私は2018年に15年ぶりに眼科の門前薬局に配属となり気づいたことがありました。
それは、
「以前に比べてドライアイの患者さんが増えているなぁ」
ということです。
その背景には、
コンタクトレンズ、パソコン、スマホ、エアコンなどの普及があります。
日本眼科医学会のホームページを見ると、
40代以上の17.5%、オフィスワーカー対象の調査では60%がドライアイ症状あり、またはその疑いがあるということです。
また、先日小さな子どもさんを連れたお母さんが
「まばたきが急に多くなってしまって」と眼科を受診されたのですが、
診断はドライアイとのことでした!
大人だけの問題ではないようです。
そこで、現代病ともいえるドライアイ用の点眼薬について、
作用の違いと指導のポイントについてまとめてみたいと思います。
ドライアイは、涙の量が足りなくなったり、涙の成分が変化したりする病気であり、目の表面に傷を伴うことがあります。
ドライアイが進行すると、視力低下や痛み、角膜上皮剥離(角膜が乾燥してはがれる病気)を発症してしまうこともあります。
引用:参天製薬 ドライアイ
目の乾きという自覚症状以外にも、以下のような症状を訴える患者さんもいらっしゃいます。
目が乾くことで、まばたきの度に角膜や結膜がこすれて違和感を伴うことも。
目にゴミが入ったんじゃないか、と思ったら実はドライアイだった、ということもあります。
ドライアイ治療で処方される、主な3つの点眼薬
ヒアレイン、ジクアス、ムコスタの各点眼液について、
添付文書を参考に簡単にまとめてみました。
先発品 | ヒアレイン | ジクアス | ムコスタ |
有効成分 | 精製ヒアルロン酸ナトリウム | ジクアホソルナトリウム | レバミピド |
薬効薬理 | ・保水作用 ・角膜創傷治癒促進作用 |
・ムチンを含む涙液分泌促進作用 ・角膜上皮細胞のムチン産生促進作用 ・角膜上皮障害改善 |
・結膜ムチン産生促進作用 ・角膜ムチン産生促進作用 ・角結膜上皮障害改善作用 |
使用方法 | 1日5~6回 | 1日6回 | 1日4回 |
防腐剤 | クロルヘキシジングルコン酸塩液 2018年10月出荷以降 |
クロルヘキシジングルコン酸塩液 | フリー 無菌ディスポーザブルタイプ |
その他注意 | ミニはシェーグレン症候群又はスティーブンス・ジョンソン症候群に伴う角結膜上皮障害の患者に使用した場合に限り保険算定 | 苦味、霧視の可能性あり。 ソフトレンズにも使用可能だが、成分が吸着する可能性があるので違和感を感じる場合ははずして点眼 遮光保存 |
ヒアレインの主成分であるヒアルロン酸は、保水力が高いため、化粧品の美容液成分としても多く使われることのある成分です。
そのため、「ヒアレイン点眼液を美容液代わりに使うと良い!」
という“怪情報”がでたことがあります。
しかし、点眼液はあくまで点眼用のものですので、皮膚へ浸透するかは疑問です。
余ったヒアレイン点眼液を肌に塗る、というのはあまりオススメしません。
ジクアスとムコスタはどちらも「ムチン」を増やす効果を有していますが、
「ムチン」とはどういうものなのでしょうか?
ムチンとは、粘膜細胞から分泌される粘り気を持つ物質であり、粘液を構成する主要な成分の一つです。ムチンは人の身体の中いたるところに分布しますが、例えば胃粘膜においては胃酸からの防御の役割をし、目の表面ではムチン層を形成して目の表面を保護するとともに、涙液の安定性を保つ働きがあります。
また、組織が傷ついた場合、ムチンはその傷を保護し、さらにその修復を促進します。
引用:大塚製薬 ドライアイQ&A
ジクアスにはムチンを含む涙液の量を増やす作用があります。
ムコスタには、胃薬における胃粘膜保護効果と同様に、ドライアイで傷ついた角膜、結膜の修復作用があります。
複数の目薬が同時に処方されている場合は、点眼の間隔をそれぞれ5分程度あけるよう指導しましょう。
間隔をあけないで使用すると目からあふれてしまい、目薬の効果が落ちてしまいます。
点眼の順番は、細かいことを言えば懸濁液は後に、というのが基本ですが、 間隔をあければあまりこだわらなくてもよいとされている眼科医が多いようです。
点眼薬の指導の際に、コンタクトレンズについて質問されることがあります。
ドライアイの原因の一つとしてコンタクトレンズがあるため、ドライアイの患者さんがコンタクトレンズを使用している可能性は低くはありません。
角膜等、目の状態によってはしばらくコンタクトを休止したほうがよい場合もあるので、
コンタクトレンズを使用している患者さんにはまず、
「レンズの使用について医師から説明はありましたか?」
と確認しましょう。
ドライアイ用の点眼薬に限らず、
コンタクトレンズの上から点眼可能かどうかの判断のポイントとなるのが
防腐剤として“ベンザルコニウム塩化物”を使用しているかどうかという点です。
“ベンザルコニウム塩化物”はソフトレンズに吸着して蓄積し、
レンズの変色や角膜障害の可能性があるため、
ソフトレンズの上からは使用しないというのが基本です。
ちなみに1Dayコンタクトは毎日新しいレンズに取り替えるという前提であれば
使用は可能と医師が指導している場合もあります。
今回とりあげた3種類の点眼薬(ヒアレイン点眼液は2018年10月出荷以降のもの)については、“ベンザルコニウム塩化物”不使用のため基本的にはハード、ソフトともレンズの上からも点眼が可能です。
ムコスタについてはソフトレンズに吸着の可能性がありますが、
製造元の大塚製薬に確認したところ使用自体は可能であり、有効性、安全性ともに確認がとれているとの回答でした。
しかし、もし違和感がある場合は、はずして点眼するよう指導しましょう。
ちなみに防腐剤については、
ヒアレインが2018年10月、ジクアスが2015年12月に変更となりソフトレンズの上からも点眼可能となりました。
その他の点眼液についても、今後、防腐剤変更の可能性もあるため、
最新情報の確認を行っておきましょう。
冒頭に記載したとおり、パソコンやスマホの長時間使用は目に対する負担が大きいため、
パソコンは画面が目の高さより下になるように設定し、
こまめに休憩をとり目を閉じて休ませること、
ブルーライトをできるだけ避けることを心がけるとよいでしょう。
エアコンなどによる空気の乾燥を避けるため、エアコンの風が直接当たらないようにする、部屋の加湿を心がけるといったことも大切です。
コンタクトレンズは使用方法、使用時間等、使用方法を守ることが大切であること、
定期的に眼科を受診し、目に異常がないか確認するようお伝えしましょう。
ドライアイ患者には点眼指導だけでなく、生活指導も合わせて行うことでより充実した服薬指導ができる。
参考:
日本眼科医学会ホームページ
参天製薬 ドライアイ
大塚製薬 ドライアイQ&A
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