ハイリスク薬で特定薬剤管理指導加算1が算定できない事例

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

みなさんの薬局ではどのような流れで特定薬剤管理指導加算を算定していますか?

本来は服薬指導が終わった後に、薬剤師が加算の有無を判断し、お会計となっていますが、現状は理想通りにいかないケースもあるのではないでしょうか。

「ハイリスク薬がある場合は全て加算を取っている」
「算定方法は事務さんに任せっきり・・」

そんな薬剤師が注意をしなければいけないのは、ハイリスク薬に該当しても特定薬剤管理指導加算の対象とならないケースがあることです。

新規個別指導が終わって一安心しても、間違って特定薬剤管理指導加算を算定し続けていると指導や返還の対象となってしまいます。

返金も発生しますし、何より患者さんへ迷惑となりますので、間違った算定は絶対に避けたいですよね。

特定薬剤管理指導加算の算定ができないケースについてまとめてみました。

ハイリスク薬対象薬剤一覧

下記の薬剤が特定薬剤管理指導加算1の算定対象となります。

  • 抗悪性腫瘍剤
  • 免疫抑制剤
  • 不整脈用剤
  • 抗てんかん剤
  • 血液凝固阻止剤
  • ジギタリス製剤
  • テオフィリン製剤
  • 精神神経用剤(SSRI、SNRI、抗パーキンソン薬を含む)
  • 糖尿病用剤
  • 膵臓ホルモン剤
  • 抗HIV剤

特定薬剤管理指導加算が算定できないケース

ハイリスク薬として指定されても特定薬剤管理指導加算の対象となる適応以外の処方では算定ができません。

Q
複数の適応を有する医薬品であって、特定薬剤管理指導加算の対象範囲とされている適応以外の目的で使用されている場合であっても、同加算は算定可能であると理解してよいのか。
A
特定薬剤管理指導加算の対象範囲以外の目的で使用されている場合には、同加算の算定は認められない。

引用元 平成22年度調剤報酬改定に関するQ&A

具体的な例を挙げていきます。

デパス(エチゾラム)の眠前投与

ハイリスク薬に該当するにも関わらず特定薬剤管理指導加算が算定できない代表的な薬がデパスエチゾラム)です。

デパス(エチゾラム)は「精神神経用剤」として使われる場合は特定薬剤管理指導加算の算定対象になりますが、睡眠障害筋緊張に処方されている場合は、算定ができません。

デパスが分1寝る前で処方されていたり、整形外科での処方の場合は、「算定できない」と考えてよいでしょう。

ベンザリン(ニトラゼパム)が睡眠薬として処方

ベンザリン(ニトラゼパム)はてんかんに処方されている場合は、特定薬剤管理指導加算の対象となります。
しかし、不眠症に対して処方されている場合は対象外となります。

トリプタノール(アミトリプチリン)が夜尿症・末梢性神経障害性疼痛に処方されている場合

トリプタノール(アミトリプチリン)が夜尿症末梢性神経障害性疼痛に処方されている場合は特定薬剤管理指導加算の対象外です。
抗うつ薬として使用されている場合に算定の対象となります。

ダイアップ坐剤がてんかんでなく熱性けいれんに処方されている場合

ダイアップ坐剤がてんかんに処方されている場合は、特定薬剤管理指導加算の対象となります。
しかし、熱性痙攣に対して処方されている場合は対象外となります。

β遮断薬の降圧目的(テノーミン・メインテート・アーチスト)

βブロッカーαβブロッカーは「不整脈薬」として使用される場合は特定薬剤管理指導加算の対象となりますが「降圧目的」や「抗狭心症目的」では算定対象になりません。

薬局では病名が分からないため、見極めが難しいですよね。

患者さんとの会話の中で不整脈での服用かどうか分からない場合は特定薬剤管理指導加算の算定は「なし」にするのがよいでしょう。

また不整脈で服用していることが分かった場合は、不整脈での処方であることを薬歴に記載するようにしておくことをオススメします。

以下に代表的な薬剤をピックアップします。

β遮断薬(非選択制)

  • ミケラン(カルテオロール)
  • インデラル(プロプラノロール塩酸塩)
  • カルビスケン(ピンドロール)

β1遮断薬

  • テノーミン(アテノロール)
  • メインテート(ビソプロロールフマル酸塩)
  • セロケン・ロプレソール(メトプロロール酒石酸塩)

αβ遮断薬

  • アーチスト(カルベジロール)
  • アルマール(アロチノロール塩酸塩)

ステロイド(プレドニン・プレドニゾロン・リンデロン)の抗炎症目的

プレドニゾロンやリンデロン(ベタメタゾン)などのステロイドが免疫抑制目的でなく、抗炎症作用が目的で処方されている場合は特定薬剤管理指導加算の対象外となります。

セレスタミン(ベタメタゾン含有)も自動でハイリスクにチェックが入る場合は注意しなければいけません。

サインバルタ(デュロキセチン)の糖尿病性神経障害・慢性疼痛

サインバルタ(デュロキセチン)がうつ病でなく、糖尿病性神経障害線維筋痛症などの疼痛改善目的で処方される場合は特定薬剤管理指導加算の対象外となります。

アタラックス(ヒドロキシジン)の蕁麻疹・皮膚疾患の掻痒

アタラックス(ヒドロキシジン)が抗うつ薬としてではなく、蕁麻疹皮膚疾患に伴う掻痒症に処方されている場合は特定薬剤管理指導加算の対象外となります。

ジャディアンス(エンパグリフロジン)の慢性腎不全での処方

ジャディアンス錠(一般名:エンパグリフロジン)が2型糖尿病でなく、慢性心不全で処方されていた場合は、特定薬剤管理指導加算の算定対象外となります。
循環器内科などで新規処方の場合は、十分に気をつけなければいけません。

フォシーガ(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)の慢性腎不全・慢性腎臓病での処方

フォシーガ(一般名:ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)が2型糖尿病でなく、慢性心不全慢性腎臓病(CKD)で処方されていた場合は、特定薬剤管理指導加算の算定対象外となります。

薬剤師主導の特定薬剤管理指導加算の算定を

ハイリスク薬の対象であっても特定薬剤管理指導加算1が算定できない事例を紹介しました。

診療科や用法・用量、患者さんからの情報から「ハイリスク薬が何のために処方されているのか」を薬剤師が分析し、特定薬剤管理指導加算を算定できるか判断する必要があります。

レセコンに任せっきり、事務さんに任せっきりでなく薬剤師が主導で特定薬剤管理指導加算を算定していきたいですね。

紹介した事例はほんの一例だと思いますので「他にもあるよ」という場合は問い合わせ窓口よりご連絡いただけると嬉しいです。

ハイリスク薬に関わる疑問が少しでも解消されると幸いです。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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