脂質異常症治療薬の新しい作用機序の注射薬がPCSK9阻害薬です。
PCSK9阻害薬の効能・効果は「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症」となっており、「心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る」という縛りがあります。
またスタチン製剤と併用しなければ処方ができません。
PCSK9阻害薬について作用機序やスタチンとの併用理由についてまとめました。
日本では下記の2製剤が上市されています。
成分名 | 商品名 | メーカー |
---|---|---|
エボロクマブ | レパーサ皮下注140mg シリンジ・ペン |
アステラス |
アリロクマブ | プラルエント皮下注75mg,150mg シリンジ・ペン |
サノフィ |
PCSK9は血中から肝細胞にLDLコレステロールを取り込むLDL受容体を分解する働きがあります。
肝細胞表面には血中からLDLコレステロールを肝細胞内に取り込むLDL受容体が存在します。
LDL受容体はLDLコレステロールと、ヒトプロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(prpprotein convertase subtilisin/kexin type9:PCSK9)と結合することにより複合体となり肝細胞内に取り込まれます。
この複合体は肝細胞内に取り込まれた後、肝細胞内で分解されてしまいます。
このようにPCSK9はLDL受容体数を減らすことで、血中のLDLコレステロールを上昇させるのです。
PCSK9阻害薬はLDL受容体を減らすPCSK9を阻害することで、LDL受容体を増やし血中LDLコレステロールを低下させます。
PCSK9阻害薬はPCSK9と結合し、PCSK9がLDL受容体に結合することを防ぎます。
LDL受容体にLDLコレステロールが結合すると「LDLコレステロール・LDL受容体」は肝細胞内に取り込まれ、LDLコレステロールは分解されますが、LDL受容体は再利用されます。
このようにPCSK9阻害薬はLDL受容体の分解を抑えLDL受容体を増加させる働きがあるのです。
そのため、血中から肝細胞内へのLDLコレステロールの取り込みが促進し、血中LDLコレステロールが低下するのです。
PCSK9阻害薬はHMG-CoA 還元酵素阻害剤と併用でしか保険適応ができません。
HMG-CoA 還元酵素阻害剤と併用すること。[日本人における本剤単独投与での有効性及び安全性は確立していない。]
引用元 レパーサ添付文書
「LDL受容体を増加させる」と聞いてピンとくるかと思うのですが、スタチンも肝臓でのコレステロール合成を抑えLDL受容体を増加させて血中LDLコレステロールを低下させますよね?
つまりアプローチに違いはありますがLDL受容体を増加させる点は同じです。
ではなぜ同じLDL受容体を増加させる薬剤を併用するのでしょうか?
それはPCSK9阻害薬がスタチンの弱みをカバーするからです。
PCSK9はSREBPによって調整されており、SREBPはPCSK9の合成を促進させる作用があります。
スタチンはSREBPを活性化しPCSK9を増加させるため、投与量を増やしてもLDLコレステロールがなかなか下がらないといったジレンマがありました。
PCSK9を阻害薬と併用することで、スタチンの弱みを補完し相乗効果を発揮することが狙いなのです。
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