医薬品等の廃棄方法(向精神薬・麻薬・毒物・劇物)

この記事を書いた人

まい

薬剤師

こんにちは。

薬剤師ライターのまいです。

今回は「医薬品等の廃棄方法」について取り上げたいと思います。

医薬品卸の支店で働いていると、取引先の薬局や医療機関から医薬品の廃棄についての問い合わせを受けることがあります。

医薬品の種類や規制区分によって廃棄の手続きは様々ですので、まとめてみました。

行政立会いの必要がない医薬品の廃棄

行政立会いで廃棄の必要がない医薬品については、医療廃棄物として、許可を受けた産業廃棄物処理業者へ委託し薬局・医療機関が責任を持って廃棄します。

医療廃棄物は感染性か非感染性かで区別し(例えば患者が薬局に持参した使用済み注射針は感染性廃棄物、使用期限切れや調剤ミスで使用できなくなった医薬品は非感染性廃棄物に分類されます)、適切な処理で廃棄する必要があります。

医薬品の包装容器については、医薬品が付着していないものについては事業系一般ごみ、軟膏のチューブや注射液のアンプル、バイアルなど医薬品が付着している包装容器については医薬品と同様の扱いとなります。

医薬品の廃棄については、「医薬品容器包装等の廃棄に関する手引き(2007年2月改訂版 日本病院薬剤師会学術委員会・日本製薬工業協会環境安全委員会)」の医薬品容器包装等の分別廃棄フローチャート が分かりやすくまとめられています。

地域の薬剤師会で注射針や在宅で使用した器具等の回収事業を一括して行っている場合は、薬剤師会が指定した送付先に送付します。

向精神薬の廃棄

向精神薬の場合、行政への許可や届け出の必要は無く、薬局職員による廃棄が可能ですが、第1、2種の向精神薬のみ廃棄の記録が必要となります。

   第1種・第2種 第3種
廃棄方法 焼却、放流等、回収が困難な方法
記録 廃棄した向精神薬の品名、数量、廃棄年月日を記録し、2年間保存 不要
許可・届出 不要 不要

 

廃棄時に記録が必要な向精神薬
第1種 メチルフェニデート(商品名:リタリン、コンサータ)
モダフィニル(商品名:モディオダール)
第2種 フルニトラゼパム(商品名:サイレース)
アモバルビタール(商品名:イソミタール)
ペンタゾシン(商品名:ソセゴン、ペンタジン)
ペントバルビタール(商品名:ラボナ)
ブプレノルフィン(商品名:ノルスパンテープ)

上記のような第1種、第2種の向精神薬は廃棄の記録が必要です。

向精神薬を廃棄する際は種別をよく確認しましょう。

麻薬の廃棄

麻薬を廃棄する際は、調剤していない状態か、調剤済かで廃棄方法が異なります

調剤前の麻薬は麻薬廃棄届を事前に届け出て、保健所等職員立会いの下、廃棄。

調剤済麻薬は薬局で廃棄したのち、30日以内に調剤済麻薬廃棄届を提出となります。

事前の届け出が必要なのに勝手に廃棄してしまった、ということがないよう両者をしっかり区別して考えましょう。

東京都福祉保健局の資料を元に麻薬の廃棄についての詳細をまとめました。

  調剤していない麻薬 調剤済の麻薬
具体例 ・古くなった麻薬
・変質、汚染又は破損等により使用しなくなった麻薬
・使用の見込みがなく不要になった麻薬
・薬局で予製した麻薬
 ・調剤ミスした麻薬
患者や家族から返却があった場合
(使用しなくなったり、死亡した場合など)
提出書類 麻薬廃棄届 調剤済麻薬廃棄届
提出先 管轄の保健所等 管轄の保健所等
提出方法 原則、持参 持参又は郵送(簡易書留)
提出期限 事前に届け出 廃棄後30日以内
廃棄方法 麻薬廃棄届提出

管轄保健所等の職員立会いの下、原則薬局にて行う
管理薬剤師等が、薬局の他の職員の立会いの下、焼却、放流等、麻薬の回収が困難な方法で行う

 

