整腸剤の一覧・使い分け・抗菌薬との併用【医療用医薬品】

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

ヒトの腸の中は数百種600兆個以上の様々な細菌や微生物によってバランスを保たれた生態系として成り立っています。

この生態系のことを腸内細菌叢読み方ちょうないさいきんそう)と呼ばれます。

また腸内を覗くと植物が群がるお花畑のような風景が広がっていることから、「お花畑=flora」をとって腸内フローラとも呼ばれます。

何らかの理由で腸内細菌叢のバランスが崩れると下痢便秘腹部膨満感といった症状がでます。

このような腸内細菌叢のバランスを整えるために処方されるのが整腸剤です。

薬局でも整腸薬がいくつか在庫されていると思いますが、整腸剤同士を直接比較したデータがないため明確な使い分けをされることは少ないのではないでしょうか。

僕が新人薬剤師のころ、ビオフェルミン錠剤が処方されている患者さんから

「錠剤が飲めないので粉薬に変えてくれませんか?」

と依頼があった時に、ビフィズス菌製剤ですのでラックビー微粒Nを提案しなければいけないところを

「ビオフェルミン配合散に変更して宜しいでしょうか?」

と疑義照会をかけてしまったことがありました(恥)
(2022年にビオフェルミン錠の散タイプ、ビオフェルミン散が発売されています。)

自戒の意味もこめて、整腸剤の有効成分、特徴についてまとめてみました。

 

ビフィズス菌製剤一覧・特徴

商品名 成分(1g・1T中)
ビオフェルミン錠
ビオフェルミン散(配合散でない)
GE
ビフィズス菌末12mg 
ラックビー錠 ビフィズス菌末10mg
ラックビー微粒N ビフィズス菌末10mg 
ビフィスゲン散
GE
ビフィズス菌末20mg


ビフィズス菌の特徴

  • ビフィズス菌は小腸下部〜大腸で増殖し乳酸酢酸を産生
    →有害菌の発育抑制
  • 偏性嫌気性菌

ビフィズス菌配合剤一覧・特徴

商品名 成分(1g・1T中)
ビオスミン配合散 ビフィズス菌4mg
ラクトミン2mg
レベニンS配合散
GE
レベニンS配合錠
GE


ビフィズス菌の特徴

  • 小腸下部〜大腸で増殖
  • 乳酸酢酸を産生
    →有害菌の発育抑制
  • 偏性嫌気性菌

ラクトミンの特徴

  • 小腸下部〜大腸で増殖
  • 乳酸を産生
    →有害菌の発育抑制
  • 通性嫌気性菌

 

酪酸菌製剤一覧・特徴

商品名 成分(1g・1T中)
ミヤBM細粒 宮入菌末40mg
ミヤBM錠 宮入菌末20mg

ミヤBM(ミヤイリキン)の特徴

  • 市販薬ではミヤリサンとして販売
  • 胃酸に安定
  • 抗菌薬に安定のため抗生物質と併用で処方されることあり
  • 酪酸酢酸を産生
    →有害菌の発育を抑え、有用菌を保持
  • 酪酸は腸管内の炎症を抑える

酪酸菌配合剤一覧・特徴

商品名 成分(1g・1T中)
ビオスリー配合錠 ラクトミン(乳酸菌)2mg
酪酸菌10mg
糖化菌10mg
ビオスリー配合OD錠
ビオスリー配合散 ラクトミン(乳酸菌)10mg
酪酸菌50mg
糖化菌50mg

ビオスリー(ラクトミン・酪酸菌・糖化菌)の特徴

  • ビオスリー配合錠1錠の5倍量が配合散1gに含有
    →内服した場合、配合錠2錠分が配合散1gと同等
  • 酪酸菌が抗菌薬に耐性があるため抗生物質との併用でも処方されることあり
  • ビフィズス菌を増殖させる糖化菌、腸管病原菌(o-157やサルモレラ菌)の増殖を抑制するラクトミンと酪酸菌が配合
  • 糖化菌は乳酸菌を、乳酸菌は酪酸菌を単独時投与に比べ10倍増殖
  • 3成分が相乗効果を発揮

ラクトミン製剤一覧・特徴

商品名 成分(1g・1T中)
ビオフェルミン配合散 ラクトミン6mg
糖化菌4mg
アタバニン散 ラクトミン50mg 
フソウラクトミン末 ラクトミン3.5mg 
ラクトミン末「マルイシ」 ラクトミン原末
1g中生菌が1~10億
ビオラクト原末
ラクトミン散「イセイ」
GE
ビオヂアスミンF-2散
GE

ラクトミンの特徴

  • 小腸下部〜大腸で増殖
  • 乳酸を産生
    →有害菌の発育抑制
  • 通性嫌気性菌

抗菌薬(抗生剤)耐性乳酸菌製剤一覧・特徴

商品名 成分(1g・1T中)
ビオフェルミンR錠 耐性乳酸菌6mg
ビオフェルミンR散 耐性乳酸菌6mg
ラックビーR散 耐性乳酸菌10mg
エンテロノンR散 耐性乳酸菌100mg 
 
耐性乳酸菌散10%「トーワ」
GE
ラクスパン散
GE
耐性乳酸菌18mg  
レベニン散
GE
レベニン錠
GE

上記の耐性乳酸菌以外にミヤBM、ビオスリーも抗菌薬に耐性があるため、抗生物質と併用で処方されることがあります。

耐性乳酸菌の特徴

  • 併用の対象となる抗生物質
    ペニシリン系、セファロスポリン系、アミノグリコシド系、マクロライド系、テトラサイクリン系(※)、ナリジクス散
    ※ラックビーRは対象外
  • レボフロキサシン(商品名:クラビット)などのニューキノロン系、ホスホマイシン系は適応外

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
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