風疹・麻疹の症状・違い・ワクチンについて

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

ワクチンの定期接種により日本における風疹・麻疹(はしか)患者は減少傾向にありますが、海外旅行者によって麻疹や風疹などのウイルスが持ち込まれ、感染が拡大するケースが問題となっています。

沖縄県でも2018年に台湾からの海外旅行者が麻疹に感染していたことで、沖縄在住の日本人にも感染が報告されています。

特に予防接種を受けていない乳幼児の親御さんや、予防接種を受けたかどうか分からない成人から薬局でも相談を受ける機会があるかもしれません。

風疹の場合、妊娠初期の妊婦が感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群といって難聴、白内障、色素性網膜症などを引き起こすことが報告されており、妊娠を計画している女性だけでなく配偶者、家族も感染に注意しなければいけません。

麻疹は感染力が非常に強いことから、薬局薬剤師も正しい知識をもっておく必要があります。

風疹、麻疹の症状やワクチンについてまとめました。

風疹・麻疹の違い【感染経路・潜伏期間・症状】

  風疹
(3日ばしか)
麻疹
原因ウイルス 風疹ウイルス 麻疹ウイルス
感染経路 飛沫感染
接触感染 
飛沫核感染
飛沫感染
接触感染
潜伏期間 14〜21日 10〜12日 
症状  耳の後ろや首のリンパ節の腫れ
淡紅色の発疹が顔や耳の後ろに出現
発熱(ないケースもあり)

発疹は全身に広がる 
3日程度で消える

妊娠初期(20週ころまで)に感染すると出生児が先天性風疹症候群(難聴、白内障、色素性網膜症など)を発症する可能性あり

38℃前後の発熱が2〜4日続き、
倦怠感、上気道炎症状、結膜炎症状

頬粘膜の白色の斑点(コプリック斑)が出現

3〜4日で熱が1℃程度下がり、半日後くらいに高熱発疹
発疹は耳後部、頚部、前額部から出始め、翌日には顔面、体幹部、上腕、四肢末端まで広がる

感染経路の詳細についてはこちらを参照

幼稚園・保育園・学校の感染症対策~感染経路・病原体について

 

風疹・麻疹ワクチン一覧

ワクチンは風疹単独、麻疹単独、風疹・麻疹混合(measles rubella combined:MR)があります。

いずれも弱毒生ワクチン

ワクチンは薬価収載されておらず、医療機関が自由に価格設定を行うことができます。

  薬品名 メーカー
麻疹 乾燥弱毒生麻しんワクチン 武田
麻疹 はしか生ワクチン 北里第一三共
麻疹 ビケンCAM 阪大微研-田辺三菱
風疹 乾燥弱毒生風しんワクチン 北里第一三共
風疹&麻疹
MR  
ミールビック 阪大微研-田辺三菱
乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」 武田
はしか風しん混合生ワクチン「北里第一三共」  北里第一三共

麻疹ワクチン禁忌

  • 明らかな発熱を呈している者
  • 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
  • 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
  • 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者(副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤)
  • 妊娠していることが明らかな者
  • 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

風疹ワクチン禁忌

  • 明らかな発熱を呈している者
  • 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
  • 本剤の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者
  • 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者(副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤)
  • 妊娠していることが明らかな者(接種1ヶ月前〜2ヶ月後避妊)
  • 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者

ワクチン接種状況と対応

2018年時点では、1歳時と小学校入学前までの合計2回、麻しん・風しんの混合ワクチンの定期接種が行われています。

麻しん・風しんの混合ワクチンを2回接種した記録が確認できるのであれば、基本的には再度ワクチンを接種する必要はありませんが、2回接種しても抗体価が基準を満たさないケースもあります。

ワクチンの接種が1回のみの場合は、もう1回の接種が推奨されています。

また接種の有無が確かではない場合は、抗体検査を行い抗体価陰性であれば2回接種、抗体価陽性でも基準を満たさない場合はもう1回の接種、抗体価陽性で基準を満たす場合は4〜5年後もう一度抗体測定をすることが推奨されています1)

通常、抗体検査には時間がかかりますので、感染者が周りにいる場合や、感染が拡大している地域に行く際など、抗体検査を行わずに、接種されるケースもあります。

以下、出生年代別の麻疹ワクチンの接種状況です。

年代 麻疹ワクチン接種状況
昭和52年(1977年)以前生まれ 定期接種なしの時代
免疫あり・なしが混在するが自然感染で免疫獲得ケースあり
昭和52年(1977)〜平成2年(1990年 )4月1日以前生まれ 定期接種1回のみの接種
免疫あり・なしが混在
平成2年(1990年)4月2日以降生まれ 定期接種2回の世代

 

まとめ

 

  • 風疹は飛沫感染、麻疹は飛沫核感染で麻疹の感染力は強い
  • 風疹は妊娠初期の感染が問題となる
  • 特に妊娠を希望する夫婦は風疹の抗体検査を勧める(自治体によって無料で行える)
  • 薬局で相談があった場合はワクチンの接種回数を確認
    (2回接種が確認できれば通常は問題ないと考えてよいが抗体価が基準を満たしていないケースもあり)
  • 抗体検査には時間がかかるため、緊急性のある場合など抗体検査をせずワクチン接種するケースもあり
  • 感染の疑いがある場合は医療機関に予め電話して受診するよう指導

参照
1)医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版(一般社団法人 日本環境感染学会)

 

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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