レボドパ製剤一覧・作用機序・服薬指導のポイント

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

パーキンソン病は下記の4つの症状を特徴とします。

  • 振戦
  • 筋固縮
  • 無動
  • 姿勢反射障害

パーキンソン病は黒質メラニン含有神経細胞の変性が原因で線条体のドパミンが減ることから、ドパミンの前駆物質であるレボドパ製剤か、ドパミン伝達系を刺激するドパミン受容体刺激薬が治療の中心となります。

パーキンソン病治療薬の分類

  • レボドパ製剤
  • ドパミンアゴニスト
  • MAO-B阻害薬
    脳内ドパミンの分解抑制
  • COMT阻害薬
    末梢でのレボドパの分解抑制
  • レボドパ賦活薬
    レボドパの作用を増強・延長
  • 抗コリン薬
  • ドパミン遊離促進薬
  • ノルアドレナリン前駆物質
    ノルアドレナリンを増やしすくみ足・立ちくらみの改善
  • アデノシンA2A受容体拮抗薬
    アデノシンを抑えドパミンとのバランスを整えGABA神経の興奮を抑える

パーキンソン病治療ガイドラインによるとレボドパ製剤を第一選択とするのは

  • 高齢者、認知機能障害or精神症状を合併する場合
    or
  • 症状改善を優先させる事情がある場合(転倒リスクが高いなど)

となっています。

しかし長期的な視点でレボドパ製剤は薬効時間が短くなるwearing offなどによってコントロールが難しくなることがあります。

レボドパ開始後5年以上を経過すると過半数の患者に日内変動が出現するといわれています。

そのためレボドパ製剤が第一選択となる対象者以外は、ドパミンアゴニストで治療開始することがガイドラインで定められています。

今回はレボドバ製剤の特徴と一覧、服薬指導でのポイントついてまとめました。

ドパミンは血液脳関門を通過できない

パーキンソン病は脳内のドパミンの減少が原因であることから、脳内でドパミンを補うことが治療の一つとなります。

しかしドパミンは血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)を通過できません。

そのためドパミンの前駆物質で血液脳関門を通過できるL-dopaレボドパ)が使用されます。

ドパ脱炭酸酵素(DCC)でドパミンに変換

脳に移行したレボドパはドパ脱炭酸酵素(Dopa-DeCarboxylase:DDC)によってドパミンに変換されます。

しかしドパ脱炭酸酵素は脳以外の末梢(腎臓、肝臓、小腸など)にも高濃度で存在するため、L-dopa(レボドパ)を投与しても9割近くが末梢で急速にドパミンに変換されてしまい血液脳関門を通過できません。

そのため末梢でドパ脱炭酸酵素(DDC)の働きを阻害するドパ脱炭酸酵素阻害薬 (Dopa-Decarboxylase Inhibitor:DCI)の配合剤が使用されます。

DCI(カルビドパorベンセラジド)配合のレボドパ製剤

ドパ脱炭酸酵素阻害薬 (DCI)は下記の2種類があります。

  • カルビドパ
  • ベンセラジド

DCIを配合することでレボドパの必要量を減らすことができ、悪心・食欲不振などの消化器症状や、不整脈、起立性低血圧などの循環器系の副作用を軽減することが可能となります。

カルビドパorベンセラジドが配合されたレボドパ製剤は下記のとおりです。

レボドパ:カルビドパ(10:1)配合の薬剤

  • ネオドパストン配合錠
  • メネシット配合錠

レボドパの量を1/4〜1/5に減量が可能。

レボドパ:カルビドパ(4:1)配合の薬剤

  • デュオドーパ配合経腸用液

デュオドーパ配合経腸用液は近位小腸に直接投与。
血中濃度のバラツキを抑え、効果が持続するため運動症状の日内変動を減少させる。

レボドパ:ベンセラジド(4:1)配合の薬剤

  • マドパー配合錠
  • イーシー・ドパール配合錠
  • ネオドパゾール配合錠

レボドパの量を1/5に減量が可能。

wearing offと対応

レボドパ製剤を長期で使用することで問題となるのが持続時間が短くなり、次の服用までに症状が強く現れてしまうwearing offウェアリングオフ)現象です。

wearing offの際にはレボドパを増強させたり持続時間を延長させる薬が追加されるケースがあります。

具体的にどのような薬剤が使用されるかピックアップします。

COMT阻害薬(エンタカポン)

レボドパは末梢のDCC(ドパ脱炭酸酵素)だけでなくCOMTカテコール-O-メチル基転移酵素)によっても分解されてしまいます。

レボドパ
DCC
ドパミン

レボドパ
COMT
3OMD(3-O-methyldopa)

エンタカポン(商品名:コムタン)はCOMTを阻害することで末梢でのレボドパの代謝を阻害し、レボドパの脳内移行を増加させます。

またレボドパ+カルビドパ(DCI)にエンタカポンを配合したスタレボ配合錠もwearing off現象が認められる際に使用されます。

MAO-B阻害薬(セレギニン)

脳内でのドパミンの代謝を阻害するのがMAO-B阻害薬であるセレギニン塩酸塩(商品名:エフピー)です。

レボドパ賦活薬(ゾニサミド)

レボドパ賦活薬のゾニサミド(商品名:トレリーフ)はチロシン水酸化酵素の活性化による脳内のドパミン量増加、ドパミン放出増加、MAO-B阻害によるドパミン分解抑制によって、レボドパ製剤の作用を増強・延長させます。

ゾニサミドは抗てんかん薬のエクセグランとしても存在します。

レボドパ製剤一覧

分類 一般名 商品名
レボドパ単独 レボドパ
  • ドパストン散98.5%
  • ドパストンカプセル250mg
  • ドパストン注射液25mg,50mg
  • ドパゾール錠200mg
レボドパ

DCI   
レボドパ

カルビドパ
10対1 
  • ネオドパストン配合錠L
  • メネシット配合錠
  • カルコーパ配合錠L
  • ドパコール配合錠L
  • パーキストン配合錠L
  • レプリントン配合錠L

100mg
レボドパ100mg
カルビドパ10mg

250mg
レボドパ250mg
カルビドパ25mg

レボドパ

カルビドパ
4対1
  • デュオドーパ配合経腸用液 

レボドパ2000mg
カルビドパ500mg

レボドパ

ベンセラジド
4対1
  • マドパー配合錠
  • イーシー・ドパール配合錠
  • ネオドパゾール配合錠

レボドパ100mg
ベンセラジド25mg
 

レボドパ

DCI 

COMT阻害薬
レボドパ

カルビドパ

エンタカポン 
  • スタレボ配合錠

L50
レボドパ50mg
カルビドパ5mg
エンタカポン100mg
L100
レボドパ100mg
カルビドパ10mg
エンタカポン100mg

 

服薬指導のポイント

レボドパ製剤が処方された患者さんへ服薬指導のポイントをピックアップします。

  • 尿・汗・唾液が黒く着色することあり
    レボドパor代謝物がメラニン重合体を生成するため
  • 服用初期は悪心・食欲不振など消化器症状が発現しやすい
    継続服用で軽減することを伝える
  • 鉄剤との併用に注意必要あり
    キレート形成のため間隔をあけて服用
  • 高たんぱく食でレボドパ製剤の効果が減少する可能性あり
    アミノ酸がレボドパと血液脳関門の通過で競合するため
  • 突発的な睡眠、注意力、集中力の低下があるため自動車の運転など避ける
  • 病的賭博・病的性衝動の発現時は減量・中止が検討される
    ご家族の方にも理解していただく必要あり

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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