眠れないとの訴えに対し、本当に不眠なのか、検討することも重要です。
眠れないとの訴え全てが不眠とは限りません。(10)
夜間頻尿、過活動膀胱、前立腺肥大、尿路感染症
まずは、夕方以降の水分摂取を控えめにする生活指導を行います。
過活動膀胱や前立腺肥大であれば、睡眠薬ではなく、それぞれの適応を持つ治療薬を開始した方が良いかもしれません。
夜間のお手洗いの回数が多い、残尿感がある、日中も頻尿との症状があれば、泌尿器疾患の可能性も検討します。
睡眠時無呼吸症候群
過体重、イビキがある、起きた時に頭痛があるような症状であれば、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
高用量のBZは、睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性もあります。
薬局近隣で、睡眠時無呼吸症候群の検査、治療を行っている医療機関を把握しておき、可能性のある患者さんには受診勧奨を行うことで、安易な睡眠薬処方を避けられるかもしれません。
レストレスレッグス症候群
鉄欠乏性貧血、重度腎障害、糖尿病、リウマチ、妊娠中、抗うつ薬や向精神薬の副作用、カフェイン、アルコール、タバコの作用、その他原因不明によってレストレスレッグス症候群となることがあります。
脚がムズムズする、動いているときは大丈夫という症状があるときは、レストレスレッグス症候群の可能性があります。
生活指導としては、カフェイン、アルコール、タバコを控えることで症状が緩和することもあります。
カウンセリングの内、認知行動療法(以下CBT)は以下の場合、保険適応となります。(11)
上記、1~3の職種が、1回30分以上のCBTを実施した場合、16回まで保険適応となります。
しかし、実際には、医師が1回30分も時間を割くことができる体制を取れる医療機関はそう多くありません。
数か月以上は予約待ちをしなければなりません。
そこで、保険適応外で、心理職がカウンセリングを行うことが多いです。
カウンセリングを行うことの出来る心理職には、以下のようなものがあります。
といった取得難易度の高いものから、
といった難易度の低いものまで玉石混交です。
Wikipediaの「日本の心理学に関する資格一覧」のページには、2018年6月現在、139種類の資格が記載されており、それ以外にも「など」と記載されている場所も多くありました。
つまり、薬剤師がカウンセリングを行うために絶対必要な資格は、ありません。
明日からでも、今日からでも、服薬指導の一環としてカウンセリングを行うことはできます。
CBTとは、ものの考え方(認知)や行動を変化させることで、ストレスを受けやすい体質を変化させていくというものです。(12)-(14)
メリットとして、
一方、デメリットとしては、
といった特徴があり、誰にでも行うことのできるものではありません。
認知のゆがみの矯正には、非常に困難を伴います。
現在の自分の考え方の癖を否定し、あらたな考え方を身につけなければなりません。
例えば、
「上司から叱責を受け、落ち込んでしまった。」
という状況を例にとります。
この状況において、「事実」は、「上司から叱責を受けた」ということのみです。
この事実から、「落ち込んでしまった」との結果を導いたのは患者さん自身であるということを理解させなければなりません。
落ち込んでしまった理由として、
「上司は、自分のことを理解せず、いつでも自分を責める」
と自動的に考えてしまっているのかもしれません。
この、ほぼ無意識におきる思考を、自動思考と言います。
自動思考を同定し、他の考え方ができないか探していくことが、CBTの治療方針です。
この例の場合では、
などを検討することになります。
また、上司から叱責を受けた結果どうなるのか、といったことも検討します。
など、自動思考以外の可能性を検討する作業を行い、自動的に落ち込むことを避けるための訓練を行います。
この訓練を積むことで、ストレスへ対処しやすくなります。
ただし、認知のゆがみの矯正には、時間がかかります。
また、医師または精神保健指定医と看護師が協力して、保険適応にてCBTを実施する条件としては、1回30分以上の時間を費やす必要があります。
しかし、薬剤師が、服薬指導の一環としてCBTを実施する場合には、一人の患者さんに対し、30分を費やす余裕は、あまりないでしょう。
CBTは、認知療法と行動療法を組み合わせたものです。
このうち、認知療法は難しいことを、ご説明いたしました。
しかし、行動療法であれば、1回3~5分程度の服薬指導の中で行うことができるかもしれません。
特に、睡眠に関しては、問題点を聴取し、それに応じた具体的行動を指導するだけなら、通常の服薬指導の中で十分実施可能です。
といった、通常行われる睡眠衛生指導も、行動療法の一環です。
ここまでのことは、今まででも実施していた方は少なくないでしょう。
行動療法特有の睡眠時生活指導としては、
といった生活指導も行います。
このような生活習慣の修正は、すぐに出来るものではありません。始めから厳密に行うことを目指しては、脱落させるだけとなってしまいがちです。
生活指導において大切なことは、できない部分にばかり注目して偉そうに指導するのではなく、できている部分に注目して誉めることです。
このことについては、後程詳述します。
睡眠日誌の見本です。
・睡眠時刻欄には、熟眠、ウトウト、眠れないのいずれかの塗りつぶしを行います。
・服薬時刻欄には、睡眠薬、アルコール、タバコ、カフェイン摂取時間を記録します。
睡眠に対する行動療法では、特に、睡眠日誌が中心になります。日誌を記録してもらうことで、熟睡できている時間はどのくらいなのか、ベッドに入ってから寝付くまでの入眠濳時はどのくらいなのか、昼寝の時間はどのくらいなのか確認し、それに合わせた指導を行うことができます。
また、飲酒時刻、喫煙時刻、カフェイン摂取時刻も併せて記録してもらうことで、これらが睡眠に与える影響を評価することもできます。
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