ハイリスク薬加算(特定薬剤管理指導加算)の服薬指導のチェックポイント【糖尿病薬編】

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

平成28年度(2016年)の調剤報酬改定で、特定薬剤管理指導加算が従来の4点から10点にアップしました。

特定薬剤管理指導加算は、薬剤服用歴管理指導料の算定要件に加え、患者又はその家族等に当該薬剤が特に安全管理が必要な医薬品である旨を伝え、当該薬剤についてこれまでの指導内容等も踏まえ適切な指導を行った場合に算定できることになっています。

点数がアップすることで、個別指導ではより厳しく指導内容をチェックされることが予想されます。

ハイリスク薬に該当する医薬品の中でもよく使用される糖尿病治療薬について要点をまとめてみました。

またハイリスク薬の対象となる薬剤のリストはこちらのホームページの一番下に載っています。

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糖尿病治療薬の服薬指導の要点

特定薬剤管理指導加算(ハイリスク薬)の対象となる糖尿病治療薬ですが、具体的にどのような事を確認し、どのような指導をしたらいいのか分からない薬剤師さんのために、日本薬剤師会さんがまとめた要点を抜粋します。

糖尿病治療薬の注意するべき事項

・患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
・服用患者のアドヒアランスの確認(Sick Day 時の対処法についての指導)
・副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育(低血糖及び低血糖状態出現時の自覚症状とその対処法の指導
・効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値(HbA1c や血糖値)のモニター)
・一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認
・注射手技の確認(薬剤の保管方法、空打ちの意義、投与部位等)、注射針の取り扱い方法についての指導

引用元 日本薬剤師会

 

低血糖症状は具体的な症状(動悸、振戦、ふらつき、冷や汗など)の確認や説明を行わなければいけません。

薬歴に「低血糖症状問題なし」の記載だけでは、個別指導の際に返還の対象となってしまいますので、低血糖の具体的な症状について確認や指導を行った内容を薬歴に残しておきましょう。

SICKDAY(シックデイ)とは糖尿病治療中に風邪など糖尿病以外の病気にかかる時をいいます。この場合はインスリン需要が増大して高血糖になったり、食事が摂れないことで低血糖になる可能性がありますので、事前に指導しておく必要があります。

また上記の要点以外にプラスして指導が必要な糖尿病治療薬についてピックアップしてみました。

αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)

代表的な薬剤

  • ボグリボース(商品名:ベイスン)
  • アカルボース(商品名:グルコバイ)
  • ミグリトール(商品名:セイブル)

指導の要点

  • 低血糖症状時はショ糖でなくブドウ糖を摂取
  • 腹部膨満感の副作用を極力軽減するために「食事はゆっくり噛んで摂取すること」、特に症状の出やすい服用初期はイモ類、豆類、乳製品の摂取過剰は避けるよう指導

 

SGLT2阻害薬


代表的な薬剤

  • イプラグリフロジンL-プロリン(商品名:スーグラ)
  • ダパグリフロジンプウロピレングリコール水和物(商品名:フォシーガ)
  • ルセオグリフロジン水和物(商品名:ルセフィ)
  • トホグリフロジン水和物(商品名:デベルザ・アプルウェイ)
  • カナグリフロジン水和物(カナグル)
  • エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)

指導の要点

  • 脱水症状の防止のため水分をこまめに摂取
  • 尿路感染症のリスクあり(特に女性)
  • ケトアシドーシスの症状(悪心・嘔吐、食欲減退、腹痛、過度な口渇、倦怠感、呼吸困難、意識障害等)について伝え症状があれば要相談

 

ビグアナイド(BG)類


代表的な薬剤

  • メトホルミン塩酸塩(メトグルコ)
  • ブホルミン(ジベトス)

指導の要点

  • 乳酸アシドーシスの有無のチェック(初期症状:悪心・嘔吐・腹痛・下痢・筋肉痛・脱力感・胸痛・腰痛)

 

チアゾリジン誘導体


代表的な薬剤

  • ピオグリタゾン塩酸塩(アクトス)

指導の要点

  • 浮腫の有無、体重増加の有無のチェック

 

ハイリスク薬は全てについて薬歴に記載を!

糖尿病治療薬が併用されるケースでは特に低血糖のリスクが高くなります。

特定薬剤管理指導加算を算定する場合は、それぞれのハイリスク薬についての指導と薬歴記載がなければ算定はできませんので、必ずハイリスク薬の対象となる全ての薬剤について指導をおこない、薬歴に残しておきましょう。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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