ハイリスク薬について服薬指導を行った時に算定できる特定薬剤管理指導加算の点数が、平成28年度の調剤報酬改定により4点から10点にアップしました。
厚生局による個別指導では点数が上がった項目は特に厳しく指導されることが予想されます。抗血栓薬については、今までのようにDO処方の患者さんに対して「出血傾向問題なし」だけの薬歴記載では算定ができない可能性もあるでしょう。
抗血栓薬について、薬剤別に特徴を把握しておくことで画一的な服薬指導からの脱却に繋がると考えています。
ハイリスク薬である抗血栓薬について具体的にチェックする項目を薬品別にまとめてみました。
またハイリスク薬の対象となる薬剤のリストはこちらのホームページの一番下に載っています。
日本薬剤師会の資料にDOAC(NOAC)や抗血小板薬などの血液凝固阻止剤について共通して注意する項目が記載されていますので抜粋します。
血液凝固阻止剤のチェックするべき項目
1.患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2. 服用患者のアドヒアランスの確認、服薬管理の徹底(検査・手術前・抜歯時の服薬休止、検査・手術後・抜歯後の服薬再開の確認)
3. 副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(服用中は出血傾向となるので、過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)の確認とその対策)
4.効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5.一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事(納豆等)との相互作用の確認
6.日常生活(閉経前の女性に対する生理中の生活指導等)での注意点の指導引用元 日本薬剤師会
また抗血栓薬を併用する場合は副作用が強くなるので、併用する場合は特に注意しましょう。歯医者や外科手術など出血を伴う処置があるときには必ず事前に主治医に伝えるよう指導しましょう。
薬剤別にそれぞれ注意点は異なってきますので、最低限注意が必要なポイントのみまとめてみました。
・出血傾向の有無
・ビタミンKの併用の有無
・ビタミンKを多く含む食品(納豆・クロレラ・青汁・ホウレンソウ)の摂取に注意
・PT-INR値の確認
・出血傾向の有無
・長期服用で胃腸障害の有無を確認
・アスピリン喘息既往歴のある患者には禁忌
・出血傾向の有無(鼻・歯茎・皮下)
・肝機能の確認(ビリルビン,AST(GOT),ALT(GPT),Al-P,γ-GTP)・体のダルさの有無
・出血傾向の有無(鼻・歯茎・皮下)
・動悸(脈拍数増加)の有無の確認
併用薬の確認
・CYP3A4を阻害する薬剤・・プレタール血中濃度上昇
マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシン・エリスロマイシン)、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル等)、アゾール系抗真菌剤、シメチジン、ジルチアゼム、グレープフルーツジュース
・CYP2C19を阻害する薬剤・・プレタール血中濃度上昇
オメプラゾール
・出血傾向の有無(鼻・歯茎・皮下)
・肝機能の確認(食欲不振、倦怠感、そう痒感、眼球黄染、皮膚の 黄染、褐色尿など)
投与開始2週間は特に注意
・出血傾向の有無(鼻・歯茎・皮下)
併用薬の確認
・SSRI・・出血傾向
フルボキサミンマレイン酸塩、塩酸セルトラリン等
・CYP2C19を阻害する薬・・・プラビックス活性代謝物の血中濃度が下がる
オメプラゾール
・シュアポスト(成分名:レパグリニド)併用でシュアポストの血中濃度が上がる
・出血傾向の有無(鼻・歯茎・皮下)
併用薬の確認
・P糖蛋白阻害作用を有する薬剤・・抗凝固作用増強
アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、シクロスポリン、イトラコナゾール、ジルチアゼム、ベラパミル、アミオダロン塩酸塩、HIVプロテアーゼ阻害剤
・P糖蛋白誘導作用を有する薬剤・・抗凝固作用低下
リファンピシン、 カルバマゼピン、 セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)
・出血傾向の有無(鼻・歯茎・皮下)
併用薬の確認
・CYP3A4を阻害する薬・・エリキュースの代謝低下
クラリスロマイシン、エリスロマイシン
・CYP3A4を誘導する薬・・エリキュースの代謝上昇
リファンピシン、フェニトイン、カルマバゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)
・出血傾向の有無(鼻・歯茎・皮下)
併用薬の確認
・CYP3A4を阻害する薬・・イグザレルトの代謝低下
クラリスロマイシン、エリスロマイシン
・CYP3A4を誘導する薬・・イグザレルトの代謝上昇
リファンピシン、フェニトイン、カルマバゼピン、フェノバルビタール、セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)
・出血傾向の有無 (鼻・歯茎・皮下)
併用薬の確認
・P糖蛋白阻害作用を有する薬・・・リクシアナのバイオアベイラビリティー(BA)が上昇
アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、シクロスポリン、イトラコナゾール、ジルチアゼム、ベラパミル、アミオダロン塩酸塩、HIVプロテアーゼ阻害剤
「出血傾向」以外にも注意するべきポイントをピックアップしました。
抗血栓薬はDOACを筆頭に薬物相互作用が多いので併用薬には特に注意をしましょう。
またハイリスク薬が複数処方されている場合はそれぞれ個別に指導し、内容を薬歴に記載しなければ特定薬剤管理指導加算の返還対象となります。
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