CKDにおける薬物治療について~高カリウム血症、尿毒症の治療~

この記事を書いた人

サエ

薬剤師
東邦大学 薬学部卒

こんにちは。

メディカルライターのサエです。

慢性腎臓病(CKD)の進行に伴い問題になってくる高カリウム血症治療と尿毒症治療について述べたいと思います。

慢性腎臓病(CKD)についてはこちらにまとめています。

慢性腎臓病(CKD)の定義・原因・治療について

高カリウム血症

高K血症について

CKDが進行すると、腎機能低下によるカリウム(K)排泄の低下と代謝性アシドーシスにより、血清K値は上昇します。

Kは尿中に排泄されます。

透析直前、または透析導入初期には尿量が保たれていることが多く、Kが上昇しにくいのですが、尿量が減っていくと高K血症になっていきます1)

また、最近はCKD患者さんにARBやACE阻害薬を積極的に使用するようになったので、高K血症になりやすくなっています1)

高K血症への対策

1.K含有量の多い食事の制限

まずはKを多く含有している食品を控えます。

Kが多い食品を控える

  • 野菜類
    青菜類、レンコン、カボチャ、ブロッコリーなど
  • 果物
    バナナ、メロン、キウイフルーツなど 
  • 乾燥食品
    干し芋、切り干し大根、ドライフルーツなど
  • 芋類
  • インスタントコーヒー
  • 海藻類
  • 豆類
  • 減塩醤油
  • 抹茶

また、調理を工夫することでK含有量を減らすことができます。

Kを減らす具体的な調理法
①芋類は小さくカットしてゆでこぼす(3~5分)
②野菜はゆでこぼしたり、水にさらす(1時間ぐらい)
③芋、野菜のゆで汁は捨てる。

また、たんぱく質制限を行うと魚、肉類からのK摂取量が減り、野菜、果物、芋類などの制限が緩和できます。

2.利尿剤の使用

高血圧、浮腫が認められれば、少量のサイアザイドまたはループ利尿薬の使用を検討します。

3.陽イオン交換樹脂の使用

透析が十分であるかを確認した上で、K値が高いようなら陽イオン交換樹脂を使用します。
これは腸管内で食事中のKと結合して便として排泄する薬です。

これらは便秘、食欲不振といった消化器系の副作用が起こりやすいので少量から開始します。

表1.高K血症治療のための陽イオン交換樹脂一覧

成分名 商品名
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム ケイキサレート散
ケイキサレートドライシロップ
ポリスチレンスルホン酸カルシウム カリメート散
カリメートドライシロップ
カリメート経口液
アーガメイトゼリー
アーガメイト顆粒

 

このように陽イオン交換樹脂には色々な剤形があります。

カリメート散、ケイキサレート散が飲みにくかったら、カリメートドライシロップ・経口液、アーガメイトゼリーという選択肢もあります。

カリメート経口液にはノンフレーバーオレンジフレーバーがあります。

両方とも味見したことがありますが、ノンフレーバーは結構甘く、甘いものが苦手な人には苦手かもしれません。
オレンジフレーバーは、ノンフレーバーよりはあっさりしていて飲みやすかったです。

尿毒症の治療

CKDステージG4~G5では標準的な治療に加えて球形吸着炭(商品名:クレメジン細粒・カプセル・速崩錠)を併用します2)

腎不全になると、腎臓から尿毒症物質が排泄されなくなります。

球形吸着炭は腸管内で尿毒症物質と結合して便として排泄することで、血中の尿毒症物質濃度を低下させます。
これにより、残存しているネフロンへの負荷を防ぎ、CKDの進行を抑えたり、尿毒症症状を改善したり、透析導入を遅らせるというメリットがあります1)

しかし、球形吸着炭は他の薬剤を吸着するので、他の併用薬と30分以上時間をずらしたり、食間に服用するので飲み忘れが起こりやすいです。

また、1日6gを3回に分けて服用するので、細粒(分包2g)だと通常1回に2g、カプセル(200mg)だと1回10カプセル服用しなければならず、飲みにくい薬と言えます。

便秘、食欲不振といった消化器系の副作用もあり、注意が必要です。

球形吸着炭を服用することはとても重要ですが、これらの理由から患者さんの服薬アドヒアランスが悪くなりやすいので、私達薬剤師がしっかりとフォローしていく必要があります。

ただ、2018年に発売されたクレメジン速崩錠500mgは1回4錠の服用で済むのと、少量の水で速やかに崩壊するという特徴があるので、細粒、カプセルと比較すると飲みやすくなり、服薬アドヒアランスの向上を期待できます。

まとめ

高K血症治療薬、球形吸着炭も便秘などの消化器系の副作用が起こりやすく、人によっては飲みにくいということもあり、服薬アドヒアランスが低下しやすいです。

また、K値が上がらないよう食事にも注意しなければならないので、CKDステージが進行している患者さんの負担は大きいでしょう。

私も薬局勤務時代にクレメジンをどうしても飲み忘れると言う患者さんに会いましたが、携帯のタイマーを使うなど色々アドバイスをしました。

私達薬剤師がこのような患者さんの服薬アドヒアランス向上に貢献できたら素晴らしいなと思います。

【参考文献】

1)患者さんとともに理解するCKDと血液透析
2)CKD診療ガイド2012
3)クレメジンカプセル・細粒添付文書

この記事を書いた人

サエ

薬剤師
東邦大学 薬学部卒

東邦大学大学院薬学研究科で修士課程修了後、都内の病院で薬剤師として勤務。その後、調剤薬局へ転職。東京、千葉、福島にて勤務経験あり。
現在は石川県で育児の傍ら勉強中。英会話が趣味で、TOEIC810点取得。

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