 投与後14日以内

誕生した日を生後0日とカウント

作用機序

ロタウイルスに感染すると血清中にIgM抗体が産生され、抗ロタウイルスIgA抗体及びIgG抗体が産生されます(小腸粘膜では主にIgA抗体)。

抗体ができることによって初回感染より2回目以降に感染した際の重症度が有意に低くなります。

インタビューフォームではロタウイルス胃腸炎を防御する詳細のメカニズムは不明とのことですが、ロタリックスやロタテックをロタウイルスに感染歴のない乳児に接種することで、上記のような特異的免疫を誘導し、感染時の重症度を低下させると考えられています。

接種期間が定められている理由

ロタリックス、ロタテック共に初回接種は生後6週からで、14週6日までが推奨されています。

また遅くともロタリックスは24週まで、ロタテックは32週までに接種を完了させなければいけません。

これはロタウイルスワクチンの初回接種時の年齢が高いほど副作用である腸重積症の発生率が高く、月齢が6ヵ月の乳幼児で腸重積症発生率のピークが報告されているためです(1)

またロタウイルスの感染は6ヶ月〜24ヶ月で罹患率が高くなっており、入院が必要となる重篤なケースもこの年齢に多くみられるため、それまでにワクチンを接種し重症化を防ぐ目的もあると考えられます。

他のワクチンとの併用間隔

添付文書上では、他のワクチン接種との間隔は下記のように定められていますが、
医師が必要と判断された場合、同時接種可能となっています。

  • 生ワクチン接種後の間隔
    通常27日以上
  • 不活化ワクチン接種後の間隔
    通常6日以上

生後2ヶ月以降はインフルエンザ菌b型(ヒブ)や小児用肺炎球菌ワクチンなどの定期接種がスタートする期間ですので、小児科医の判断で同時接種されるケースが多くあるのが現状です。

日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールです(4ヶ月までを抜粋)。

ワクチン名 生後6週 2ヶ月 3ヶ月 4ヶ月
ロタリックス   1回目 2回目  
ロタテック   1回目 2回目 3回目
インフルエンザ菌b型
(ヒブ)
  1回目 2回目 3回目
小児肺炎球菌   1回目 2回目 3回目
B型肝炎   1回目 2回目  
ジフテリア
百日咳
破傷風
ポリオ
    1回目 2回目

青 任意接種 赤 定期接種

薬剤師がアドバイスできること

  • ロタリックスは1価(交差免疫)、ロタテックは5価のワクチン
  • 接種回数がロタリックスが2回、ロタテックが3回
  • 初回接種は生後6週から14週6日まで
  • 回数を少なくすませたいならロタリックス(2回)
  • 添付文書上では他のワクチンとの間隔が定められているが同時接種されるケースが多い
  • ワクチン接種後1週間は便中にウイルスが排泄されることがあるため、オムツ交換の際は手洗いをするように注意してもらう
  • 添付文書上は接種前後に母乳を含めた飲食の制限は特にないが接種する病院の指示に従うこと
  • 接種後の腸重積症(ぐったりする・顔色が悪い・泣きと不機嫌を繰り返す・イチゴジャム状の血便・繰り返す嘔吐)に注意して経過観察(接種後7日までは特に)
  • 任意のため「自費」だが助成金がでる市町村があり→2020年10月より定期接種へ

参考文献
(1) Simonsen L,et al.:J Infect Dis.2005;192(Suppl.1):S36-S43.

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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