注意欠陥/多動性障害(AD/HD)はAttention-Deficit/Hyperactivity Disorderの略で、7歳未満に発症する発達障害の一つです。
不注意、多動性、衝動性の3つが主症状となります。
主症状 | 具体的症状 |
---|---|
不注意 | 忘れ物をする 約束を忘れる すぐに気が散る |
多動性 | じっとできない 静かにできない 落ち着きがない |
衝動性 | 質問が終わる前に答える 順番を抜かす |
注意欠陥/多動性障害の治療は環境調整・支援、認知行動療法といった非薬物療法と、薬物療法があります。
AD/HDに効能・効果のある薬剤は下記の3つです。
コンサータは中枢刺激薬、ストラテラ、インチュニブは非中枢刺激薬に分類されます。
2017年5月に薬価収載されたインチュニブ(一般名:グアンファシン塩酸塩)がどのような薬剤なのか、他の薬剤との違いについてまとめていきます。
AD/HDでは脳内での情報伝達が適切に調節されていないと考えられています。
インチュニブ(グアンファシン)は作用機序は明確にわかっていないようですが、脳内の情報伝達を高めることでAD/HDを改善すると推測されています。
前頭前皮質の錐体細胞の後シナプスにはα2Aアドレナリン受容体が存在するのですが、α2Aアドレナリン受容体の活性化レベルが低いと、HCN チャネルが開放し、シグナル伝達が弱くなってしまいます。
インチュニブ(グアンファシン)を投与すると、
後シナプスα2Aアドレナリン受容体を選択的に刺激
↓
HCNチャネルが閉じる
↓
シグナル伝達が増強
の流れでシグナル伝達が増強し、AD/HDを改善すると考えられています。
選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬と聞いて薬剤師ならピンとくると思いますが、
α2作動薬といえば、グアナベンズ(商品名:ワイテンス)やメチルドパ(商品名:アルドメット)のように降圧薬をイメージされるかと思います。
インチュニブの有効成分であるグアンファシン塩酸塩は降圧剤としてエスタリック0.5mgという商品名で販売されていましたが2005年に販売中止となっています。
つまり、インチュニブには血圧を低下させる作用があることから血圧低下や徐脈に注意しなければいけません。
インチュニブは主に肝代謝酵素のCYP3A4やCYP3A5で代謝されるため、CYP3A4やCYP3A5を強く阻害・誘導する薬剤とは「併用注意」となっています。
上記併用時はインチュニブの減量が必要あり(添付文書上では1日1mgより開始)。
添付文書にインチュニブ増量の記載はないが、アメリカでは併用時にインチュニブ増量の記載あり。(インチュニブIF参照)
また機序は不明ですがバルプロ酸(商品名:デパケン、バレリン)との併用でバルプロ酸の血中濃度が上昇することが報告されており、併用注意となっています。
インチュニブのインタビューフォームによると安全性評価対象症例254例中の主な副作用は
となっています。
商品名 | コンサータ | ストラテラ | インチュニブ |
一般名 | メチルフェニデート塩酸塩 | アトモキセチン塩酸塩 | グアンファシン塩酸塩 |
分類 | 中枢刺激 | 非中枢刺激 | 非中枢刺激 |
作用機序 | DA,NA再取り込み阻害 DA直接放出 |
選択的NA再取り込み阻害 | 選択的αA2受容体作動 |
向精神薬 | 第1種向精神薬 30日制限 |
該当なし | 該当なし |
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