B型肝炎ウイルス(HBV)に対する治療は主にインターフェロン(IFN)の注射薬か、核酸アナログ製剤の内服薬になります。
HBVに対する核酸アナログ製剤は直接ウイルスに作用しますが、完治させるのではなく、あくまでB型肝炎ウイルスの増殖を抑えて肝炎を鎮静化させるために使われます。
そのため日本肝臓学会のB型肝炎治療ガイドラインで定める治療目的は「HBV感染者の生命予後およびQOLを改善すること」となっています。
抗B型肝炎ウイルス薬である核酸アナログ製剤の一覧と作用機序についてまとめました。
日本で上市されている抗B型肝炎ウイルス薬の核酸アナログ製剤です。
商品名 | 一般名 略号 |
メーカー | 発売年 |
---|---|---|---|
ゼフィックス錠 | ラミブジン LAM |
GSK | 2000年 |
ヘプセラ錠 | アデホビルピボキシル ADV |
GSK | 2004年 |
バラクルード錠 | エンテカビル水和物 ETV |
ブリストル | 2006年 |
テノゼット錠 | テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩 TDF |
GSK | 2014年 |
ベムリディ錠 | テノホビル アラフェナミドフマル酸塩 TAF |
ギリアド | 2017年 |
インターフェロンは24週〜48週間と投与期間の基準が設定されていますが、核酸アナログ製剤は原則として長期継続投与となります。
HIV感染症の治療用に開発された逆転写酵素阻害。
ラミブジンは細胞内でリン酸化されラミブジン5′-三リン酸へ。
ラミブジン5′-三リン酸はデオキシシチジン(dCTP)に類似した構造のため 、RNA依存性DNAポリメラーセ(逆転写酵素)が誤ってとりこみ、DNA鎖伸長が停止。
長期投与で薬剤耐性の出現が問題のため第一選択薬にはなっていません。
通常は1日1回100mg投与。
アデニン(dATP)のアナログ。
アデホビルは細胞内でリン酸化されアデホビル二リン酸に。
アデホビル二リン酸はdATPと構造が類似しているため競合的に拮抗。
DNAポリメラーゼによってアデホビル二リン酸が取り込まれるとDNA鎖の伸長が停止。
通常は1日1回10mg投与。
エンテカビルは細胞内でリン酸化され活性体のエンテカビル三リン酸へ。
エンテカビル三リン酸はグアノシン(デオキシグアノシン三リン酸)と類似の構造を持つため、デオキシグアノシン三リン酸と競合拮抗しHBVのDNAポリメラーゼを阻害。
HBV DNAポリメラーゼの
の機能活性を阻害。
通常は1日1回0.5mgを空腹時(食事前後2時間は避ける)に投与。
テノホビル(TFV)のプロドラッグ。
テノゼットは体内でテノホビル(TFV)に代謝後、細胞内酵素によってテノホビル二リン酸に代謝。
テノホビル二リン酸はHBVウイルス逆転写酵素の基質であるデオキシアデノシン 5′-三リン酸と競合し、DNA鎖の伸長を停止。
通常は1日1回300mg投与。
テノホビル(TFV)のプロドラッグ。
HBV内で加水分解されテノホビル(TFV)→リン酸化され活性体のテノホビル二リン酸へ。
テノホビル二リン酸はHBVウイルス逆転写酵素の基質であるデオキシアデノシン5′-三リン酸と競合しDNA鎖の伸長を停止。
ベムリディ錠(TAF)はテノゼット錠(TDF)と同じテノホビル(TFV)のプロドラッグ。
ベムリディ錠(TAF)の方が血漿中で安定で、活性体のテノホビル二リン酸を高い濃度で産生することからTDFに比べてテノホビルの用量を少なく抑えられる。(TDF300mg→TAF25mg )
中間代謝物であるテノホビル(TFV)の循環濃度がテノゼット錠(TDF)に比べて約90%低く抑えられる。
TFVは腎尿細管で取り込まれ尿中に排出されるためTFVが高濃度になると尿細管上皮細胞内のミトコンドリア障害を引き起こす可能性がある。
→ベムリディ錠(TAF)はテノゼット錠(TDF)に比べて安全性が高いと考えられる。
通常は1日1回25mg投与。
参照資料
肝炎治療ガイドライン(第3版)2017年8月
各薬剤インタビューフォーム
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