SLE治療薬ベリムマブ(ベンリスタ)の作用機序・服薬指導のポイント

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療薬は、主に以下の3つに分類されます。

  • 副腎皮質ステロイド
  • 免疫抑制・調整薬
  • 生物学的製剤

生物学的製剤については2017年12月にGSKよりベンリスタ(一般名:ベリムマブ)が発売されました。

生物学的製剤は通常は、ステロイドや免疫抑制薬などを使っても効果不十分の場合に上乗せして処方されます。

点滴静注皮下注(オートインジェクターorシリンジ)が存在します。

点滴静注は院内処方となりますが、皮下注は院外処方で薬局でも受け付ける可能性があります。

ベンリスタの作用機序や服薬指導でのポイントについてまとめました。

作用機序

健康な人の状態では、Bリンパ球などの免疫細胞は、体内に入ってきた異物(ウイルスや細菌など)を攻撃します。

しかし、SLEでは可溶型Bリンパ球刺激因子(BLyS  読み方:ブリス)というタンパク質が過剰発現しています。

BLySが過剰に増えると、免疫細胞が自分の抗体を攻撃する自己抗体を産生し、正常な細胞までも攻撃してしまいます。

ベリムマブはBLyS蛋白質に結合し自己抗体の産生を抑えます。

投与スケジュール

点滴は1回10mg/kgを初回、2週間後、4週間後に点滴静注し、その後は4週間間隔。

皮下注は1回200mgを1週間間隔。
自己投与が可能。初回は必ず医療機関で投与される。

治療反応は6ヶ月以内に得られるため、6ヶ月以内に治療反応が得られない場合は継続を慎重に検討しなければいけない。

調剤時の注意点・服薬指導のポイント

  • 【皮下注】注射部位は腹部or大腿部
  • 【皮下注】投与前は冷蔵庫から取り出し常温になるまで30分放置
  • 【皮下注】冷蔵庫から出したら12時間以内に使用
    →保存は2〜8℃で、9〜30℃にて累計12時間以内であれば安定性に問題ないというデータのみ
    そのため持ち運びは保冷バッグが必要 
  • ベンリスタ専用の保冷バック、廃棄用バックや廃棄ボックスがあるのでメーカー(GSK)から取り寄せておく
  • 台風などの停電が予想される場合は保冷剤の用意が必要
  • 【皮下注】使用前に振らないこと
  • 注射直後の入浴は避け、注射部位は強くこすらないように指導
  • 咳・発熱などの感染症が疑われる場合は要相談
  • 生ワクチン接種は控える必要あり 
    インフルエンザなどの不活性化ワクチンは通常は問題ない
  • 気分が落ち込む、眠れない、食欲が落ちたなどがあれば相談してもらう【うつ病、自傷行為などの報告があるため】

参考
ベンリスタ インタビューフォーム
ベンリスタを安全に使用していただくために(グラクソスミスクライン)

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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