セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(Serotonin Norepinephrine Reuptake Inhibitor,SNRI)。
セロトニンだけでなくノルアドレナリンの濃度を増加させることから、意欲低下や無気力が目立つ場合にSNRIが選択されるケースがあります。
SNRIはハイリスク薬に分類され、薬局では特に注意が必要な薬剤です。
SNRIの一覧、作用機序、服薬指導でのチェックポイントについてまとめました。
日本で上市されているSNRIは下記の3成分です。
一般名 | 商品名 | 特徴 |
---|---|---|
ミルナシプラン塩酸塩 | トレドミン | CYP影響なし 尿閉に禁忌 |
デュロキセチン塩酸塩 | サインバルタ | うつ以外の適応あり 線維筋痛症 慢性腰痛症、変形性関節症、糖尿病性神経障害に伴う疼痛 |
ベンラファキシン塩酸塩 | イフェクサーSR | 低用量でセロトニン 高用量でセロトニンとノルアドレナリンに作用 |
うつ病では脳内のセロトニン、ノルアドレナリンの量が少なくなっていると考えられています。
セロトニンが不足することで、不安や緊張、ノルアドレナリンが不足することで不安や意欲の低下がみられます。(図2 参照)
SNRIはシナプス間隙のセロトニン、ノルアドレナリン量を増やすことで、うつ症状や意欲の低下を改善します。
具体的な作用機序は下記のとおり。
脳内の前シナプスのセロトニンとノルアドレナリンを再吸収するトランスポーターにSNRIが結合
↓
前シナプスでのセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害
↓
シナプス間隙のセロトニン(5-HT)とノルアドレナリン(NA)の量が増える(正常に戻る)
↓
抗うつ作用を示す
SNRIはハイリスク薬に分類されます。
特定薬剤管理指導加算の対象となることからも、服薬指導の際は特に注意が必要な薬剤です。
以前勤務していた薬局での話ですが、同僚の薬剤師が
「この薬(SNRI)を服用して血圧はあがってませんか?」
と患者さんに確認したところ、次回の受診で主治医に「血圧が上がる薬なら飲みたくない」と訴えられ、主治医から薬局にクレームの連絡がありました。
服薬指導では主治医と患者さんの信頼関係をフォローしていくことが重要ですので、副作用の確認は慎重に行う必要があります。
SNRIに代表的な副作用をピックアップします。
悪心・嘔吐
5-HT3受容体刺激が原因
投与初期の頻度が高い
継続で軽減されることが多いため自己判断で中止しないように伝える
モサプリド(商品名:ガスモチン)が追加されることあり
QOLに影響がでる場合は他剤(NaSSAなど)に変更提案
眠気
服用開始1〜2週間に特に現れやすい
徐々に軽減していくことを説明
尿閉
ノルアドレナリン受容体刺激が原因
頭痛
ノルアドレナリン受容体刺激が原因
QOLに影響があればSSRIなどへの変更提案
血圧上昇
ノルアドレナリン受容体刺激が原因
アルコールは避けるよう指導
車の運転の可否は下記のとおり(IF参照)
商品名 | 車の運転 |
---|---|
トレドミン | 眠気・めまい自覚した場合は× |
サインバルタ | 眠気・めまい自覚した場合は× |
イフェクサー | × |
効果発現までに数週間かかるため自己判断で中止しないよう指導
消化器SE防止の目的からも食後に服用するよう指導
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