チャンピックス(バレニクリン)の服薬指導のポイント

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

「今すぐ禁煙外来」のTVCM効果もあってか、禁煙外来を受診される方が増えてきています。

薬局でも服薬指導をする機会があるかと思いますが、アメリカの禁煙治療ガイドラインでは、薬剤師や看護師などの介入が、医師同様の禁煙効果があると指摘されています

チャンピックスが処方された患者さんへ、服薬指導のポイントについてまとめてみました。

チャンピックス(バレニクリン)の作用機序を説明する

特に初回は、どのようにチャンピックスが効くのか?

服用する本人に作用機序を理解してもらうことで治療への参加意識が高まると考えられています。

チャンピックス(バレニクリン)には大きく下記の2つの作用があります。

・ニコチン受容体拮抗作用
タバコの満足感を得られにくくする
・少量のドパミン放出作用
タバコを吸いたい気持ちを抑える

チャンピックス(バレニクリン)は脳内のα4β2ニコチン受容体に対して高い結合親和性を持ちます。

ニコチンが結合するα4β2ニコチン受容体にチャンピックス(バレニクリン)が結合するため、タバコを吸った時にニコチンが受容体に結合できず満足感が得られにくくなります。

またチャンピックス(バレニクリン)がα4β2ニコチン受容体に結合すると少量のドパミンが放出されるため、禁煙による離脱症状やタバコを吸いたい気持ち(切望感)を軽減することができるのです。

吐き気・ムカツキの副作用を軽減するために食後に服用

チャンピックス(バレニクリン)の主な副作用の中で「嘔気」があります。

国内後期第Ⅱ相用量反応試験、国内再投与試験、外国後期第Ⅱ相用量反応試験、外国第Ⅲ相比較検証試験及び外国禁煙維持療法試験において、本剤0.25、0.5及び1mgを1日2回投与された安全性評価対象例3,627例中2,415例(66.6%)に副作用が認められた。主な副作用は、嘔気1,033例(28.5%)不眠症591例(16.3%)異常な夢472例(13.0%)頭痛419例(11.6%)及び鼓腸302例(8.3%)であった。(承認時までの調査の集計)

引用元 チャンピックスインタビューフォーム

このムカツキや嘔気を防止するためにも、食後にコップ1杯の水で服用するように指導しましょう。

また嘔気は服用していくうちに徐々に少なくなりますが、どうしても我慢できない場合は、ナウゼリンやプリンペランなどが追加処方されたり、チャンピックスの1mgから0.5mgへ減量されたり、ニコチネルTTSに処方が変更されるケースがあります。

我慢せずに、何かあった場合は気軽に相談するように初回に伝えておくとよいでしょう。

めまい・眠気・意識障害の副作用のため車の運転は避ける

以前は、「自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際、十分に注意させること」となっていましたが、意識障害から二次的に自動車事故に至った例もあったことから「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること」と変更になっています。

めまい、傾眠、意識障害等があらわれ、自動車事故に至った例も報告されているので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

引用元 チャンピックスインタビューフォーム

 

飲み忘れ時の対応を伝えておく

チャンピックスを飲み忘れた場合は、2回分を同時に服用するのは絶対に避けるように伝えましょう。

医師から特別な指示がないかぎり通常は朝忘れて午前中に飲み忘れに気が付いた場合や、夕食後に忘れて寝る前に気づいた時であれば、気づいた時に服用して問題ありませんが、次回服用と間隔が短くなる場合は、次回分から正しく服用するように指導しましょう

保険が効くのは1年に1度の12週間だけ

ニコチン依存症管理料が算定できるのは1回の治療で12週間だけとなっています。

受診を忘れて、治療を中断してしまった場合は1年以上間隔をあけなければ保険を使用して禁煙治療を行うことができません。

禁煙治療の12週間は決められ日に受診し、このチャンスを活かすようにお伝えしましょう。

チャンピックスを服用して、吐き気などの副作用で服用を断念した場合、ニコチネルTTSのニコチン製剤に切り替わることがありますが、その場合もチャンピックスを服用開始して12週間が保険適応期間となります。

ほめてモチベーションを高める

チャンピックスは服用して1週間後から禁煙がスタートするのですが、2回目以降の服薬指導時に禁煙を続けられているようであれば、とにかく褒めてあげましょう。

12週間治療を続けられた禁煙成功率がアップすることを伝える

12週間の禁煙治療を完了し、9ヵ月後も禁煙を継続できている割合は49.1%(初回で中止した場合は6.5%)と販売元のファイザーさんが発表しています。

途中で治療を中止した場合は、禁煙成功率が大幅に下がってしまうことから、12週間続けることの大切さをお伝えしましょう

12週間の治療が完了し、4週間継続で禁煙できている割合は65.4%(プラセボ39.5%)、9~52週間連続で禁煙できている割合は34.6%(プラセボ23.3%)というデータをファイザーさんが示しています。

残念ながら12週間の治療が完了し、1年間禁煙を継続できている割合はおよそ3人に1人程度ですが、

「あの薬剤師さんが親身になってくれたんだから、期待を裏切ってはいけない」

と思っていただけるくらいの関係を作ることができれば、禁煙成功率をもう少し高めることができるのではないかと考えています。

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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