経口カリウム製剤・使い分け・比較

この記事を書いた人

寺本 卓矢(てらもと たくや)

【所属】
いちょう薬局株式会社 経営戦略本部人材採用担当
シナジーファルマ株式会社 法人営業部関東ブロック統括
株式会社PHAIND 執行役員
【資格】
日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
【出身大学】
日本薬科大学 薬学部 卒業

経口カリウム製剤は4成分が存在しますが、どのような違いがあるのでしょうか。

2020年にノバルティス社のスローケー錠(一般名:塩化カリウム徐放剤)が販売中止になったことからも、経口カリウム製剤の切り替えや比較をされるケースが増えたのではないでしょうか。

経口カリウム製剤の違いや使い分けについて考えてみたいと思います。

経口カリウム製剤一覧・mEq・常用量比較

一般名 商品名 1錠・1gあたりmEq 1日常用量
塩化カリウム(粉末) 塩化カリウム「フソー」
塩化カリウム「ヤマゼン」
塩化カリウム「日医工」
13.4mEq 1日2〜10g
数回に分ける
1日合計26.8〜134mEq
塩化カリウム徐放剤 ケーサプライ錠600mg 8mEq 1回1200mg
1日2回
1日合計32mEq
グルコン酸カリウム グルコンサンK細粒 2.9mEq 1回10mEq
1日3〜4回
1日合計30〜40mEq
グルコンサンK錠585mg 2.5mEq
グルコンサンK錠1170mg 5mEq
L-アスパラギン酸カリウム アスパラカリウム散50% 2.9mEq 1回300mg〜900mg
1日3回
最高:1回3000mg
1日合計5.4〜16.2mEq
MAX54mEq
アスパラカリウム錠300mg 1.8mEq

 

カリウム製剤の使い分け

経口カリウム製剤の使い分けは、細胞外の重炭酸イオン(HCO3)が過剰になったアルカローシスの時はHCO3に変換されない無機カリウム(塩化カリウム)、細胞外の重炭酸イオン(HCO3)が少なくなっているアシドーシスではHCO3に変換される有機カリウム(グルコン酸カリウム、アスパラカリウム)が理論上は適切と考えられています。

アルカローシスとなる原因

重症嘔吐、ステロイド投与、利尿剤、ペニシリン系抗菌薬を投与時などの腎臓からのカリウム喪失時や、交感神経亢進、甲状腺機能亢進などのカリウムの細胞外から細胞内のシフト時。

アシドーシスとなる原因

尿細管性アシドーシスや、アミノグリコシド系抗菌薬を投与時などで腎臓からのカリウム喪失時など。

カリウム製剤の切り替え

2020年3月でスローケー(一般名:塩化カリウム徐放剤)が販売終了となり、後発医薬品のケーサプライの流通も制限がかかったことから、カリウム製剤の切り替えに苦労された薬剤師も多いのではないでしょうか。

カリウム製剤の比較はmgでなくmEq(読み方:メックorミリイクイバレント)となりますが、切り替え時にmEq数のみで比較・換算してはいけません。
理由は、それぞれの生体内利用率や組織移行性等が異なるからです。

カリウム製剤を切り替え時は処方医が血清カリウムを測定し調節していく必要がありますが、
切り替え時の一つの目安となるのが、常用量対比(読み方:じょうようりょうたいひ)です。

常用量対比とは、1日用量の上限を治療量として同等とする考え方です。

例えば、ケーサプライ錠からアスパラカリウム錠に変更したい場合を考えてみます。

常用量のmEqの上限は、アスパラカリウム錠16.2mEq、ケーサプライ錠32mEqとなることから、アスパラカリウムはケーサプライのmEqの約半分が治療量としては同等と考えます。

ケーサプライ錠600mgを2錠分2(1日16mEq)からアスパラカリウム錠300mgに切り替えたい場合、
アスパラカリウム錠300mgの1日量は8mEqに近い4錠〜5錠(1日7.2〜9mEq)が常用量対比の考えでは同等となります。

