薬局での簡易懸濁法について

この記事を書いた人

寺本 卓矢(てらもと たくや)

【所属】
いちょう薬局株式会社 経営戦略本部人材採用担当
シナジーファルマ株式会社 法人営業部関東ブロック統括
株式会社PHAIND 執行役員
【資格】
日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
【出身大学】
日本薬科大学 薬学部 卒業

昨今は施設在宅や個人在宅と「在宅医療」で薬剤師が活躍する場面が増えてきました。
そこで度々必要になってくるのが「簡易懸濁法」です。

現在は病院だけでなく薬局でも活用の場が増えています。
今まで粉砕に時間を取られていた患者さんへ「簡易懸濁」を提案することで、
薬局にとっても患者さんやご家族にとってもメリットがあるケースがあります。

簡易懸濁とは何か?
また簡易懸濁の方法の一例、メリットについてまとめました。

簡易懸濁法とは

錠剤の粉砕やカプセルを開封をせずに錠剤やカプセルをそのまま、あるいはコーティング破壊やカプセルを開封し、約55℃の温湯に入れ、崩壊・懸濁させて経管投与(経鼻胃チューブ、胃瘻、腸瘻)する方法です。

日本薬局方ではカプセルを溶かすためには37℃±2℃の水で10分以内に溶けることが規定されています。
10分間放置しても37℃以下にならない最低温度が55℃なので、簡易懸濁では約55℃の温湯で行います。

実際の現場では高齢者で錠剤やカプセルが服用しにくい場合に簡易懸濁法を利用して服用しやすくすることもあります。

簡易懸濁法の方法例

簡易懸濁法には様々な方法があります。

一例としてご説明します。

  1. 約55℃の温湯を用意します。
    沸騰したお湯と水を2:1で混ぜると約55℃と言われています。
  2. 薬を市販されている懸濁ボトル(コップでも代用可能)などの容器にいれ、1で作成した温湯を20〜30ml入れ溶かします。
  3. 10分間ほどたったら溶けていることを確認し、注入器で吸い取り経管投与します。

その他「倉田式経管投薬法」など水剤瓶を用いた実施方法もあります。
経管投与でない場合に簡易懸濁法を利用することがある昨今では状況に応じた適切な実施の仕方を検討する必要があります。

簡易懸濁法の利点

簡易懸濁法が一般的に活用される前は錠剤を粉砕(つぶし)し経管投与で行っていました。
簡易懸濁法は下記のように粉砕(つぶし)よりも利点が多くあります。

  • 粉砕に比べて薬効低下や配合変化などが少なく安定性が保持しやすい
  • 投与前に錠剤やカプセルを印字などで薬品の確認ができる
  • 中止または変更の際の対応が簡易化
  • 経管投与できる薬品数が粉砕(つぶし)より多い
  • 調剤時間が短縮できる
  • 薬品ロスの低減
  • 調剤者の薬曝露の低減
  • 粉砕(つぶし)と比べ調剤業務自体が簡易

簡易懸濁法の注意点

粉砕不可な薬があるのと同様で簡易懸濁が不可なもの、配合変化を起こしてしまうものもあります。

簡易懸濁が適さない例

  • 徐放性製剤や腸溶錠(一部可能なものもあり)
  • アスパラカリウム錠:吸湿性があり固形化しチューブが閉塞する可能性がある

簡易懸濁の可否については病院の薬剤部がインターネット上で公表していたり、書籍もありますので、薬剤別に確認するのがよいでしょう。

簡易懸濁法では薬を溶かすにあたり10分間おいて待つ時間があります。
その際、薬の汚染にも細心の注意を払う必要があります。

関連記事

この記事を書いた人

寺本 卓矢(てらもと たくや)

【所属】
いちょう薬局株式会社 経営戦略本部人材採用担当
シナジーファルマ株式会社 法人営業部関東ブロック統括
株式会社PHAIND 執行役員
【資格】
日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
【出身大学】
日本薬科大学 薬学部 卒業

【サイト】

【紹介文】
薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。

薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。

現在は新たに薬学生向けコンテンツサイト(薬学ステップ)を開設。

薬学生向けイベント企画運営なども手掛けている。

調剤薬局人材採用アドバイスやイベント企画、お仕事の依頼はこちら
info@phaind.jp

記事作成のサイトポリシーについてはコチラ

この投稿者の最近の記事

「寺本 卓矢」のすべての投稿記事を見る>>

コメント欄ご利用についてのお願い

  • 薬剤師、薬学生、調剤事務、医師、看護師といった医療に携わる方が使用できるコメント欄となります。
  • 「薬剤師の集合知」となるサイトを目指していますので、補足・不備などございましたらお気軽に記入いただけると幸いです。
  • コメントの公開は運営者の承認制となっており「他のユーザーにとって有益な情報となる」と判断した場合にのみ行われます。
  • 記事に対する質問は内容によってお答えできないケースがございます。
  • 一般消費者からの薬学、医学に関する相談や質問は受けつけておりません。

※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。

お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。

ページトップに戻る