鉄欠乏性貧血と治療薬・服薬指導のポイント

貧血のうち90%以上を占めるのが鉄欠乏性貧血です。

そのため薬局では鉄欠乏性貧血の患者さんの処方を受けるケースも多いのではないでしょうか。

鉄欠乏性貧血の治療薬と服薬指導のポイント、患者さんから質問を受けやすい内容についてまとめていきたいと思います。

鉄欠乏性貧血の症状

自覚症状を伴わない場合もありますが、主な自覚症状は下記のとおりです。

  • つかれやすい
  • 顔面蒼白
  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 動悸・息切れ
  • 耳鳴り

鉄欠乏性貧血の原因

鉄欠乏性貧血の原因は大きく4つに分かれます。

1. 鉄の摂取が不足

  • ダイエット
  • 偏食

2. 鉄の需要が増大

  • 妊娠・授乳時
  • 思春期の女性

3. 出血による鉄損失

  • 生理
  • 消化管からの出血

4. 鉄吸収障害

  • 胃切除

【鉄欠乏性貧血】血液検査の指標と基準値

鉄欠乏性貧血の指標 基準値
ヘモグロビン(Hb) 【正常値】
男性14〜18g/dl
女性12〜16g/dl
12g/dl未満が鉄欠乏性貧血の診断目安
MCV
赤血球1個あたりの平均的な大きさ
【正常値】
約83〜108fL 
医療機関によって異なる
MCH
赤血球1個あたりの平均的なヘモグロビン量
【正常値】
約28〜35pg
医療機関によって異なる
MCHC
赤血球1個あたりの平均的なヘモグロビン濃度
【正常値】
約30〜36%
医療機関によって異なる
総鉄結合能(TIBC) 360μg/dl以上が鉄欠乏性貧血の診断目安
血清フェリチン
貯蔵鉄量の指標
【正常値】
25ng/ml〜250ng/ml
12ng/ml未満が鉄欠乏性貧血の診断目安

鉄欠乏性貧血以外と他の貧血の鑑別のためには、
下記を満たす必要があります。

ヘモグロビン(Hb)低下 
12g/dl未満

小球性貧血
であること
MCV MCH MCHCが低値

血清フェリチン低下 
12ng/ml未満

総鉄結合能(TIBC) 増加 
360μg/dl以上

鉄欠乏性貧血の治療薬一覧

鉄欠乏性貧血と診断されると、
食事からの鉄の補充だけでは治療が困難であり、薬物治療が行われます。

内服薬は下記の4成分が存在します。

  • クエン酸第一鉄ナトリウム
    商品名:フェロミア錠
    鉄は1錠中 50mg

  • フマル酸第一鉄
    商品名:フェルムカプセル
    鉄は1カプセル中 100mg

  • 溶性ピロリン酸第二鉄
    商品名:インクレミンシロップ
    鉄は1ml中 6mg

  • 乾燥硫酸鉄
    商品名:フェロ・グラデュメット
    鉄は1錠中 105mg

関連記事
フェロミアとフェログラデュメットの違い・使い分け・副作用

服薬指導のポイント

  • 悪心・嘔吐・食欲不振が主な副作用であることを伝える
    →我慢ができない場合は要相談。用法変更や別の鉄剤に変更となる可能性あり
  • 便が黒くなっても、吸収されない鉄が出ているだけなので問題ないと説明
  • 歯が茶褐色に着色した場合は重曹などで歯磨きを行う
    鉄剤で歯の着色が起こる理由はこちらに記載しています。
    フェロミア(クエン酸第一鉄)でなぜ歯の着色が起こるの?対処法は??
  • セフジニル・テトラサイクリン・ニューキノロン抗菌薬とキレート形成のため併用に注意(2〜3時間ずらす)
  • 制酸剤(PPI,H2ブロッカー)や牛乳の同時摂取で吸収が低下することあり
  • コップ1杯の十分な水またはぬるま湯で服用
  • 【フェログラデュメット】便から錠剤の殻がでてくることあるが問題ない

ヘム鉄・非ヘム鉄を多く含む食品

食品に含まれる鉄にはヘム鉄(吸収率 約10〜30%)と非ヘム鉄(吸収率 約1〜8%)があります。

ヘム鉄の方が吸収されやすいことから、生理時や妊娠・授乳時の鉄欠乏性貧血の予防にはヘム鉄の積極的な摂取が推奨されます。

ヘム鉄を多く含む主な食品

  • 牛肉・豚肉・鶏肉
  • レバー
  • マグロ・カツオなど赤身の魚

非ヘム鉄を多く含む主な食品

  • ほうれん草
  • 小松菜
  • 大豆
  • 鶏卵
  • ひじき
  • 切干大根

鉄欠乏性貧血の患者さんから受ける質問


患者さん

鉄剤を服用して、ヘモグロビンの数値が改善したけど、飲み続けないといけないですか?

 


薬剤師

ヘモグロビンが改善したとしても、貯蔵鉄が補充されるまで飲み続けなければいけません。
通常は3〜6ヶ月は投与が継続されます。

 


患者さん

鉄剤服用中に市販のヘム鉄のサプリメントは摂取してもいいですか?

 


薬剤師

医療用の鉄剤には十分な鉄が含まれていますので、通常はサプリメントでの追加摂取は必要ないと考えられます。

 


患者さん

お茶やコーヒーなどは避けるように言われたことがありますが・・。

 


薬剤師

緑茶や紅茶、コーヒーなどに含まれるタンニンは鉄と結合して鉄の吸収を阻害することが報告されています。
しかし鉄欠乏性貧血の場合は消化管での鉄吸収が亢進していることや、鉄剤は鉄の量も多いことから、薬物治療中に緑茶や紅茶、コーヒーを摂取してもヘモグロビンの回復に影響はないというのが最近の考え方です。

 


患者さん

ビタミンCと一緒に鉄をとると吸収がよくなると聞きましたが、ビタミンCの薬は処方されないのですか?

 


薬剤師

鉄とビタミンCを併用すると鉄の吸収が増加するといわれていますが、医療用の鉄剤には十分な鉄が含まれていますので、ビタミンCが処方されていない限りは無理にビタミンCを同時に服用する必要はないと考えます。
ただし、鉄欠乏性貧血を予防するために、普段の食事で非ヘム鉄についてはビタミンCと一緒に摂取することが推奨されています。

 

この記事を書いた人

伊川勇樹

伊川勇樹(いかわゆうき)

シナジーファルマ株式会社 代表取締役
薬剤師

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

「インターネットをつうじて薬学業界の発展と地域医療の活性化に貢献する」
というミッションのもと「薬剤師」と「ITベンチャー経営者」の二刀流で日々奮闘中。

1983年岡山県倉敷中央病院で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都、大阪で14年間過ごし、現在は沖縄県民。
1歳の息子と妻の3人家族。

当面の目標は、
「息子の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて努力をしていたら、なんとかなる!!」

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