風邪や気管支炎の時に処方される去痰薬。
去痰薬といえば何が思い浮かび上がるでしょうか?
おそらく3大去痰薬といえば、
ムコダイン(成分名:Lカルボシステイン)
ムコソルバン(成分名:アンブロキソール塩酸塩)
ビソルボン(成分名:ブロムヘキシン塩酸塩)
ではないでしょうか。
それぞれの作用機序の違いや使い分けが分かれば、同じ去痰薬でも服用指導に少し変化をつけることができます。
作用機序や効能・効果の違いについてまとめてみました。
去痰薬 | ムコダイン | ムコソルバン | ビソルボン |
成分名 | Lカルボシステイン | アンブロキソール塩酸塩 | ブロムヘキシン |
規格 |
・錠剤250mg/500mg |
・錠剤15mg 徐放タイプのLカプセル・錠あり |
・細粒4% ・錠剤4mg ・シロップ0.08% ・吸入液0.2% ・注射液 |
作用 機序 |
気道粘液修復薬
・粘液構成成分調整作用 |
気道潤滑薬 ・サーファクタント分泌促進作用 |
気道粘液溶解薬
・漿液性分泌増加作用 |
ムコダイン(カルボシステイン)は気道粘液修復薬と呼ばれています。
細菌やウイルスが入ると、体の防御反応が働き痰の粘性が高くなります。少しマニアックな話になりますが、痰の粘性が高くなる理由は、気道粘液の構成成分であるシアル酸/フコースの構成比が高くなるからです。
ムコダインは主にシアル酸/フコースの構成比を正常に戻す作用があり、気道粘液を正常にすることで痰の粘性を低下させます。
また、杯細胞過形成抑制作用といって痰の粘性成分であるムチンの分泌を抑えることで痰の粘性を低下させたり、炎症を起こした気道を修復し、粘膜を正常化することで痰を喀出しやすくします。
気道粘液を正常にし、痰の粘性を低下させ痰を出しやすくするのがムコダインです。
ムコソルバン(アンブロキソール塩酸塩)は気道潤滑薬と呼ばれています。
主な作用機序は
・サーファクタント(肺表面活性物質)分泌促進作用
・気道液の分泌促進作用
・線毛運動亢進作用
となっており、気道を潤して痰を外に出しやすくする働きがあります。
そのため特にムコソルバンは痰の症状が治まっても処方された日数を飲み切るのがよいとされています。
ビソルボン(ブロムヘキシン塩酸塩)は気道粘液溶解薬と呼ばれています。
主な作用機序は下記の4つとなります。
・酸性糖蛋白溶解・低分子化作用
・漿液性分泌増加作用
・肺表面活性物質の分泌促進作用
・線毛運動亢進作用
痰が構成される酸性糖蛋白を分解したり、粘性の低い漿液を増やすことで痰を薄め、痰を外に出す働きがあります。
痰の構成蛋白を分解する作用はムコダインにもムコソルバンにもなく、ビソルボン特有の作用です。
しかし、粘性の低い痰に処方すると逆に痰が出しづらくなることがあるため、粘性が高い痰に処方される傾向があります。
ムコダイン・ムコソルバン・ビソルボンについて効能・効果の違いについてまとめてみました。
効能・効果 | ムコダイン | ムコソルバン | ビソルボン |
上気道炎(咽頭炎、喉頭炎) | 〇 | ||
急性気管支炎 | 〇 | 〇 | 〇 |
気管支喘息 | 〇 | 〇 | |
慢性気管支炎 | 〇 | 〇(小児用なし) | 〇 |
気管支拡張症 | 〇 | 〇(小児用なし) | |
肺結核 | 〇 | 〇(小児用なし) | 〇 |
塵肺症 | 〇(小児用なし) | 〇 | |
手術後の喀痰喀出困難 | 〇(小児用なし) | 〇 | |
慢性副鼻腔炎の排膿 | 〇 | 〇(小児用なし) | |
滲出性中耳炎の排液 | DS(小児)・シロップ |
滲出性中耳炎にはムコダインDSとシロップのみが適応をとっており、小児に使用されます。
ムコダインは耳管の粘液線毛輸送能を改善したり、粘膜を正常化し、中耳貯留液を排泄させる働きがあります。
ビソルボンには副鼻腔炎や中耳炎への適応はなく、去痰のみに使用されます。
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