在宅医療のために交付された麻薬注射薬が患者等から返却された場合、「麻薬廃棄届」や「調剤済麻薬廃棄届」の提出は必要ないとされています。(平成10年12月22日医薬麻第1854号通知)

このように廃棄の届け出自体が必要ない場合もあります。

いろいろなケースが想定されますので、判断ができない場合は管轄の保健所に問い合わせるようにしましょう。

今回は東京都福祉保健局作成の手引きの内容を抜粋しましたが、全国の行政で手引きを作成しており、各都道府県HPで公開されていますので、確認してみてください。

毒物・劇物の廃棄

毒物劇物一般販売業の営業登録をしている薬局もあると思います。

不用になった毒物劇物の廃棄方法は、製品安全データシート(MSDS)厚労省薬務局長通知「毒物及び劇物の廃棄の方法に関する基準について」の記載を確認しましょう。

例えば、「塩酸/合成塩酸/合成純塩酸/白塩酸 (東亞合成株式会社) 」のMSDSには廃棄について、次のように記載されています。

廃棄上の注意

残余廃棄物 : 毒物および劇物の廃棄方法に関する基準に従って、無害化してから廃棄する。 廃棄においては、関連法規並びに地方自治体の基準に従うこと。 処理は、撹拌しながら石炭乳、苛性ソーダなどのアルカリ水溶液で中和したあと、多量の水で希釈して流す。放流水の pH は海域以外では 5.8~8.6、海域にあっては 5.0~9.0 のこと。 都道府県知事などの許可を受けた産業廃棄物処理業者、もしくは地方公共団体がその処理を行っている場合にはそこに委託して処理する。 廃棄物の処理を依託する場合、処理業者等に危険性、有害性を充分告知の上、処理を委託する。 汚染容器及び包装 : 容器は清浄にしてリサイクルするか、関連法規ならびに地方自治体の基準に従って適切な処分を行う。 空容器を廃棄する場合は、内容物を完全に除去すること。

引用元 塩酸/合成塩酸/合成純塩酸/白塩酸 (東亞合成株式会社)MSDS

自己処理ができない場合は、認可を受けた廃棄物処理業者に委託することになります。

一般購入者が廃棄する場合も同様です。

大量廃棄は環境汚染や処理費用の面からも負担が大きいため必要以上の購入は控えるよう指導して下さい。

医薬品卸が薬局・医療機関の代わりに廃棄できる?

以前、医療機関から期限切迫の医薬品の返品を依頼されことがあり、返品が難しいと伝えたところ、「代わりに捨てておいて」とお願いされたことがありました。

結論を言うと、できません。

本来医療機関等が払うべき廃棄処分の費用・労務の肩代わりになり、医薬品卸公競争規の違反事項になってしまうからです。

公競規(医療用医薬品卸売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約)とは、薬局・医療機関との取引を不当に誘引する手段としての行為を防止するため、公取委および消費者庁長官の共同認定を受けた業界独自のルールです。

医薬品卸以外でも様々な業界で公競規を定めています。

自主的ルールですが、法的裏付けがあり、拘束力、罰則(違反した卸に対しての罰則であり、薬局・医療機関に対してではありません)もあります。

医薬品卸のMSは薬局・医療機関のご要望には極力答えたいと考えておりますが、公競規の適正な運用につきましてご理解ご協力いただければ幸いです。

引用文献

  • 向精神薬・覚せい剤原料取扱の手引き・薬局用(平成30年1月改訂版 東京都福祉保健局)
  • 麻薬取扱の手引き・薬局用(平成28年7月改訂版 東京都福祉保健局)
  • 塩酸/合成塩酸/合成純塩酸/白塩酸 (東亞合成株式会社)MSDS

 

この記事を書いた人

まい

薬剤師

宮城県出身。
薬学部薬学科卒業後、医薬品卸に就職。薬局・医療機関からの様々な問い合わせに的確に回答すべく日々奮闘中です。

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