こんにちは。
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」の伊川です。
マクロライド系の抗菌薬の中で、よく使われるのがクラリス、クラリシッドなどの「クラリスロマイシン」ではないでしょうか。
この「クラリスロマイシン」はクセ者で、注意しないといけないのが「CYP3A4阻害」を有することです。
併用禁忌を見逃すケースがありますので注意が必要です。
実は私が以前、クラリスの併用禁忌を見逃してスルーした経験がありますので自戒もこめて、クラリスロマイシンと併用できない薬剤をまとめてみました。
スボレキサントの商品名は不眠症治療薬の「ベルソムラ」です。
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ベルソムラ(スボレキサント)の作用機序・併用禁忌は?
クラリスロマイシンと併用することによって、CYP3A4阻害作用によりベルソムラ(スボレキサント)の代謝が阻害されベルソムラ(スボレキサント)の作用が著しく増強するとされています。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬からベルソムラに切り替わるケースもあるかと思いますので、その際はクラリスロマイシンの併用がないか要チェックです。
インタビューフォームではスボレキサント(ベルソムラ)とクラリスロマイシンの併用データはありませんが、CYP3A阻害作用を有するケトコナゾールのデータはありましたので参考にアップします。
健康成人(10例)を対象に、本剤(4 mg 単回)と CYP3A を強く阻害するケトコナゾール(400 mg 1日1回経口反復)11日間反復投与の2日目に併用した際、スボレキサントの Cmax及び AUC0-∞は23 %及び179 %増加した。
引用元 ベルソムラインタビューフォーム
商品名ば片頭痛、起立性低血圧治療薬のジヒデルゴット(ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩)、血管性頭痛、片頭痛、緊張性頭痛治療薬のクリアミン(エルゴタミン配合)が挙げられます。
これらをクラリスロマイシンと併用することでCYP3A4が阻害され、代謝が阻害されることで、エルゴタミン製剤による血管攣縮等の重篤な副作用を起こすおそれがあるとされています。
エルゴタミン製剤は単発で処方されたり、家に残った薬を時々服用するケースがありますので、見落とさないように注意が必要です。
・ジヒデルゴットは2017年3月に経過措置満了
肺動脈性高血圧症治療薬のアドシルカ(タダラフィル)のみがクラリスロマイシンと併用禁忌となっています。
なお、排尿障害治療薬のザルティア(タダラフィル)、勃起不全治療薬のシアリス(タダラフィル)については併用注意となっています。
商品名は統合失調症、小児自閉症治療薬のオーラップです。
クラリスロマイシンを併用することで、オーラップ(ピモジド)の代謝が阻害され、QT延長、心室性不整脈( Torsades de pointesを含む)等の 心血管系の副作用が報告されているため併用禁忌となっています。
商品名はC型肝炎治療薬のスンベプラです。
クラリスロマイシンと併用することで、肝臓に関連した副作用が発現、重症化するおそれがあるため併用禁忌となっています。
商品名はC型肝炎治療薬のバニヘップです。
クラリスロマイシンと併用することで、バニプレビルの血中濃度が上昇し、悪心、 嘔吐、下痢の発現が増加するおそれがあるため併用禁忌となっています。
最近では電子薬歴が普及したため、併用禁忌のスルーは少なくなっているかと思いますが、特にベルソムラ(スボレキサント)やエルゴタミン製剤との併用は見落としやすい傾向にあるので注意しましょう。
またクラリスロマイシンは、ワーファリン(一般名:ワルファリンカリウム)やリピトール(一般名:アトルバスタチン)、アダラート(一般名:ニフェジピン)など処方頻度の高い薬剤と併用注意となっていますので、「クセ者」の薬剤としてマークしておくとよいでしょう。
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