2020年度の調剤報酬改定で
薬歴管理料にて吸入指導加算が算定できるようになりました
私の勤務する薬局の門前に呼吸器内科があり、さまざまな種類の吸入剤が処方されます。
これまでも投薬の際には吸入指導を行っていましたが、
操作方法や吸入動作の確認などで内服薬だけの患者さんに比べて手間や時間がかかっていましたので、
そこを評価してもらえるのはありがたいと感じます。
吸入剤については患者さんが正しく使用できるかどうかで治療効果に差がでますので
しっかりとした指導、確認が必要です。
吸入指導加算の目的は
質の高い吸入薬の指導を評価し、コントロール不良による増悪イベント防止につなげる
ということにあります。
吸入指導加算の算定要件や吸入指導のポイントについてまとめてみました。
喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD) のある患者
インフルエンザ患者へのイナビルの吸入指導は加算の対象になりません。
文書を用いた説明、及び、デモ機等を用いた実技指導。
口頭のみの指導では加算不可となります。
薬剤に添付されている文書、各製薬会社が提供している資材やデモ機を用いて 1つ1つの動作を確認しながら指導を行う必要があります。
医師からの指示または、 患者(又はその家族)からの求めがあり医師の了解を得て行う。
薬剤師の判断のみで加算を算定することはできません。
可能であれば、事前に近隣医師と打ち合わせを行い、 吸入指導について処方箋に記載をしてもらうように依頼をしておくとスムーズです。
お薬手帳や文書等により処方医にフィードバック。
フィードバック用の文書は厚生省等から指定されているものはありません。
電子薬歴にフィードバック用の資料を印刷できる機能があればそれを利用してもよいと思います。
また、各都道府県の薬剤師会などで独自に指導評価表を作成されているとことがありますので 参考にして作成するとよいと思います。
参考になるのが群馬県の薬剤師会ホームページに掲載されている「吸入指導評価表」です。
吸入手順がひとつずつ確認できるようになっていてとてもよいと思います。
薬歴には吸入手順に沿っての指導内容をしっかりと記載することが重要となります。
吸入指導加算は3ヶ月に1回まで30点です。
ただし、新たな吸入剤が処方された場合は3ヶ月以内であっても加算は可能です。
算定の詳細については、管理薬剤師.comさんの下記のページも参考になります。
薬学管理料(吸入指導加算)
吸入剤による治療効果については デバイスのセットから吸入動作、吸入のタイミング、副作用予防のためのうがいなど、一連の動作が全て大事なポイントとなります。
群馬県薬剤師会の作成している吸入指導評価表をもとに それぞれの動作のポイントを確認してみたいと思います。
各メーカーが用意しているデモ機などを使用することで、具体的な指導ができます。
カバーの開け方、空打ちの有無、薬剤のセット方法、用時振とうの有無、デバイスの持ち方、姿勢など 薬剤師がやって見せて、その後患者さんにもデバイスを触って操作してもらいます。
実際に患者さんにやってみてもらうと 薬剤セット後にデバイスを傾けてしまい粉がこぼれてしまったり、ダイヤルの回し方が逆だったり、空気孔をふさいで持ってしまったりすることが多々あります。
目の前で操作してもらうことで具体的な指導ができます。
吸入前に「ふーーっ」と息を吐いておくことで十分な力で吸入ができます。
息吐きをしないでデバイスをくわえると深く吸入することが難しいため重要なポイントです。
ゆっくり深く吸い込むことが重要です。
例えば、シムビコートはデモ機の他に、吸入確認ができる赤い笛(タービュテスター)をメーカーが用意してくれています。
適切な力で吸い込みができると笛が鳴り 吸い込みの力が弱いと笛は鳴りません。
実際に吸ってみてもらうと、最初は吸い込みが弱く笛が鳴らない患者さんが多いです。
そのため、投薬の際には必ず吸入の加減を患者さん自身に確認してもらうことがとても重要だと感じます。
笛はそのまま持って帰ってもらい、吸えているかどうか不安な場合は 自宅でも吸入前に練習して確認してもらうようにするとよいと思います。
薬剤を吸入した直後に大きく息を吐いてしまうと吸い込んだ薬剤が呼気とともに出てきてしまうことがあります。
そのため吸入後は3~5秒程度息を止めてもらいます。
吸入の際に極限まで息を吸ってしまうと息止めができないため、息止めの余力を残して吸入してもらうことがポイントです。
息止めの後はゆっくりと息吐きを行います。
息吐き→吸入→息止め→息吐きまでの動作を何度か行ってもらい適切かどうか指導を行います。
カバーの閉め方、吸入口を清潔にすることなど、毎回の動作に加え、 デバイスによっては、ビレーズトリエアロスフィアなど、週に1回程度アクチュエーターを取り外してぬるま湯で洗浄することが必要なものもあります。
洗浄を怠ると噴霧孔が目詰まりしてしまい吸入ができなくなることがあります。
お手入れが必要なデバイスについては薬剤師も熟知した上で指導をしておく必要があります。
ステロイドを含むものは、口腔カンジダ、咽頭痛、声がれ予防のため くちゅくちゅうがい(口腔内の洗浄)と、がらがらうがい(咽頭の洗浄)を行うよう指導します。
メプチンエアなど、β刺激薬剤についても動悸や振戦の予防のためうがいについての記載があります。
高齢者や小さなお子さんでうがいができない場合はお水やお茶を摂取するなどして口の中に薬剤が残らないように注意しなければいけません。
うがいの必要性について説明を行い、指導は終了です。
小児や高齢者など、一連の吸入動作についてうまく行かない場合は吸入補助具を使用すると有効な場合があります。
メプチンエアなどのエアタイプのデバイスは噴霧と吸入の同調が必要ですが、スペーサーを用いることで同調が不要となります。
また、ビレーズトリエアロスフィアはデバイスが少し長めのため、手が小さい女性やボタンを押す力の弱い高齢者の方には吸入補助器具(プッシュサポーター)などもあります。
各種メーカーに問い合わせをして取り揃えておくと有効活用できると思います。
気管支喘息、COPD用の吸入薬はこちらにまとめています。
吸入薬一覧(LABA・SABA・抗コリン薬・ステロイド)「気管支喘息・COPD治療」
【参考】
厚生労働省 調剤報酬(その4)
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。
お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。
コメント欄ご利用についてのお願い
※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます