スボレキサント(ベルソムラ)の作用機序・併用禁忌・服薬指導のポイントは?

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

新しい作用機序の不眠症治療薬、オレキシン受容体拮抗薬のベルソムラ(一般名:スボレキサント)が2015年12月1日より長期投与(14日以上)解禁となりました。

長期処方解禁に伴い今後、処方されるケースも増えてくるかと思いますので、ベルソムラ(スボレキサント)の作用機序についてシンプルにまとめてみたいと思います。

オレキシン受容体とは?

脳内には、覚醒を維持するオレキシンという物質があります。

オレキシンはオレキシン受容体に結合することで、脳の覚醒状態を維持するといわれています。

不眠とは?覚醒と睡眠の関係

ベルソムラ(一般名:スボレキサント)の作用機序を述べる前に、そもそも不眠について簡単に説明したいと思います。

脳内には「睡眠システム」と「覚醒システム」の2つのシステムによって、睡眠と覚醒が調整されています。

不眠とは、下記のように覚醒が睡眠を上回った状態のことをいいます。

覚醒>睡眠

ベルソムラ(一般名:スボレキサント)の作用機序は?

ベルソムラ(一般名:スボレキサント)はオレキシン受容体を拮抗することで、オレキシンの働きを弱め、結果的に「覚醒システム」を弱めます。

ベルソムラ投与

覚醒<睡眠

このように覚醒システムを抑え相対的に睡眠システムを優位にさせることで、自然に近い睡眠効果があるのです。

代謝は?

主にCYP3Aで代謝されますので、CYP3Aを強く阻害する薬剤は併用禁忌となっています。

ベルソムラと併用禁忌の薬剤一覧

CYP3Aを強く阻害する薬剤は併用禁忌となります。

  • イトラコナゾール
  • クラリスロマイシン
  • リトナビル
  • サキナビル
  • ネルフィナビル
  • インジナビル
  • テラプレビル
  • ボリコナゾール

中等度CYP3A阻害薬併用で10mgに減量を

併用禁忌薬以外でCYP3Aを阻害するジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾールを併用時はスボレキサントの血中濃度が上昇する可能性がありますので、1日10mgへ減量を考慮し、患者さんの状態を慎重に観察する必要があります。

投与制限(処方制限)はなし・向精神薬には該当しない

ベルソムラは向精神薬に該当しないため、30日制限や90日制限といった処方制限は受けません。

薬局薬剤師は併用禁忌をチェック

不眠治療薬としては、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬に続く新しいタイプの薬剤のため、期待も大きな薬剤といわれています。

禁忌薬が多い薬剤なので注意しなければいけません。

特に処方頻度の高いクラリスロマイシン(商品名:クラリス)は併用禁忌がスルーされる可能性がありますので注意しなければいけません。

調剤・服薬指導のポイント

  • 通常は1回20mg 高齢者には1回15mg
  • 用法は就寝直前(寝る5〜10分前)
  • 食事の影響をうけるため食後2時間は避ける(食後でTmaxの延長の報告あり)
  • CYP3Aを阻害薬との併用に気をつける(クラリスロマイシンは禁忌
  • 一包化での安定性試験はしていないため推奨されていない
  • CYP3Aを阻害するグレープフルーツジュースは念のため控える

 

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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