透析患者数は近年増加傾向にあります。
それに伴い薬剤師も透析患者さんと接する機会が増えてくると思いますが、透析の種類や導入について知っている薬剤師は意外に少ないのではないでしょうか。
特に調剤薬局に勤務する薬剤師だと、透析に触れる機会が少ないこともあるかと思います。
透析導入の基本について述べたいと思います。
透析を導入する目安は、おおまかに腎機能が10%以下になった時です1),2)。
しかし、薬物治療でもコントロールできない重度の尿毒症、むくみ、心不全、高カリウム血症が現れた場合は、早期に行う必要があります。
透析導入をする際は、以下の腎機能、臨床症状、生活の状態を点数化して判断します2)。
これらの項目の中で3つ以上当てはまると30点、2つ以上は20点、1つは10点とします2)。
※10歳以下の年少者、65歳以上の高齢者、全身血管合併症のある患者については10点加算する。
小児においては、血清クレアチニン値ではなくクレアチニンクリアランスを用います2)。
以上の3つの項目の合計点数が60点以上となった時は、原則として透析導入となります2)。
人工透析には主に「血液透析」と「腹膜透析」の2種類あります1),3)。
血液透析とは、ダイアライザーを介して患者さんの血液を浄化して体内に戻す方法で、90%以上の透析患者さんに用いられています。
血液透析は一般的には1回4時間程度、週3回行います。
腹膜透析とは、患者さんの腹膜を透析膜として利用する方法です。
腹腔内に透析液を入れて、血液中の老廃物や余分な水分を透析液に移行させた後に、透析液を体外に排出し、また新しい透析液を注入します1)。
腹膜透析には、1日3~5回透析液を交換する持続携行式腹膜透析(CAPD)と寝ている間に透析液を自動で交換する自動操作腹膜透析(APD)があります1),3)。
腹膜透析は自宅や職場で患者さん自ら行う方法で、安定していれば月1~2回の通院ですみます1),3)。
血液透析を導入する際は、症状が悪くなる前にシャント手術を行います。
その後、症状が悪化したり尿毒症の症状が出たら、入院して透析を開始します。この流れを計画導入と言います1)。
≪シャント手術とは?≫
血液透析を行う際、血液の出入り口であるバスキュラーアクセスが必要不可欠となります1)。
最も代表的なバスキュラーアクセスは、上腕の動脈と静脈をつないで作製した動静脈シャント(通称:シャント)です。
この動脈と静脈をつなぐ手術をシャント手術と言います1)。
腹膜透析を導入する場合は、まず透析液の出し入れを行うためのカテーテルを埋め込む手術を行います3)。
また患者やその家族に対して腹膜透析についての知識やバッグ交換について教育指導が行われます3)。
多くの透析患者さんはたくさんの種類の薬を服用するため、一包化するケースが多いです。
透析日と透析しない日(非透析日)で、服用する薬の種類も変わったりするので、薬剤師は調剤の際に注意しなければいけませんし、患者さんが飲み忘れたり、飲み間違えていないか確認しなければなりません。
透析はずっと続けていかなければならないので、患者さんにとっては身体的・精神的な負担が続くこととなります。
そこで、我々薬剤師が透析患者さんの薬物治療に貢献し、患者さんのQOLの向上に寄与することは重要ではないでしょうか。
参考文献
1) 患者さんとともに理解するCKDと血液透析 (南江堂)
2) 東京女子医科大学病院 腎臓病総合医療センター ホームページ
1.血液透析導入基準
http://www.twmu.ac.jp/NEP/touseki/touseki-kijyun.html
3) 全腎協 一般社団法人 全国腎臓病協議会ホームページ
https://www.zjk.or.jp/
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