薬剤師が注意するべき腎臓の指標(クレアチニンクリアランス・BUN・eGFR)

この記事を書いた人

サエ

薬剤師
東邦大学 薬学部卒

慢性腎臓病 (CKD)の患者数は1330万人に達しており、新たな国民病と言われています(CKD診療ガイド2012より)。

CKDでは腎機能が低下していますが、腎機能低下は薬物動態に影響を及ぼすので、我々薬剤師は注意しなければなりません。

そこで、腎臓の基本的な機能、薬剤師が注意するべき腎機能の指標について述べたいと思います。

腎臓の機能

腎臓は主に下記の働きがあります1)

1. 体液の調節
2. 老廃物の排泄
3. 電解質の調節
4. 塩酸基の調節
5. 血圧の調節
6. ビタミンDの活性化
7. エリスロポエチンの分泌
8. レニンの分泌

血清クレアチニンとクレアチニンクリアランス(CCr)

クレアチニン(Cr)は筋肉で生成される老廃物であり、腎臓で糸球体濾過された後、ほとんど再吸収されずに尿中に排出されます。

しかし、腎機能が低下するとCrが十分に排出されなくなるので、血液中のCr濃度が上昇します。

したがって、血清Cr値を測定することで腎機能を推定できます。

血清クレアチニンの正常値は男性は0.6~1.0mg/dLで、女性は0.4~0.8mg/dLです1)

しかし、この血清Cr値には欠点があります。
産生されるCr量は筋肉量に依存するため、性別、体重、体格によって変化してしまいます。

例えば高齢者、女性、小柄な人の場合、筋肉量が少ないので、腎機能が低下しているのにも関わらず、血清Cr値が基準値の範囲内に入っていて見逃してしまう可能性があります。

このように血清Cr値を解釈する際は注意が必要です。

クレアチンクリアランスはいくつかの式を用いて血清Cr値から予測できますが、コッククロフト・ゴールト(Cockcroft & Gault)の式がよく用いられます2)

<コッククロフト・ゴールトの式>
男性:Ccr (ml/min) = [{140 – 年齢}×体重 (kg) ]÷{72×血清クレアチニン (mg/dL)}
女性はさらに×0.85(筋肉量が少ないため)

健常者のクレアチニンクリアランスは80~100L/minくらいです2)

尿素窒素(BUN)

尿素窒素BUN:Blood Urea Nitorogen)は血液中の尿素に含まれる窒素成分で、体内で利用されたたんぱく質の老廃物です。

腎機能が低下するとBUNが上昇します。

しかし、BUNは脱水、食事など腎臓以外の影響を受けやすいので、腎機能の指標としては血清Cr値の方が信頼性は高いです。

BUNの基準値は8〜20mg/dlとなっています。

eGFR(推定糸球体濾過量)

糸球体濾過量(GFR)は糸球体で血液から1分間にどれくらいの原尿をつくるか示したもので、腎機能が下がるとGFRも低下します。

血清Crよりも正確な腎機能の指標とされています。

しかし、このGFRを検査方法はとても煩雑なので、血清Crと年齢と性別から計算によってGFRを推定するeGFR(推定糸球体濾過量 読み方:イージーエフアール)が用いられるようになりました。

男性:eGFR (ml/min/1.73m2) = 194×(血清Cr)-1.094×(年齢)-0.287
女性:さらに×0.739

腎機能が正常な人のeGFRはおよそ100 ml/min/1.73m2くらい1)で、通常は90以上であれば正常とされます。

腎機能とeGFR値

eGFRの数値別の分類は下記のとおりです3)

腎機能 eGFR値
正常or高値 >90
正常or軽度以下 60〜89
軽度〜中等度以下 45〜59
中等度〜高度以下 30〜44
高度以下 15〜29
末期腎不全 <15

 

まとめ

新たな国民病と言えるCKDの患者数は今後も増え、薬剤師もこれからCKD患者さんと接する機会は増えてくるでしょう。

最近は患者さんが自分の血液検査の結果を見せてくれるので、腎機能の指標を確認することで、腎機能が低下した患者さんへの適切な薬物治療に貢献していけたらいいと思います。

参照文献
1) 「患者さんとともに理解するCKDと血液透析」
2) 「添付文書がちゃんと読める薬物動態学」
3)   CKD診療ガイド2012  一般法人日本腎臓学会

この記事を書いた人

サエ

薬剤師
東邦大学 薬学部卒

東邦大学大学院薬学研究科で修士課程修了後、都内の病院で薬剤師として勤務。その後、調剤薬局へ転職。東京、千葉、福島にて勤務経験あり。
現在は石川県で育児の傍ら勉強中。英会話が趣味で、TOEIC810点取得。

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