アスパラカリウムはインタビューフォームから細胞内移行が塩化カリウムより高いという記載があり、常用量対比では塩化カリウム徐放剤の約半分のmEq量となるのが納得できます。

カリウムの細胞内移行の指標としてウサギの赤血球を用いた実験で,赤血球内へのカリウム移行量は,L-アスパラギン酸カリウムの方が塩化カリウムよりも多かった。(in vitro,in vivo)

カリウムの細胞内取り込みの指標として赤血球(ウサギ,ヒト)内への移行をみると,L-アスパラギン酸カリウムは塩化カリウムより良好である。

イヌにL-アスパラギン酸カリウムをKとして1mEq/kg/hrを2時間静脈内持続投与において3 時間後の体内保有率は約70%であり,塩化カリウム(約30%)より良好であった。

引用元 アスパラカリウム インタビューフォーム

しかし常用量対比は、目安のひとつにしか過ぎませんので、カリウム製剤を切り替え後は処方医が血清カリウムを測定し調節していかなければいけません。

効能・効果の違い

適応症もそれぞれ異なりますので、カリウム製剤の切り替え時には確認しなければいけません。

一般名 商品名 効能・効果
塩化カリウム(粉末) 塩化カリウム「フソー」
塩化カリウム「ヤマゼン」
塩化カリウム「日医工」
◾️下記疾患又は状態におけるカリウム補給
・降圧利尿剤,副腎皮質ホルモン,強心配糖体,インスリン,ある種の抗生物質などの連用時
・低カリウム血症型周期性四肢麻痺
・重症嘔吐,下痢,カリウム摂取不足及び手術後

◾️低クロール性アルカローシス

塩化カリウム徐放剤 ケーサプライ錠600mg 低カリウム血症の改善
グルコン酸カリウム グルコンサンK細粒 低K状態時のK補給
グルコンサンK錠585mg
グルコンサンK錠1170mg
L-アスパラギン酸カリウム アスパラカリウム散50% ◾️下記疾患又は状態におけるカリウム補給
・降圧利尿剤、副腎皮質ホルモン、強心配糖体、インスリン、ある種の抗生物質などの連用時
・低カリウム血症型周期性四肢麻痺
・心疾患時の低カリウム状態
・重症嘔吐、下痢、カリウム摂取不足及び手術後
アスパラカリウム錠300mg

参考資料
・各製剤 添付文書・インタビューフォーム

この記事を書いた人

寺本 卓矢(てらもと たくや)

【所属】
いちょう薬局株式会社 経営戦略本部人材採用担当
シナジーファルマ株式会社 法人営業部関東ブロック統括
株式会社PHAIND 執行役員
【資格】
日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
【出身大学】
日本薬科大学 薬学部 卒業

【サイト】

【紹介文】
薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。

薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。

現在は新たに薬学生向けコンテンツサイト(薬学ステップ)を開設。

薬学生向けイベント企画運営なども手掛けている。

調剤薬局人材採用アドバイスやイベント企画、お仕事の依頼はこちら
info@phaind.jp

記事作成のサイトポリシーについてはコチラ

この投稿者の最近の記事

「寺本 卓矢」のすべての投稿記事を見る>>

コメント欄ご利用についてのお願い

  • 薬剤師、薬学生、調剤事務、医師、看護師といった医療に携わる方が使用できるコメント欄となります。
  • 「薬剤師の集合知」となるサイトを目指していますので、補足・不備などございましたらお気軽に記入いただけると幸いです。
  • コメントの公開は運営者の承認制となっており「他のユーザーにとって有益な情報となる」と判断した場合にのみ行われます。
  • 記事に対する質問は内容によってお答えできないケースがございます。
  • 一般消費者からの薬学、医学に関する相談や質問は受けつけておりません。

CAPTCHA


※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。

お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。

ページトップに戻る