経口カリウム製剤は4成分が存在しますが、どのような違いがあるのでしょうか。
2020年にノバルティス社のスローケー錠(一般名:塩化カリウム徐放剤)が販売中止になったことからも、経口カリウム製剤の切り替えや比較をされるケースが増えたのではないでしょうか。
経口カリウム製剤の違いや使い分けについて考えてみたいと思います。
一般名 | 商品名 | 1錠・1gあたりmEq | 1日常用量 |
塩化カリウム(粉末) | 塩化カリウム「フソー」 塩化カリウム「ヤマゼン」 塩化カリウム「日医工」 |
13.4mEq | 1日2〜10g 数回に分ける 1日合計26.8〜134mEq |
塩化カリウム徐放剤 | ケーサプライ錠600mg | 8mEq | 1回1200mg 1日2回 1日合計32mEq |
グルコン酸カリウム | グルコンサンK細粒 | 2.9mEq | 1回10mEq 1日3〜4回 1日合計30〜40mEq |
グルコンサンK錠585mg | 2.5mEq | ||
グルコンサンK錠1170mg | 5mEq | ||
L-アスパラギン酸カリウム | アスパラカリウム散50% | 2.9mEq | 1回300mg〜900mg 1日3回 最高:1回3000mg 1日合計5.4〜16.2mEq MAX54mEq |
アスパラカリウム錠300mg | 1.8mEq |
経口カリウム製剤の使い分けは、細胞外の重炭酸イオン(HCO3–)が過剰になったアルカローシスの時はHCO3–に変換されない無機カリウム(塩化カリウム)、細胞外の重炭酸イオン(HCO3–)が少なくなっているアシドーシスではHCO3–に変換される有機カリウム(グルコン酸カリウム、アスパラカリウム)が理論上は適切と考えられています。
重症嘔吐、ステロイド投与、利尿剤、ペニシリン系抗菌薬を投与時などの腎臓からのカリウム喪失時や、交感神経亢進、甲状腺機能亢進などのカリウムの細胞外から細胞内のシフト時。
尿細管性アシドーシスや、アミノグリコシド系抗菌薬を投与時などで腎臓からのカリウム喪失時など。
2020年3月でスローケー(一般名:塩化カリウム徐放剤)が販売終了となり、後発医薬品のケーサプライの流通も制限がかかったことから、カリウム製剤の切り替えに苦労された薬剤師も多いのではないでしょうか。
カリウム製剤の比較はmgでなくmEq(読み方:メックorミリイクイバレント)となりますが、切り替え時にmEq数のみで比較・換算してはいけません。
理由は、それぞれの生体内利用率や組織移行性等が異なるからです。
カリウム製剤を切り替え時は処方医が血清カリウムを測定し調節していく必要がありますが、
切り替え時の一つの目安となるのが、常用量対比(読み方:じょうようりょうたいひ)です。
常用量対比とは、1日用量の上限を治療量として同等とする考え方です。
例えば、ケーサプライ錠からアスパラカリウム錠に変更したい場合を考えてみます。
常用量のmEqの上限は、アスパラカリウム錠16.2mEq、ケーサプライ錠32mEqとなることから、アスパラカリウムはケーサプライのmEqの約半分が治療量としては同等と考えます。
ケーサプライ錠600mgを2錠分2(1日16mEq)からアスパラカリウム錠300mgに切り替えたい場合、
アスパラカリウム錠300mgの1日量は8mEqに近い4錠〜5錠(1日7.2〜9mEq)が常用量対比の考えでは同等となります。
アスパラカリウムはインタビューフォームから細胞内移行が塩化カリウムより高いという記載があり、常用量対比では塩化カリウム徐放剤の約半分のmEq量となるのが納得できます。
カリウムの細胞内移行の指標としてウサギの赤血球を用いた実験で,赤血球内へのカリウム移行量は,L-アスパラギン酸カリウムの方が塩化カリウムよりも多かった。(in vitro,in vivo)
カリウムの細胞内取り込みの指標として赤血球(ウサギ,ヒト)内への移行をみると,L-アスパラギン酸カリウムは塩化カリウムより良好である。
イヌにL-アスパラギン酸カリウムをKとして1mEq/kg/hrを2時間静脈内持続投与において3 時間後の体内保有率は約70%であり,塩化カリウム(約30%)より良好であった。
引用元 アスパラカリウム インタビューフォーム
しかし常用量対比は、目安のひとつにしか過ぎませんので、カリウム製剤を切り替え後は処方医が血清カリウムを測定し調節していかなければいけません。
適応症もそれぞれ異なりますので、カリウム製剤の切り替え時には確認しなければいけません。
一般名 | 商品名 | 効能・効果 |
塩化カリウム(粉末) | 塩化カリウム「フソー」 塩化カリウム「ヤマゼン」 塩化カリウム「日医工」 |
◾️下記疾患又は状態におけるカリウム補給 ・降圧利尿剤,副腎皮質ホルモン,強心配糖体,インスリン,ある種の抗生物質などの連用時 ・低カリウム血症型周期性四肢麻痺 ・重症嘔吐,下痢,カリウム摂取不足及び手術後 ◾️低クロール性アルカローシス |
塩化カリウム徐放剤 | ケーサプライ錠600mg | 低カリウム血症の改善 |
グルコン酸カリウム | グルコンサンK細粒 | 低K状態時のK補給 |
グルコンサンK錠585mg | ||
グルコンサンK錠1170mg | ||
L-アスパラギン酸カリウム | アスパラカリウム散50% | ◾️下記疾患又は状態におけるカリウム補給 ・降圧利尿剤、副腎皮質ホルモン、強心配糖体、インスリン、ある種の抗生物質などの連用時 ・低カリウム血症型周期性四肢麻痺 ・心疾患時の低カリウム状態 ・重症嘔吐、下痢、カリウム摂取不足及び手術後 |
アスパラカリウム錠300mg |
参考資料
・各製剤 添付文書・インタビューフォーム
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