SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)作用機序・一覧・服薬指導の要点

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

選択的セトロニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors, SSRI)。

Reuptakeとは「再取り込み」の意味で、SSRIの作用部位は受容体でなく、セロトニントランスポーターでセロトニンの再取り込みを阻害します。

SSRIは4成分が上市されています。

ハイリスク薬に分類され特定薬剤管理指導加算の対象となることからも、服薬指導の際は特に注意が必要な薬剤です。

SSRIの一覧、作用機序、服薬指導での注意点についてまとめました。

SSRI一覧・適応比較

一般名・商品名一覧

一般名 商品名 特徴
フルボキサミンマレイン酸塩 デプロメール錠
ルボックス錠
CYP1A2、2C19を強く阻害
併用禁忌薬に注意
他のSSRIに比べ半減期が短いため分2
パロキセチン塩酸塩 パキシル錠 
パキシルCR錠
CYP2D6を強く阻害
併用禁忌薬に注意
抗コリン作用があり
塩酸セルトラリン ジェイゾロフト錠 薬物相互作用少ない
エスシタロプラムシュウ酸塩 レクサプロ錠  初期投与10mgで治療量
アロステリック作用あり
QT延長がある患者には禁忌

 

効能・効果一覧

適応症 適応のある薬剤
うつ病・うつ状態 デプロメール錠
ルボックス錠
パキシル錠・CR錠
ジェイゾロフト錠
レクサプロ錠
社会不安障害 デプロメール錠
ルボックス錠
パキシル錠
レクサプロ錠
強迫性障害 デプロメール錠
ルボックス錠
パキシル錠
パニック障害 パキシル錠
ジェイゾロフト錠
外傷後ストレス障害 パキシル錠
ジェイゾロフト錠

 

SSRI作用機序

うつ病は前シナプスと後シナプスの間(シナプス間隙)のセロトニンが減少し、情報伝達がうまくいかないことが原因と考えられています。

この仮説に基づいて開発されたのがSSRIです。

セロトニンは不安や緊張、いらいらを緩和する働きがあります。(図2参照)

SSRIの作用機序は下記のとおり。

脳内の前シナプスのセロトニン再吸収部位であるセロトニントランスポーターにSSRIが結合

前シナプスでのセロトニン再取り込みを阻害

シナプス間隙のセロトニン(5-HT)量が増える

後シナプスのセロトニン受容体へのセロトニン結合が増える(正常に戻る)

抗うつ作用を示す

図1 SSRI作用機序

図2 セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン働き

レクサプロのアロステリック作用

レクサプロには他のSSRIにはないアロステリック作用があります。

前シナプスでセロトニンを再吸収するセロトニントランスポーターには下記の2つの結合部位があります。

  • プライマリーサイト(セロトニン再取り込み阻害に関与)
  • アロステリックサイト(プライマリーサイトとSSRIの結合調整に関与)

通常SSRIはプライマリーサイトに結合し、セロトニンの再取り込みを阻害します。
しかし時間が経過するとプライマリーサイトからSSRIが解離し、セロトニン再取り込みが復活してしまいます。

レクサプロはプライマリーサイトに加え、アロステリックサイトにも結合することができます。

アロステリックサイトにも結合するとトランスポーターの構造が変化し、レクサプロがプライマリーサイトから解離しにくくなるのです。

そのためレクサプロのセロトニン再取り込み阻害作用は他のSSRIに比べて長時間持続すると考えられています。

SSRI服薬指導のポイント・注意点

SSRIはハイリスク薬に該当します。

服薬指導では

「患者さんに不安を与えないこと」
「処方医と患者の信頼関係を壊さないこと」

を心がけて、必要に応じて指導・フォローしていく必要があります。

副作用

  • 5-HT3受容体刺激による悪心・嘔吐
    →投与初期の頻度が高い
    継続で軽減されることが多いため自己判断で中止しないように伝える
    モサプリド(商品名:ガスモチン)が追加されることあり
    QOLに影響がでる場合は他剤(NaSSAなど)に変更提案
  • 5-HT2受容体刺激による性機能障害
    →QOLに影響があるなら他剤に変更検討
    デリケートな問題なので確認は慎重に
  • 抗コリン作用による口渇・便秘
    →パキシル、デプロメール・ルボックス
    シュガーレスのアメ・ガムなど摂取で唾液分泌促進
  • 頻度は低いがセロトニン症候群について薬剤師は理解しておく
    関連記事 SSRIやSNRIによるセロトニン症候群の初期症状・治療薬

 

薬物相互作用

  • フルボキサミン(商品名:デプロメール・ルボックス)はCYP1A2、2C19を強く阻害
    →CYP1A2で代謝されるラメルテオン(商品名:ロゼレム)、チザニジン(商品名:テルネリン)と併用禁忌
  • パロキセチン(商品名:パキシル)はCYP2D6を強く阻害
    →CYP2D6で代謝されるピモジド(商品名:オーラップ)は併用禁忌タモキシフェン(商品名:ノルバデックス)は併用注意
  • セロトニン作用を増強させるセントジョーンズワート(SJW)は併用注意

生活面

  • アルコールは併用注意
  • 車の運転は下記のとおり
薬品名 車の運転
デプロメール
ルボックス
禁止
パキシル 注意
ジェイゾロフト 注意
レクサプロ 注意

 

服用面

  • 切り替え時や中止時は漸増、漸減されるため自己判断で突然中止はしないように注意。
  • 効果がでるまで2週間前後と時間がかかるため自己判断で中止させないこと。
  • フルボキサミン(デプロメール・ルボックス)は噛み砕くと苦み・しびれがある。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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