全身性強皮症(Systemic sclerosis:SSc)は皮膚や臓器の線維化と、血管内皮細胞の増生による血流循環障害が特徴の指定難病です。
SScでは血管の内腔が狭くなり、血液の流れが悪くなることで、手の指先などの皮膚に潰瘍ができるケースがあります。
手指の潰瘍は気温が低下する冬場に発症しやすい傾向にあります。
SScによる手指潰瘍に処方されるのがエンドセリン受容体拮抗薬であるトラクリア錠(一般名:ボセンタン水和物)です。
トラクリアはもともとは肺動脈性肺高血圧症(PAH)の治療薬として開発されました。
PAHで全身性強皮症による手指潰瘍を併発されている患者にトラクリアを投与したところ、手指潰瘍の改善が見られたことから、臨床試験が実施され「全身性強皮症における手指潰瘍の発症抑制(ただし手指潰瘍を現在有している、または手指潰瘍の既往歴のある場合に限る)」が効能・効果として追加されています。
SScによる手指潰瘍の治療薬、トラクリアの作用機序、薬局での注意点についてまとめました。
SScによる手指潰瘍の薬物療法では、アスピリン、シロスタゾールなどの抗血小板薬、ベラプロストナトリウム、リマプロストアルファデクスといったプロスタグランジン(PG)製剤、アムロジピンなどのカルシウム拮抗薬が保存的治療として投与されるケースがあります。
改善が見られない場合にトラクリア(一般名:ボセンタン水和物)といったエンドセリン受容体拮抗薬の追加・変更が検討されます。
神経ホルモンであるエンドセリン(ET-1)はエンドセリン受容体(ETA,ETB)に結合すると血管を収縮させる働きがあります。
トラクリア(ボセンタン)はエンドセリン受容体(ETA,ETB)の両受容体と非選択的に拮抗することで血管を拡張させます。
また強皮症ではI型コラーゲンが過剰に産生され線維化が生じていますが、トラクリア(ボセンタン)はI型コラーゲン蛋白の過剰な産生を抑え、抗線維化作用を示します。
併用禁忌薬に注意
シクロスポリンのCYP3A4活性阻害、輸送タンパク質阻害によりボセンタンの血中濃度上昇の可能性あり。
タクロリムスはCYP3A4で代謝されることから、ボセンタンの血中濃度上昇の可能性あり。
ラットでの実験でタクロリムスと併用時にボセンタンのAUCが13倍、Cmaxが4.7倍に上昇の報告あり。
ボセンタンのCYP3A4誘導作用により、シクロスポリン、タクロリムスの血中濃度を低下させる。
CYP3A3を阻害・誘導する食品は避ける
トラクリアはCYP2C9、CYP3A4で主に代謝される
肝機能検査異常が最も頻度が高い副作用(25% 28例中 申請時)
胎児に影響を与えるため服用中は避妊
生活対策
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