こんにちは。
メディカルライターのサエです。
透析患者さんの悩みの一つに「かゆみ」があります。
痒みに対して抗ヒスタミン薬が投与されるケースもありますが、透析患者に禁忌の薬剤や、減量が必要な薬剤がありますので薬剤師は注意が必要です。
透析患者さんに痒みが生じる理由、治療薬について解説していきます。
多くの透析患者さんにかゆみの症状はみられます。
かゆみのメカニズムは特定されていませんが、色々な要因があります。
いくつか要因を挙げてみました1)。
血液透析患者さんは脱水状態にあるので皮膚が乾燥しています。
そこで白色ワセリン、ヘパリン類似物質(商品名:ヒルドイドソフト軟膏®)などを使用して肌を保湿する必要があります。
そしてヒスタミンなどのメディエーターの過剰産生を抑制するために抗ヒスタミン薬、ステロイドなどの外用薬や、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬といった内服薬を使用します。
また十分な透析を行い、内因性物質の蓄積を予防します。
今挙げた抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、保湿剤、ステロイドでも効きにくい場合、ヒスタミン以外のケミカルメディエーターや神経線維の表皮内伸長、内因性オピオイド(βエンドルフィンなど)等が関与している可能性があります2)。
その場合は選択的オピオイドκ受容体作動薬であるナルフラフィン塩酸塩(商品名:レミッチ®)を使用します。
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透析による皮膚の痒み治療薬・ナルフラフィン(レミッチ・ノピコール)作用機序
透析のかゆみに関与している内因性オピオイド、βエンドルフィンはオピオイドμ受容体を作動させます。
このμ受容体の活性化によりかゆみが発生します。
オピオイド受容体にはμ(読み方:ミュー)、κ(読み方:カッパ)、δ(読み方:デルタ)の3つのサブタイプがあり、κ受容体はμ受容体と相反する薬理作用を示します。
よって、κ受容体を活性化させることでμ受容体を介したかゆみを抑制することができます。
ナルフラフィン塩酸塩はκ受容体を選択的に作動させることでかゆみを抑える効果があります。
適応は既存治療では効果不十分な透析患者、慢性肝疾患患者のみで、用量は1日1回2.5μg(最大5μg)です3)。
眠気、めまいの副作用が報告されていることと、睡眠障害につながる夜間のかゆみを取り除くという観点から夕食後または就寝前に服用します4)。
副作用については眠気の他に不眠、便秘などもあります。
ほとんどの第1世代抗ヒスタミン薬については減量の必要はありません。
クレマスチンフマル酸塩(商品名:タベジール®)に関してはデータがほとんどないため不明です5)。
第2世代抗ヒスタミン薬では、以下の薬剤については減量する必要があります。
腎機能低下患者ではCmax、AUCが増加し、高い血中濃度が持続する可能性があります6)。
消失半減期の延長がみられます。
クレアチニンクリアランス(CLcr)10ml/min未満の患者には禁忌です7)。
添付文書の【使用上の注意】では腎機能低下患者に対する記載はありませんが、【薬物動態】ではCmaxが1.5倍及び1.7倍、消失半減期が1.6倍及び1.8倍と少し増加・延長しています8)。
また、末期腎不全患者ではP糖たんぱく質の機能低下によりAUCが2.8倍増加するという報告があります5)。
腎機能低下患者ではAUCの増加がみられます9)。
腎機能低下患者ではAUCの増加、消失半減期の延長がみられます。透析患者には禁忌です。CLcr10ml/minの患者には禁忌です10)。
表:用量調節する必要のある第2世代抗ヒスタミン薬
メディエーター遊離抑制薬については、クロモグリク酸ナトリウム(商品名:インタール®)は減量の必要がなく、トラニラスト(商品名:リザベン®)はデータがなく不明です5)。
Th2サイトカイン阻害薬のスプラタストトシル酸塩(商品名:アイピーディ®)についてはデータがなく不明ですが、減量の必要はないと思われます5)。
透析のかゆみは辛く、ひどい場合は睡眠にも悪影響を及ぼします。
薬局に勤めていた時もかゆみに悩まされる透析患者さんは多くいらっしゃいました。
特に冬場は乾燥しやすく、ヒルドイドとステロイドの混合軟膏が処方されるケースが多くありました。
かゆみをコントールするのは透析患者さんのQOL向上させるためにもとても重要ですね。
【参考文献】
1)患者さんとともに理解するCKDと血液透析 南江堂
2)鳥居薬品ホームページ レミッチ®製品情報
3)レミッチ®添付文書
4)レミッチ®医薬品インタビューフォーム
5)腎機能別薬剤投与量 じほう
6)アレロック®添付文書
7)ジルテック®添付文書
8)アレグラ®添付文書
9)タリオン®添付文書
10)ザイザル®添付文書
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