非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はベンゾジアゼピン受容体作動薬?

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

 

マイスリーやルネスタなどの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はベンゾジアゼピン受容体作動薬なの?

診療報酬改定でのベンゾジアゼピン受容体作動薬の長期投与による処方料、処方箋料の減算もあって、このような質問を受けることがあるかもしれません。

非ベンゾジアゼピン系(非BZD系)の薬剤といえば、

  • ゾルピデム(先発品商品名:マイスリー
  • ゾピクロン(先発品商品名:アモバン
  • エスゾピクロン(先発品商品名:ルネスタ

の3成分が存在しますね。

ちなみに、これらはベンゾジアゼピン受容体作動薬の長期投与による処方料、処方箋料の減算の対象にもなっています。

「非ベンゾジアゼピン系だから、減算の対象外じゃないか」

という意見もあるかもしれませんが、

非ベンゾベンゾジアゼピン系の薬剤もベンゾジアゼピン骨格を有しないだけで、GABAA受容体複合体に存在するベンゾジアゼピン受容体に結合して効果を発揮します。

ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の違い

ベンゾジアゼピン系の薬剤とは、ベンゾジアゼピン骨格を構造式にもっている薬剤のことをいいます。
一方で非ベンゾジアゼピン系の薬剤は図1ようなベンゾジアゼピン骨格をもっていません。

図1 ベンゾジアゼピン骨格 構造式

しかし作用部位はどちらも同じでGABAA受容体複合体に存在するベンゾジアゼピン受容体に作用します。

非ベンゾジアゼピン系は3成分とも超短時間作用型に分類されます。

参考記事
ベンゾジアゼピン受容体作動薬・抗不安薬・睡眠薬一覧 

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は作用時間も短く翌日持ち越しも少ないことから処方されるハードルも低い傾向にあります。
その分、長期連用による依存性の形成には注意しなければいけません。

非ベンゾジアゼピン系薬剤の作用機序

非ベンゾジアゼピン系薬剤は抑制性として働くGABAA系の神経回路を増強させます。

GABAA受容体複合体にあるベンゾジアゼピン受容体に薬剤が結合

塩化物イオン(Clを細胞内に流入

GABAA系の抑制システムを増強

催眠鎮静作用を発揮

 

ちなみに上記の作用機序はベンゾジアゼピン系薬剤も同様です。
ベンゾジアゼピン受容体には下記のようなサブタイプがあり、親和性の違いによって睡眠薬や抗不安薬として使い分けられるのです。

サブタイプ 作用
α1 催眠作用
α2、α3、α5 抗不安作用
筋弛緩作用

特に非ベンゾジアゼピン系薬剤はα1への親和性が高いことから睡眠薬として使用されています。

ちなみに以前はベンゾジアゼピン受容体のサブタイプはω1、ω2の分け方をしていましたが、最近ではαの分類が主流のようですね。

まとめ

 

  • 非ベンゾはベンゾジアゼピン骨格を有しない
  • 非ベンゾもベンゾもベンゾジアゼピン受容体に作用
  • 非ベンゾもベンゾジアゼピン受容体作動薬として扱われる
    →長期投与による減算の対象
  • 非ベンゾはベンゾジアゼピン受容体のα1への親和性が高い
    →睡眠薬として使用

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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