NaSSA一覧・作用機序・服薬指導の確認事項

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ剤Noradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressant:NaSSA)。

NaSSAの読み方は「ナッサ」で、日本ではミルタザピン(商品名:レメロンリフレックス)が販売されています。

ミルタザピンはピペラジノアゼピン系の四環系抗うつ薬であるミアンセリン塩酸塩(商品名:テトラミド)の探索研究から創薬されました。

SSRIやSNRIに比べて消化器症状や性機能障害の副作用頻度が少ないことから、これらの副作用が問題となる場合にSSRIやSNRIからNaSSAに切り替えられるケースがあります。

NaSSAの作用機序や、薬局での服薬指導の注意点についてまとめました。

NaSSA一覧

日本で販売されているNaSSAは一成分で、Meiji Seikaファルマ(リフレックス錠)とMSD(レメロン錠)から併売されています。

一般名 商品名
ミルタザピン リフレックス錠15mg,30mg
レメロン錠15mg,30mg

 

NaSSA作用機序

うつ病では脳内のセロトニン、ノルアドレナリンの量が少なくなっていると考えられています。

セロトニンが不足することで、不安や緊張、ノルアドレナリンが不足することで不安や意欲の低下がみられます。(図1 参照)

図1 ノルアドレナリン・セロトニン・ドパミン関係

ノルアドレナリンやセロトニンの再取り込みを阻害するのではなく、ノルアドレナリン神経及びセロトニンの神経伝達を促進させるのがNaSSAの特徴です。

大きく下記の3つによってノルアドレナリン神経及びセロトニン神経の神経伝達を促進させます。

  1. ノルアドレナリン(NA)遊離促進
  2. セロトニン(5-HT)遊離促進
  3. 5-HT1受容体にセロトニンが特異的に刺激

細かい作用機序を解説いたします。

図2 ミルタザピン作用部位

ノルアドレナリン(NA)遊離促進

ノルアドレナリン細胞体に存在するα2アドレナリン自己受容体(NA神経活動を抑制)に拮抗
→NA神経を活性化しNA遊離を促進
シナプス前α2アドレナリン自己受容体(NA神経活動を抑制)に拮抗
→NA遊離を促進

セロトニン(5-HT)遊離促進

NA遊離促進により5-HT神経細胞体のα1アドレナリン受容体が刺激
→5-HT遊離を促進
シナプス前α2アドレナリンヘテロ受容体(5-HT遊離を抑制)に拮抗
→5-HT遊離を促進

5-HT1受容体に特異的に刺激

5-HT2A/2c及び5-HT3受容体遮断作用
→遊離されたセロトニンは特異的に5-HT1受容体を刺激

ミルタザピンが消化器障害や性機能障害の副作用頻度が低い理由

セロトニンが5-HT2受容体に結合することで性機能障害、5-HT3受容体に結合することで消化器障害の原因となります。

ミルタザピンは5-HT2A/2c及び5-HT3受容体を遮断することで、抗不安作用や抗うつ作用を示す5-HT1受容体にセロトニンを特異的に結合させることから、性機能障害や消化器障害の副作用の頻度がSSRIやSNRIに比べて低いのです。

服薬指導の注意点

  • 眠気の副作用あり
    →自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事させないこと
    →就寝前服用が基本
    →飲み始めは特に眠気の副作用に注意し徐々に軽減すること説明

    レメロン錠のIFによると主な副作用は傾眠165例(50.0%)、口渇68例(20.6%)、倦怠感50例(15.2%)、便秘42例(12.7%)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加41例(12.4%)(330例中 承認時)

  • アルコールの摂取
    →鎮静作用が増強されるおそれがあるため飲酒を避けさせることが望ましい
  • CYP3A4阻害薬誘導薬併用注意
    ミルタザピンは肝代謝酵素のCYP1A2、CYP2D6及びCYP3A4にて代謝
  • 自己判断での休薬・増量・減量を避ける
    効果発現まで1週間前後かかること説明

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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