DOAC(direct oral anticoagulant)の中で、Xa阻害薬が臨床でも多く使用されるようになってきました。
現在の日本の臨床ではXa阻害薬として、主にエドキサバン(商品名:リクシアナ)、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)、アピキサバン(商品名:エリキュース)の3種類が使用されています。
Xa阻害薬は主にワーファリンに代わる非弁膜症性心房細動 (non-valvular atrial fibrillation;NVAF)における心原性脳梗塞の予防のための抗凝固薬として使用されてきましたが、2014年9月以降に上記3剤が次々と静脈血栓塞栓症である深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis; DVT)及び肺血栓塞栓症(Pulmonary embolism; PE)に対して適応を取得しました。
NVAFの場合とは異なり、PE、DVTに対しての投与は用法用量が複雑化されているため、処方鑑査の際に注意が必要になってきます。
Xa阻害薬であるエドキサバン(商品名:リクシアナ)、リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)、アピキサバン(商品名:エリキュース)がPE、DVTに投与される際の処方監査のチェックポイントについて解説していきます。
DVTは下肢に発症する血栓症として知られています。
上肢に発症するDVTは極めてまれです。
典型例では、片方の下肢に腫脹が見られることが多いです。
両下肢が腫れるのはまれであり、両下肢が腫れた場合には、DVTではなく浮腫を疑います。
しかし、高齢の症例では下肢の腫脹を伴わないで、Dダイマーの上昇や下肢静脈エコーなどの検査で初めて分かるDVTなども目にすることがあります。
DVTの原因としては、エコノミー症候群として震災の際に有名にもなった長期臥床や、その他には悪性腫瘍、先天性・後天性凝固異常などがありますが、原因不明の場合もあります。
また、PEはDVTの合併症ともいえ、下肢の血栓が肺静脈に跳んで生じる1つの連続した病態として捉えられています。
PEは肺虚血を招く可能性が高く、最悪の場合、死亡に繋がるため注意が必要になります。
従い、DVTはPEの発症リスクになり得るため、早急に抗血栓療法が必要となります。
急性期には、ヘパリン(注射)等による治療を行い、慢性期には、経口薬であるワーファリンを含む抗凝固薬による治療を行うことになります。
今まででは、ヘパリン(注射)等での入院治療を必要としていましたが、2015年にリバーロキサバン(商品名:イグザレルト)、アピキサバン(商品名:エリキュース)がDVTにおける初期高用量投与の適応を取得したため、外来通院での治療も可能となりました。
DVT治療におけるXa阻害薬の用法用量は、エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンの3種類それぞれで異なるため、前治療がなされているのか、高用量投与の期間が適切であるか等を確認していく必要があります。
また、NVAFの場合と同様、年齢や体重や腎機能、併用薬等も確認し、副作用である出血傾向に注意を払っていかなければなりません。(図1、2)
他の2種と比較して、初期高用量投与の適応がない薬剤です。
そのため、DVT治療でエドキサバンを導入する際には必ず医療施設でヘパリン(注射)等による初期治療が必要になってきます。(逆に治療中の用量の変更を行う必要がないため、誤処方のリスクが低いともいえます。)
服薬指導を行う際には、投与目的(DVTであるかどうか。NVAFでないかどうか。)と初期治療が行われているかを確認する必要があります。
ただし、外傷入院等で出血リスクが高い状態でDVTを発症した症例においては、医師の判断であえてヘパリン治療を施行せずにエドキサバンを開始する場合もあります。(図1、2)
初期高用量投与の適応をもつXa阻害薬ですが、同じ初期高用量投与の適応をもつアピキサバン(商品名:エリキュース)の7日間に比べて、21日間と長期で高用量投与が行えます。
また、その後の通常量ではアピキサバンとは異なり、1日1回での服用で済むため、アドヒアランスが低い症例では選択肢として向いているかもしれません。(逆に初期高用量の場合に1日2回のところを1日1回で処方される可能性があるため注意が必要です。)
初期高用量投与が21日間と長いため、21日を経過しても漠然と投与が継続されてしまう可能性があります。
そのため、処方鑑査を行う際には、30mg/日・分2の用量が何日間継続されているか、それ以降は15mg/日・分1に減量できているか注意深く確認する必要があるでしょう。
その他にも、他の2種と比較して併用禁忌が設定されている薬剤であるため、併用薬についても注意する必要あります。(図1、2)
リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)同様、初期高用量投与の適応をもちますが、その投与期間が7日間に限定されている点が特徴となります。
また、1日2回投与を行う製剤になるため、他の2剤に比べて薬物動態的には血中濃度が安定し、持続する血液抗凝固作用を期待できます(ただし、まだXa阻害薬の3種の内で1日1回製剤と1日2回製剤のどちらが血管閉塞事象をより抑制できるかについては明らかになっていません)。
初期高用量投与時における処方鑑査についてはリバーロキサバン同様ですが、7日間を誤った日数で処方される可能性もあります。
また、7日を経過しても漠然と投与が継続されてしまう可能性があります。
そのため、処方鑑査を行う際には、20mg/日・分2の用量が何日間継続されているか、それ以降は10mg/日・分2に減量できているか注意深く確認する必要があるでしょう。
単純な問題ですが、アピキサバンは他の2剤と異なり、全ての用法が1日2回のため、誤って1日1回になっていないかの確認も忘れず行う必要があります。(図1、2)
図1 深部静脈血栓症(DVT)及び肺血栓塞栓症(PE)におけるXa阻害薬の用法用量の比較
図2 Xa阻害薬一覧
参考:
・各薬剤製品情報、添付文書
・Guidelines for the Diagnosis, Treatment and Prevention of Pulmonary Thromboembolism and Deep Vein Thrombosis (JCS 2009)
・MSD Manual DVT治療について
・Xa因子阻害薬 最新のエビデンス 長尾 毅彦(臨床神経2011;51:1007-1010)
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