エリスロシン錠とエリスロマイシン錠の違い・ジェネリック切り替えの可否

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

Rp 1 エリスロシン錠200mg   3錠
1日3回 毎食後 7日分 
後発医薬品変更可の処方せん

このように処方された場合、ジェネリック医薬品希望の患者さんへエリスロマイシン錠「サワイ」200mgの切り替えは可能でしょうか?

結論からいえば、エリスロシン錠からエリスロマイシン錠「サワイ」への代替調剤は不可となります。
(切り替える場合は疑義照会が必要)

薬局で間違えやすい事例なので情報共有したいと思います。

一般名の違い・エリスロマイシンステアリン酸塩とは?

マイランEPDから販売されているエリスロシン錠の一般名は「エリスロマイシンステアリン酸塩
です。
エリスロシン錠は先発医薬品にも後発医薬品にも該当しません。

一方でエリスロマイシン錠「サワイ」の一般名は「エリスロマイシン」となっています。

このように一般名に違いがあることからエリスロシン錠からエリスロマイシン錠「サワイ」への代替調剤は不可となります。

ちなみにエリスロマイシン錠「サワイ」は後発医薬品に分類され、先発医薬品にあたるアイロタイシン錠は販売中止となっています。

一般名のエリスロマイシンに該当する医薬品はエリスロマイシン錠「サワイ」のみとなります。

エリスロマイシンは胃酸に不安定

エリスロマイシンは胃酸に不安定です。

そのため胃酸によって分解されずに腸で吸収されるようにプロドラック化したのがエリスロシン錠(一般名:エリスロマイシンステアリン酸塩)、一方で腸溶錠としてフィルムコーティングしたものがエリスロマイシン錠「サワイ」(一般名:エリスロマイシン)です。

このように薬効を示す成分(エリスロマイシン)は同じであっても、製剤の違いから一般名が異なってくるのです。

一般名「エリスロマイシン」処方時の対応

Rp1 【般】エリスロマイシン錠 200mg  3錠
1日3回毎食後 7日分

この処方の場合は何を調剤しなければいけないでしょうか。

【般】エリスロマイシンに該当する先発医薬品は販売中止となっており、後発医薬品に該当するのはエリスロマイシン錠「サワイ」のみとなります。

したがって上記のように処方された場合に、たとえ先発医薬品希望であっても調剤できる医薬品はエリスロマイシン錠「サワイ」のみとなります。

効能・効果にも違いがある

エリスロシン錠に比べて、エリスロマイシン錠「サワイ」の方が適応菌種・適応症ともに範囲が広くなっています。
そのため、疑義照会をかけてエリスロマイシン錠「サワイ」からエリスロシン錠に切り替える際には、効能・効果に違いがあることを頭に入れておくとよいでしょう。

エリスロシン錠の効能・効果

<適応菌種>
エリスロマイシンに感性のブドウ球菌属,レンサ球菌属,肺炎球菌,淋菌,髄膜炎菌,ジフテリア菌,軟性下疳菌,百日咳菌,破傷風菌,梅毒トレポネーマ,トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス),マイコプラズマ属
<適応症>
表在性皮膚感染症,深在性皮膚感染症,リンパ管・リンパ節炎,乳腺炎,骨髄炎,扁桃炎,肺炎,肺膿瘍,膿胸,腎盂腎炎,尿道炎,淋菌感染症,軟性下疳,梅毒,子宮内感染,中耳炎,歯冠周囲炎,猩紅熱,ジフテリア,百日咳,破傷風

エリスロマイシン錠「サワイ」の効能・効果

〈適応菌種〉
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、髄膜炎菌、ジフテリア菌、赤痢菌、軟性下疳菌、百日咳菌、破傷風菌、ガス壊疽菌群、梅毒トレポネーマ、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)、マイコプラズマ属、赤痢アメーバ
〈適応症〉
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、骨髄炎、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎を含む)、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、膿胸、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、尿道炎、淋菌感染症、軟性下疳、梅毒、性病性(鼠径)リンパ肉芽腫、感染性腸炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯冠周囲炎、猩紅熱、ジフテリア、百日咳、破傷風、ガス壊疽、アメーバ赤痢

まとめ

  • エリスロシン錠とエリスロマイシン錠「サワイ」は一般名が違う
  • エリスロシン錠は胃酸で失活しないようにプロドラック化
    (一般名:エリスロマイシンステアリン酸塩
  • エリスロマイシン錠「サワイ」は胃酸で失活しないように腸溶錠としてフィルムコーティング
    (一般名:エリスロマイシン
  • エリスロシン錠→エリスロマイシン錠「サワイ」への代替調剤は不可
  • 【般】エリスロマイシン錠 で処方された場合はエリスロマイシン錠「サワイ」で調剤
  • 【般】エリスロマイシンステアリン酸塩錠 で処方された場合はエリスロシン錠で調剤

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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